小説 3 Only・1 (100万打キリリク・大学生・阿部モブ注意・R18) ※阿部モブ前提の話になります。阿部が不特定多数のモブと関係を持っているという設定です。苦手な方はご注意下さい。 阿部君のケータイに着信があった時、オレたちはセックスの真っ最中だった。 オレは全裸で、阿部君は半裸で――シャツを脱ぎ捨て、ズボンの前だけをくつろげた姿で、獣のように体を繋げてた。 突然鳴った軽快な音に、ドキッとしてビクッとなったけど、阿部君の方に動揺はない。ちゅうちょなくケータイに手を伸ばし、「もしもーし」って応じてる。 「おー、島崎さん、お久し振りっスねー」 四つ這いにしたオレを後ろから貫いたまま、阿部君が余裕の声で笑った。そのままゆるゆると揺らされたけど、さっきまで激しく抱かれてた分、物足りなくて身悶える。 聞き耳を立てたい訳じゃないけど、快感に没頭することもできなくて、話の内容がイヤでも聞こえた。 島崎さんって、よく聞く名前だ。ケータイから漏れ聞こえるのは若い男の人の声で、敬語使ってるから多分、先輩。阿部君の……遊び仲間、かな? そう思ったのは間違いないみたい。 「えっ、乱パ? 今夜っスか? いいっスねー、何時から?」 阿部君がそう言うのを聞いて、ギシッと胸の奥が軋んだ。 乱パって、乱交パーティのことなんだって。 オレにはどんなものか想像もつかないけど、阿部君はそうやって誘われて、しょっちゅう行ってるみたい。楽しいっていうより、楽でいいって。 「好きだ何だって言われんのはウゼーし、駆け引きもメンドクセェ。ヤりたいヤツが集まって、みんなでわいわい、適当に楽しくヤれりゃそれでいーだろ」 前にそう言われた時、オレは何も言うことができなかった。 来る者拒まず、去る者追わず、誰の手も取らず……自由を謳歌してる阿部君は、学生の間はずっと、こうして遊びまくるつもりらしい。 でも、オレだってその「遊び相手」の1人だから、文句なんか言えない。 オレは恋人でも何でもなくて、ただのたくさんの内の1人、で。 阿部君がもし遊ぶのをやめるとしたら、オレとの関係もなくなるだろうって分かってた。 「はーい、じゃあ、その頃にうかがいますんで。失礼しまーっす」 陽気な声で返事して、阿部君がようやく通話を終えた。 脱いだ服の上に、ケータイが無造作に放られる。と同時に腰をガシッと掴まれて、いきなり激しく揺さぶられた。 「ふあっ、ああっ!」 突然の刺激についていけなくて、悲鳴が漏れる。 奥を容赦なく穿たれて、懸命に突っぱねてた手が、がくっと折れた。 「何だよ、物足りなかったんだろ?」 阿部君が嘲るように言って、更に激しくオレを突く。痛いくらいの乱暴なセックス。でもそれすら、オレにはもう快感でしかなくて。 「はっ、ん、ん、んっ、あっ……」 喘ぎながら腰を揺らすと、阿部君がふっ、と笑った気がした。 間もなくオレの中に、阿部君が精を散らした。 そのまま搾り取らせるみたいに3回突いて、一気にズズッと引き抜かれる。 「うあっ」 衝撃にうめいて、ガクッとベッドに沈み込むと、阿部君があっけなく身を起こした。 キシッとベッドをかすかに鳴らして、床に降り立つ阿部君。少し息を荒くして、くつろげてた綿パンをはき直し、ケータイをポケットに収めてる。 オレはベッドに寝そべったまま、顔だけ動かしてその様子をじっと眺めた。 いつ見ても、格好いいなぁと思う。 遊び人だってこと隠してなくて、色々悪く言う人もいるけど、それでもモテるのはやっぱ、格好いいからだ。 整った顔も、くっきり割れた腹筋も、たくましく引き締まった体も……頭のいいとこ、も。阿部君は全部、格好いい。 その阿部君を独占できそうな人は、今のところいなく、て。決まった人がいないのは安心でもあるけど、その反面、絶望でもある。 だって、今の「遊び仲間」の誰も、特別扱いしないってこと、でしょ? 阿部君は、誰にも愛を囁かない。 誰とも朝を過ごさないし、誰も自分ちには呼ばないし、誰にも寝顔を見せないらしい。 自分とセックスした直後、乱交パーティに行くって言う彼を、誰も止められないし、なじられない。 オレも。 「……行く、の?」 声をかけても、ちらっと視線を向けられるだけで、「ダメか?」とも訊かれない。 「大丈夫? ビョーキとか……」 妊娠とか、とは口にしたくなくて言葉を濁すと、阿部君は飲みかけのスポドリをぐっとあおって、あっさりと言った。 「ナマでやんねーから大丈夫だろ」 そう言われると、もうそれ以上は何も言えない。 オレの心配なんて無用だろうし、オレの許しも誰の許しも、阿部君には必要ない。 行かないで、って縋ったり責めたり泣いたりしたら、「ウゼェ」って言われて終わり、だ。きっともう2度と、この部屋には来て貰えないし、抱いても貰えないだろう。 黙り込んだオレを見て、阿部君がニヤッと笑った。 「心配しなくても、おめー以外とはナマでやんねーよ」 くしゃっと髪を撫でられて、ズキッと胸が痛む。 オレ以外とはナマでやらない。オレ以外に中出しをしない。それは単に、オレが男で――妊娠の恐れがないからだ。 「じゃーな」 たった一言そう残して、阿部君はさっさと靴を履き、オレのアパートを出て行った。 振り向きもされないし、「また来る」とも言われない。 パタン、と玄関扉の閉まる音を聞いてから、ため息をついて起き上がる。 その拍子に阿部君の出したモノが、大きくされた穴からこぼれて、イヤな感触にビクッとした。 (続く) [次へ#] [戻る] |