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小説 3
光巡る・4 (R−18?)
 オレに下んねぇ手紙をよこしたHこと、先輩陰陽師の榛名は、図々しくも返事を要求したらしい。
 いや、それを三橋に伝えたんはメガネ男だけど。
「いらねーよ。無視しときゃいーんだ、無視」
 思いっきり顔をしかめてそう言うと、三橋は「でも……」と困ったように眉を下げた。
「お、オレ頼まれた、から。お返事、頼んで、って」
 律儀で真面目だな。まあ、そういうとこも可愛いんだけど。

 オレが黙ったままでいると、三橋はハッとしたように顔を上げて、「うお、ご、ごめん」と突然謝った。
「あ、阿部君、右手動かせない、のに、お返事書くのムリ、だよ、ね」
 キョドリながらそう言って、三橋はいきなり立ち上がり、「断って来るっ」って部屋から出ようとした。
「待てって」
 すかさず抱き締めて引き止めながら、なんかおかしくて、くくっと笑う。
 手紙受け取ったの、どんくらい前だよ。今から行ったって、もういねーだろっつの。
 全部に一生懸命な感じがすんのは、友達付き合いの経験値が低いせいかな? まあ、オレらは「トモダチ」じゃねーけど。

「お前、ホント……」
 飽きねぇよ、と言うべきか、可愛いな、と言うべきか。一瞬迷って、結局キスで誤魔化すことにする。
 ちゅっとキスして、ぎゅっと光を抱き締めると、やっぱじわっと温かい。
「いや、やっぱ返事書くわ。手伝ってくれ」
 顔を覗き込みながらそう言うと、三橋は「うん」とうなずいて、それからこてんと首をかしげた。
「いい、の?」
「おー。つか、考えてみりゃ断る方が不自然だしな」

 右手が陰鬼のせいで凍ってっから……とか、まさかホントのコトは言わねーにしても、「返事が書けねぇ」とか知られたら、そっちの方がやっぱマズイ。
 特に榛名、アイツはマズイ。
「いらねー紙、1枚くんねぇ? チラシの裏とか」
「うえ、ち、ちらし?」
 三橋は一瞬戸惑ったものの、ためらいながらレポート用紙を1枚くれた。
「こ、こんなのしかない、けど」
「いや、むしろ勿体ねーくらいだって」
 何しろ向こうからの手紙だって、千切ったメモ用紙だったんだ。新聞広告の裏でいいくらいだっつの。

「筆ペンねーか? マジックでもいーけど」
 筆記用具を頼むと、さすがに筆ペンはなかったみてーだけど、太い油性マジックならあったみてーだ。
 ボールペンでも悪くねーけど、今は右手がこんなんだし。なるべく筆圧のいらねー類の物がいい。

 ローテーブルの前にあぐらをかいて、レポート用紙と油性マジックを手元に置く。
 こいこいと手招きし、三橋をヒザに座らせる。
 右手首の冷たいとこを掴んで貰うと、いつものようにじゅっと音を立てる勢いで、黒い痕に光が巡った。
 気持ちよくて、はーっと息を吐きたくなる。
 掴んで貰ってると、右手が少し軽い気がする。まあ、セックスの最中ほどじゃねーけどな。
 目の前のうなじにちゅっとキスすると、三橋の耳が赤くなった。

「あ、あの、阿部、君……」
 消え入りそうな声で名前を呼ばれて、「んー?」と返事しながら、赤い耳に歯を立てる。
「手伝ってくれんだろ?」
 意地悪く囁きながら、シャツの中に手を這わすと、可愛い声で「ひやっ」と啼いた。
 1ヶ月かけて敏感にした乳首が、ぷくっと勃って左の指先を楽しませる。
 片手じゃやっぱ不自由だよな……って、いや、こういう時だけじゃねーけどさ。
 両手でするっと脱がせてぇズボンも、下着も、三橋がその気になんねーと、ずらすのも難しい。

「て、手伝うって……?」
 うろたえながら訊いてた三橋だったけど、オレの左手にゆっくりと穴をほぐされ始めて、じきに何も言えなくなった。
 毎晩可愛がってる後腔は、素直に柔らかく湿ってオレの指を呑み込んでいく。
「お、お風呂、まだ……っ」
 切羽詰まったような声で言われたけど、そんなのやめる理由になんねーし。
「オレもだから、いーんだよ」
 そう言って、うなじにキスして、ゆっくりとオレのを穴にあてがう。
 冷たい右腕を前に回すと、三橋が腰を落としながら、その右腕にしがみ付いた。

 繋がった瞬間、全身に光が流れ込んできて、ふわっと温かく感じた。
「あ……ん……っ」
 ぴくりとも動いてねーのに、三橋が小さく息を詰める。
 凍った腕にしがみ付いた三橋の手から、じゅわじゅわと光が当てられる。
 中からも外からも光を受けて、凍った右腕が軽くなった。スゲー気持ちイイ。癒されてんのはきっと、右腕だけじゃねーと思う。
 ずっとこうしていてぇ、けど。

 左手に持った油性ペンを、歯を使って開ける。それを右手に持ち直し、三橋の手ごとゆっくり動かして、レポート用紙にすべらせる。
 書いた言葉は、「オレのだ」と一言。
 ホントなら、「大きなお世話だ」とか「くたばれ」とか書きてぇとこだけど、そこまでたくさんの文字は書けねぇし。
 だったら、譲れねぇコトだけしっかり書くしかねぇ。
 ペンを持つだけで精一杯の右手は、三橋の体の光を借りて、筆圧の低そうな文字を描いた。
 そんでも、肉筆は肉筆だ。ちゃんと力が宿ってる。

「なあ、封筒ある?」
 ゆさっと揺すりながら訊くと、三橋は「ふあっ」と声を上げて、ぶんぶんと首を振った。
「だ、めっ、いきなり、動いちゃ……!」
 甘えを含んだ声で言われると、中に埋めてた肉がどくんと元気になる。
「ははっ、いきなりじゃなきゃいーのか?」
 意地悪く囁きながら、続けてゆさゆさ揺さぶってやると、三橋が甘い声を上げた。

 なんかもうたまんなくなって、封筒なんかどうでもいいだろと思えて来た。
 いっそ、鶴にして飛ばせばいいかと思いつく。後で三橋に鶴を折らせよう。
 だから今は――。

「三橋、床に手ぇ突いて」
 後ろから背中を押してやると、三橋はオレの右腕からそっと両手を外して、素直に床に手を突いた。
 ゆっくりとあぐらを崩し、膝立ちになって、繋がったままで四つ這いにさせる。
 そして、そのままガツガツと突く。
「あっ、んんんーっ」
 抑えた声で啼きながら、三橋が細い背中を反らした。

(続く)

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