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小説 3
新樹恋・後編 (にょた・R18・ラブしかありません)
「もう、恥ずかしくて、学校に、行けま、せん」
 私が抗議すると、阿部さんは、ははっと笑って、「虫除けですよ」と言った。
 虫除けなんて……周りの男の子をけん制するものであって、女子高には必要無いものだ。
 絶対、分かって言ってると思う。

 母からメールが来て、「阿部さんにご迷惑をお掛けしないように」と書かれていた。それから……「日曜の夜は不在なので、お夕飯は食べていらっしゃい」、と。
 なぜ、金曜の放課後に、日曜の夜のことを?
 もしかして、週末……ずっと過ごす事になっているのだろうか?
 私は恐る恐る、メールとハンドルを握る阿部さんとを見比べた。
 阿部さんは私の視線に気付き、にこっと優しく微笑んだ。恥ずかしくて、慌てて目を逸らす。
 ほんの一ヶ月前まで、私は彼のことが怖かった。好きだけど、怖かった。
 今でも、まだちょっと怖い。
 阿部さんは大人で……男の人だと、知ったから。


 車は高速に乗ってしばらく走り、やがて山間の小さなコテージに着いた。
 木造の2階建てで、1階は広いリビングになっている。奥の壁一面がガラスになっていて、庭から差し込む光が、リビングを明るく照らしていた。
 庭の向こうは、すぐ木立になっていて、姿の良い木々がまっすぐに立っている。
 若く芽吹いて背の高い木には、どこか阿部さんを連想して、安心する。側にいて、守ってくれるだろうと思う。

 階段を上がると、2階には2部屋あった。広い方の部屋に私を案内して、阿部さんが言った。
「着替えも一式、用意して貰っています。足りないものがありそうなら、買いに行きましょう」
 小さなクローゼットを覗くと、確かに女物の服や靴などが置いてあった。白とベージュと紺色の、Mサイズ。無難な品揃えだ。
「これ、どうしたんです、か?」
 尋ねると、応える代わりに、ぎゅっと後ろから抱き締められた。

 ドキン、と心臓が跳ねる。

「買ったんです、丸ごと」
 耳元で、阿部さんが囁いた。
 振り向かされて、キスされる。舌が入って来る。大人のキス。
「ん………」
 呼吸も思うようにできなくて、ただ彼の舌を感じるのに精一杯。じきに立っていられなくなって、足元から崩れそうになるのを、力強い腕がぐっと抱きとめ……そのまま上に抱き上げた。
「きゃ」
 悲鳴を上げる間も無く、部屋の真ん中にあった、大きなベッドに落とされる。
 スプリングの上で背中が弾み、はっと息を吐く。目を開けると、上から阿部さんの、端正な顔が覗き込んでいた。


 何されるかは、もう分かっていた。
 抱かれるのは初めてじゃない。
 春のあの日、あの部屋で……何度も貫かれた。
 ホント言うと、まだちょっと怖い。
 だって、滅茶苦茶にされる。心も、体も。
 彼の思うままに、揺らされる。


「い……あっ……」
 はだけられたシャツの下、大きな手が硬い胸に伸びる。
 包むように揉みしだかれて痛い。まだ硬くて青い胸。
 痛いのに、甘い声が出る。腰が浮いて、背中が弓なりに反る。
 スカートの中では、とうに下着を剥ぎ取られ、もう片方の手が、私の奥をゆっくりと暴いている。
 太くて固い指が繰り返し出し入れされ、はしたない水音を立てる頃……ヒザを割られて、阿部さんが来る。
「ああっ、う」

 痛い。固い。大きくて、強い。
「阿部、さん」
 痛い。痛いのに、甘い声ばかり出るのはなぜだろう?
「隆也って、呼んで」
 最奥まで穿ち、ゆっくり動きながら、彼が言った。
「呼んで。隆也」
「たか、……やっ」
 彼の楔で肉を裂かれる。痛い。熱い。
 両胸を引き絞るように強く揉まれる。ああ、痛い。
「隆也、さ、ああっ」
 広い背中に縋って、半ば叫ぶように名を呼ぶと、彼は苦しげに息を吐き、抑えた声で言った。
「廉……」
 そして、いきなり動きを早くした。


 ゆっくりと体が変わっていく。彼によって……変えられていく。女へと。


 広い胸の上に寝かされて、心臓の音を聞く。まだ、体の奥には彼の余韻が残っていて、目を閉じてただ、彼だけを思う。
 彼もまた何も言わず、静かに頭を撫でていてくれる。この時間が、とても好きだ。

 数十分ほど経ってから、隆也さんが言った。
「動けるようなら、着替えて下に降りましょう」
 優しく促され、クローゼットにあった、ベージュのワンピースを着て、階下に降りる。
 広いリビングには、いつの間にか食事の用意がされていた。テーブルの真ん中には、小さなバースディケーキが置かれている。
「まだ数日早いけど」
 ケーキの横に置かれていたライターで、隆也さんがロウソクに火を点けた。

 ガラス窓の向こうは、もう真っ暗だ。山間のコテージを包むのは、街明かりの無い夜闇。
 でも、怖くない。
 外には庭があって、それを守るように木立があるのを知っている。
 そして、側に……隆也さんがいる。
 若芽をたたえて両手を広げ、風を受けて青く薫る、新樹のような、この人が。


 私は彼が見守る中、穏やかな気持ちでロウソクを消した。

  (終)

※みんく様:フリリクのご参加、ありがとうございました。「桜花恋の続編、ラブラブで」になったかな。なったよね。というか、ラブしかなくてすみません。タイトルも無理矢理ですみません。5月の季語なんです……。コテージ丸ごと、誕プレです!

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あきゅろす。
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