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小説 3
続・禁断の関係・5 (にょた・R15)
 泉君……!?

 私はゆっくりと黒いオモチャを口の外に出し、ギクシャクと目を逸らした。
「三橋、お前……っ」
 泉君の呟きにも答えられない。
 彼は無遠慮に覗き込んで来たりはしないけど、きっと私がどういう格好をしてるか、見られてる、よね?
 私が彼に、何をされてるのかも。
 ……上気した顔、も。

 なのに彼は、私に指を差し込んだままで。狙ったように、敏感な豆に軽く爪を立てた。
「んぅっ!」
 心とは裏腹に、体が反応してしまう。
 くくっと彼が笑った。
 くちゅくちゅと水音を立て、出し入れされる長い指。
 私は、これ以上ないくらいに赤面して、窓の外からの視線に首を振った。我慢しても我慢しても、小さな喘ぎ声が出てしまう。
 見ないで、って訴えたくても、恥ずかしくて目も向けられない。

 と、ウィーンと音がして、全開だった真横の窓が、再びゆっくり閉まり始めた。
 目を開けて隣を見れば、間近に迫る彼の笑顔。
 キスされるところ、泉君に見られても……それで彼はいいのかな?
 ううん、それ以前に、私のこんなトコを他の人に見られてもいいのかな?
 私は彼の、私しか知らない顔や声を、他の女の人に見られたくないけど。彼はそうじゃないのかな……?

 休むことなく私を攻め続けてた、残酷な指がようやく抜かれた。
 目尻に溜まってた涙を、彼の舌がべろりと舐める。
「やめるか?」
 低い声で訊かれた。
 そんな質問、ズルイと思う。もしここで私が「やめる」って答えたら、「あっ、そう」ってあっさり引いちゃうくせに。
 突き放しちゃうくせに。
 突き放されるの怖がってるの、分かってるくせに。

「ここ、じゃヤダ」
 震える声でそう言ったけど、でも、その希望はいつものように無視された。
 抜かれた指の代わりに、別のモノが押し当てられる。固く、太いモノ。体温を持たない、愛のないモノ。
 イヤだって言ったのに――。
「やっ!」
 怖くてとっさに上げた悲鳴は、彼の唇に塞がれた。覆いかぶさる体に、無意識にしがみ付く。
 泉君が、とか、もう考えられない。
 さっき自分で舐めて濡らした、固く黒いゴムのオモチャが、私の肉に割り入って来る。
 ――痛い。
「お、お兄、ちゃ……んんっ!」

 奥まで異物を差し込まれ、悲鳴と共に腰が揺れた。痛くて脚が浮く。彼に縋る手に力が籠る。
 宥めるように軽くキスされたけど、やっぱり彼のモノとは違う。
「お兄ちゃん、いや、お兄ちゃ……」
 私は首を振り、彼を呼び、無我夢中で彼に縋った。無言のまま、彼が黒いオモチャをくちゅくちゅと弄び、その度に体がビクンとなった。

 スイッチを入れられたのは、何度目かの軽いキスの後。
「ふあっ、あああーっ!」
 未経験の衝撃に体を弓なりに反らした私から――彼が、ゆっくりと手を放す。
 目は開けられなかった。
 カチンとシートベルトの音を聞く。
 縋れない彼の代わりに、立てヒザをギュッと抱えて、シートに背中を思い切り預けて。グロテスクなモノの振動を受け入れながら、私は、車が動き出したのを悟った。
 安堵と絶望を味わいながら、そっと窓の外を見たけど、泉君はとうにいなくなった後だった。

 どこまで見られたんだろう?
 どう思われたんだろう?
 オモチャに与えられる痛みと快感に、助手席でひとり喘がされながら、私はぼんやりとあの同級生のコトを考えた。
 彼が見せた、驚きの顔が脳裏にちらついて離れない。
 それに、何より……隆也さんの考えが分からなくて怖い。
 どうして泉君に見せたのかな?
 見られて平気だったのかな?
 泉君に明日、どんな顔して会えばいいのかな……?
 

 その後は、手近なラブホテルに連れ込まれて抱かれた。
 ラブホの駐車場でオモチャを抜かれた時には、もう足がガクガクで、満足に歩くこともできなかった。
 彼は、お姫様抱っこしてくれようとしたけど、さすがに「ヤダ」って断った。だって、下着をはかせて貰えないままだ。ミニスカノーパンでお姫様抱っこなんて、想像しただけでムリだった。
 
 服を着たまま、ベッドの上で1度。服を脱がされて1度。いつものように、されるがままに抱かれた後――彼のたくましい胸に寄り添って、少しだけまどろんだ。
 けど、そんなに長くは眠れなかった。メールの着信音が鳴ったのだ。
 もし母からのメールなら、と思って、ため息をつきながら起き上がる。すぐに返信しないと、後でうるさい。
 重い体を引きずって、カバンのケータイに手を伸ばすと……意外な人からの着信だったから、ビクッとした。

 泉君――。

 今まで野球部の用事以外で、泉君からメールなんて貰ったことがなかった。まさか、このタイミングで「業務連絡」なんてことはない、よね?
 恐る恐るメールを開くと、そこにあったのはたった一言。
――そんな男はやめとけよ――
 まるでお兄ちゃんのコト悪く言われたみたいで、グサッときた。

 他の人には分かって貰えないのかな? 母にも、泉君にも、他の誰かにも?
 私がどれだけ彼が好きか。
 彼がどれだけ優しいか。分かって貰おうとしちゃダメなのかな?
 叔父と姪とじゃ、結ばれないのは分かってる。分かってるけど、結婚とか出産とかだけが幸せのカタチじゃないと思うし。
 ……好きだから一緒にいたい、抱かれたい、って思うのは、許されないのかな?


 サッとメールを閉じようとしたけど、それより先に、後ろから手が伸びて、彼にケータイを奪われた。
「あっ」
 抵抗しようとしたけど、後ろから抱き込まれて左胸を強く掴まれたら、もう何もできなかった。
「ふーん」
 機嫌を損ねたような声に、胸の奥が一瞬で凍る。
 目の前に、泉君からのメールが突き出される。

――そんな男はやめとけよ――

「じゃあ、やめようか?」

 べろりと耳元を舐められる。低く掠れた声が、私を軽く突き放す。
 いつでもやめる気でいられるのは彼の方。私が泣くから、私が縋るから、「じゃあ続けようか?」って言う。ズルイ人。
 私は首を振った。
「やめるの、ヤダ」
 視界がじわりと涙で滲む。ぽい、とケータイがベッドに放られた。
 今度は両手で胸を揉まれる。大きな手で、強く。痛く。

「廉ちゃん、胸大きくなったな」
 ふふっと笑いながら、彼が言った。
 乳首をキュウッとつままれて――それには返事ができなかった。

(続く)

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