小説 3
forgive and forget・1 (1414213Hitキリリク・ホストアベミハ・R18)
手のひらに吸い付くような肌だった。白くて、きめ細かくて、すげー好みだ。
逃げようとする細い腰を捕まえて、欲望のままにガツガツと打ち付ける。白く丸い尻が当たって、パンパン高い音が鳴る。
頭ん中に泥が詰まったみてぇ。気持ちイイことしか考えらんねぇ。
視野が狭くなってる気がすんのは、ぶっ飛んでっからか、それとも半分寝てるからだろうか?
「うあっ、もう……っ」
相手の泣き言も耳に入んねぇ。
泣いてんのか善がってんのか、そんな判断もつかなくて、ひたすら腰振るしかできなかった。
もっと、もっとだ、って気持ちがどんどん沸き上がって、手加減も容赦もできねぇ。がくっと崩れ落ちる体を、無理矢理引き起こして突き揺する。
狭い体腔、粘膜のひだがきゅうきゅうオレにまとい付き、揺さぶっても擦り上げても気持ちイイ。
相性バツグンっつーのかな? 少し低めの啼き声も、ハリのある背中も、撫で心地のいい肌も、何もかも理想通りに思えた。
「好きだぜ」
心にもねぇ甘い言葉を囁いて、抱き竦めて深く穿つ。
コイツ誰だっけ? 一瞬、情けねぇ下がり眉が頭の隅を掠めたけど、んな些細なことはどうでもいい。どうしてこうなったのか、何も思い出せねぇ。
分かんのは果てしない快感と、尽きねぇ欲望、最高で理想の抱き心地。
「あっ、あっ、や、あ……」
甘く熟れた低めの声が、揺さぶるたびに鼓膜に響く。
「すげっ」
ヤバいくらい、すげーイイ。セックスにこんな夢中になんのは初めてだ。
「あっ、あああん、んっ、ん、あっ」
むせび泣き、いやいやと首を振る様子に、煽られて仕方ねぇ。
荒い呼吸、肌を打つ音、ベッドの軋み。
理性はとうに溶けて消えてなくなって、目の前の体を貪り尽くすことしか考えらんねぇ。
白い背中に歯形をつけ、びくびく震える様子を楽しむ。
「寝んなよ、まだ終わんねーぞ」
くくっと笑いながら腰を回すと、ブチ込んだ穴がぐちゅっと鳴った。奥へ奥へと誘い込む肉ひだが、オレの分身にまとい付く。
どんなに穿っても、揺さぶっても、まだまだ足りねぇ。もっと欲しい。
「いーよ、お前。最高だ」
オレの誉め言葉に、細い肩がひくっと揺れる。
感じてんのか、泣いてんのか、よく分かんねーけど、どうでもいい。
どうしてこうなったか覚えてねーけど、嫌がる相手を組み伏せる趣味はねーし、多分合意だったんだろう。
なら、互いに朝まで楽しむだけだ。
どっちにしろ、1回や2回で終わりにするつもりはなかった。
プープープー、プープープー。
間抜けなブザー音で目が覚めた。半分目ェ閉じたまま、音源の方に手を伸ばす。鳴ってたのは、ベッドヘッドに置かれた電話だ。
「……はい」
しわがれた声で応じると、機械音で『お時間です』って言われて、はぁー、と1つため息をつく。
起き上がると案の定ラブホだ。ベッドの中にはもう1人誰かいるようで、面倒臭ぇな、と正直思った。
誰だっけ? ズキーンと痛む頭を押さえ、ピンクの電話に受話器を戻す。
今何時だ? ラブホのチェックアウトなら、10時か11時? どっちみちシャワーでも浴びねーと気持ち悪ぃし、延長は決定だ。
むくっと起き上がり、ベッドから降りると、隣に寝てた誰かが「う……」とかすかに唸り声を上げた。
構わず裸のまま風呂に向かい、どろどろの身体を洗い流す。
頭から熱いシャワーを浴びると、微かに残ってた酔いも醒め、頭がゆっくり働き出した。
「何でこうなった……?」
ぼやいても、それに応える声はねぇ。
頭がハッキリすると同時に、わずかな記憶がよみがえる。
タオル地のバスローブを軽く羽織り、頭を拭きながらベッドに戻る。そっと布団をめくり上げると、そこには思った通りの顔があって、嘘だろ、と思った。
「レン……」
最近入ったばっかの、同僚の名前をぼつりと呟く。
昨日あんだけガッツいた相手は、オレが勤めるホストクラブの新人で、つまり、オレと同じく男だった。
男に襲いかかる程、不自由はしてねーつもりだったけど。酔ってたんかな?
昨日ってどんくらい飲んだっけ?
指名だろうがヘルプだろうが、客から酒を勧められりゃ、軽く飲み干して見せんのがホストだ。
泥酔すんのは粋じゃねーし、そんなヘマはしねーハズだけど、記憶がぶっ飛んでてよく分かんねぇ。ただ、すげー夢中になってたのは確かだった。
布団から覗く白い肌には、オレがつけたらしい、色んな痕が残ってる。
散々貪ったオレが言うことじゃねーけど、よっぽど疲れたんだろう。寝息が深い。
「覚えてねーなぁ」
どっちが誘ったんだっけ? つーか、何でこうなった?
……媚薬でも客に盛られたんだろうか?
昨日来た、馴染みの客の顔がふっと浮かぶ。
確かどっかのキャバ嬢で、化粧も金払いも濃厚な女だ。商売柄仕方ねーけど、見た感じ肌がボロボロで、金積まれても寝ようとは思えなかった。
本気で誘ってる風には見えなかったけど、何度誘われても応じねぇオレに、笑いながら一服盛るくらいはやりそうだ。
まあ、そんくらいしたたかじゃねーと、ホスト通いなんてできねーよな。
ちっ、と舌打ちを1つして、脱ぎ捨てた上着のポケットから営業用のケータイを取り出す。
アドレス帳をスクロールしながら、ドスンとベッドの端に座ると――。
「んう……」
レンは小さく声を上げて、もそもそと布団に潜り込んだ。
(続く)
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