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小説 3
王妃の送迎・4 (後半R18) 
「シュン王子との相性もよさそうだ、と。何より談笑されるほど仲がよろしいのなら、道中に王子が萎縮することもないのでは。王太后陛下はそうおっしゃって、王妃様を強くご推薦されています」
 大臣の言葉に、レンと王は互いに顔を見合わせた。
 王の整った顔にはすでに怒気が刻まれていて、気まずいことこの上ない。
「レンは確かに最強の武人だが、それ以前にオレの妃だ。家臣のような真似はさせん!」
 王はきっぱりと突っぱねたが、大臣の方も簡単には引けないようだ。
「王妃様のお考えはいかがですか?」
 率直に尋ねられ、レンは少々迷いを見せた。
「オレは、別に……」
 隣に座る王に「レン」と短くたしなめられ、そこで言葉を切ったものの、きっぱり断る程イヤではない。
 戦時なら、自分が城を空けることに防衛上の心配もあるが、今のところ国家間において不穏な陰はなかった。なら、王の弟王子を護衛することに、ためらいはない。

 敵国に向かうというなら話は別だが、トウセイは中立国だ。
 各国の王族・貴族の子息たちが留学という名の結婚活動に集まるというし、それに関して危険度は低い。王族だけに、それなりの護衛をつける必要はあろうが、あくまで保険の意味合いが強い。
 どうしても、と乞われれば、出向くことに忌避感はなかった。
 第一、あの快活で、だからこそ余計に寂しげに見える義弟のことを、レンは放っておけなかった。
 タカヤと関係が良好でないのなら、レンを護衛にと指名するのは王への嫌がらせかも知れないが、腕を見込んでというなら、それは純粋な生母の愛情かも知れない。
 幼少の頃から離宮に隔離されたレンには、肉親のぬくもりの記憶がない。
 我が子のためには利己的にもなり得る、それが母親というものだ、と――そう言われれば、そうなのかなと納得できた。

「オレ、行ってもいい、よ。たまには、城下街以外のトコも見たい、し」
 レンの言葉に、王は「はあ!?」と顔をしかめ、大臣は逆に「おお!」と喜びの声を上げた。
「視察だと思えば、いいんじゃない、かな? 平和な時の軍事行動は、久し振り、だ。ミホシの時はよく、い、イトコの護衛も兼ねて、あちこち行ったんだ、よ?」
「イトコって……」
 王はそれ以上を言わなかった。
 国王の甥であるレンに、イトコは2人。王太子だったリュウと、その姉の王女ルリだ。湖や森に避暑に行くたび、その護衛は筆頭将軍だったレンが担った。
 剣を帯び、王の嫡子に付き添うのを許されるほど、信用されていた証でもある。今回の王太后の申し出も、信頼の証拠だと思えば悪くない。

 レンの言い分に、アベ王は「仕方ねーな」とため息をついた。恐らく王としても、王太后の要請は無下にできなかったのだろう。
「ただし、国境までだ」
 正確には、国境近くにある王家直轄の城砦まで。
 西の防衛をつかさどる、要ともなる城砦だから、視察と考えてもちょうどいい。そこから先は国境警備軍の将軍と交代し、トウセイまで行って貰う。
 それが、アベ王の出したレンの出動の条件だった。

 レンの周りが、にわかに騒がしくなった。
 他の将軍たちと会議を重ね、地理的なことについての説明を聴く。部下として護衛任務に配属される兵士たちとも面談し、活発に意見を交わす。任務中に必要な物資の手配にも関わり、調整を重ねる。
「どうかご無理だけはなさいませんよう」
 皆に口々に言われて、大事にされていると思う反面、危なっかしく見えるのかと苦笑した。
「陛下には味方も多うございますが、敵もまた多いのです」
 古参の将軍の言葉に、「そう、か」とうなずく。
 国のため、時に非情にもなりきれる王、アベ=タカヤ。その王としてのありようや、国の抱える問題は、故国ミホシとは随分違うようだ。
 それがいいのか悪いのか、他国のことに興味のなかったレンには、まだよく分からないけれど――王のことも、その弟も、できる限り守りたいと思った。


 出発の前日、日が暮れる前からアベ王はレンを執拗に求めた。
 日頃の鍛練のお陰で体力には自信のあったレンも、鍛えようのない場所を深く攻められてはたまらない。じきに王のなすがまま、快感に啼かされるだけにさせられた。
「あ、ああっ、もう、やぁ……」
 しなやかな筋肉に覆われた、白い体がびくびくと跳ねる。
 王の剛直を深々と呑み込まされ、容赦なく揺さぶられて喘ぎ啼く。
「お前のココは、イヤだとは言ってねーぞ」
 なぶるような口調、首を振っても解放される気配はなくて、身をよじるくらいしかできることはない。
 王の広い背中に爪を立て、無我夢中でしがみつくと、王は満足そうに笑った後、更に苛烈にレンを揺すった。
「あっ、そんなっ、んっ、んんっ」
 切羽詰まった文句も、唇を塞がれて口接けの中に消えていく。

「こんな、したら、馬に乗れっ、ないっ」
 喘ぐ合間になじってみたが、「じゃあ乗んな」と笑われた。にやりと口角を上げる、策士の笑みだ。
 そう言われれば、どんなに腰が辛くとも、平気なフリで耐えるしかない。
 全く、分かってはいたけれど、なんと我がままなのだろう。レンが白鬼なら、タカヤは鬼畜かも知れない。
「あっ、んあっ、タカ、ヤっ」
 王の名前を呼び、快感に潤んだ瞳で睨む。
 その様子がいかに扇情的で、いかに王をあおるのか、王妃レンには自覚がない。
「お前が煽るから」
 何度もそう言われたが、それはアベ王の、単なる言い訳だと思っていた。

 精液が熱いハズはないと思うのに、体腔の奥に出された胤が、熱くしみるのはなぜだろう?
「あああ、んんっ、熱、い」
 うめきながら無意識に中を締め付け、中を侵す王の肉の大きさを、ずくんと実感させられる。
 ぐちゃぐちゃと鳴る水音が、あられもない場所からいやらしく響いて、何度出されたのだろうと赤面した。
 射精と律動を繰り返しても、王が抜いてくれる気配は一向にない。仰向けで啼かされ、うつ伏せでも啼かされ、ヒザの上にも乗せられた。
 自重も相まって深く貫かれ、レンの細身がびくんと跳ねる。
「ああ……もう……」
 息も絶え絶えに泣き言を漏らすと、王の大きな手のひらがレンの汗ばんだ髪を撫でた。

「そうだな、ちょっと休憩だ」
 弾んだ息の中、優しく重ねられる唇。
 吐息を交えるキスの後、王の指が耳たぶに触れた。直後、ちくりとそこに痛みを感じ、貫かれた格好のまま「んんっ」と喘ぐ。
 耳たぶがほんの少し重くなって、耳飾りをつけられたのだと分かった。
 左右の耳に、同じように穴を空けさせて、王が最愛の妃に贈ったのは、黒曜石と琥珀の並んだ耳飾り。
「お守りだ」
 と、その言葉通り、どちらも守護や厄除けを意味する宝石で――漆黒と薄茶、2人の瞳と同じ色合いの品だった。

(続く)

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