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小説 3
続・禁断の関係・4 (にょた・R15)
「お兄ちゃん、どこ? お兄ちゃん!?」
 無我夢中で呼びながらフロアを巡ってると、呆れたような声がした。
「なんだ?」

 声の方を振り向けば、すぐ向こうのレジの前に、彼が立っている。
 何かを買ってたみたい。黄色いレジ袋を手に持って、格好いい顔で笑ってる。
「お兄ちゃん……っ!」
 良かった、置いて行かれた訳じゃなかった。
 安心したら涙が出て来て、私はダッと駆け寄り、彼にドシンと抱き付いた。
 ははっ、という笑い声がして、ガシガシと頭を撫でられる。
 せっかく整えた髪が……って、ちょっと思ったけど、それより今は安心が欲しくて。私は彼のたくましい胸元に、頭をぐりぐり擦り付けた。

 けど……長くはそうしていられなかった。
 ぽんぽん、とあやすように背中を叩かれ、その後ぐいっと押しのけられる。理由はすぐに分かった。
「三橋?」
 そう、泉君が私を呼んだから。

「兄さん見付かったか?」
 泉君は優しい口調でそう言いながら、私達に近付いて来る。そして少し距離を置いて立ち止まり、彼に「ちわっ」と挨拶をした。
 泉君は大きな目で彼をまっすぐに見つめてて、その目線の鋭さに、私は少し不安になった。
 お兄ちゃんとは呼んでても、ホントの「兄弟」じゃないって、多分すぐに分かると思う。
 だって、私と彼は全然似てない。血の繋がった叔父と姪なのに……全然似てない。年の離れた兄弟には見えない。

 私が一人っ子だって、泉君は知ってたかな?
 「ホントにお兄さんか?」とか訊かれたらどうしよう?

 泉君と彼とをキョドキョドと見比べてると、彼がニヤッと唇を歪めた。
「廉ちゃんのボーイフレンド?」
 その訊き方に、ドキッとする。
 どういうつもりで言ってるのかな? それとも深い意味なんてないのかな?
「廉ちゃんの親戚のオジサンです」
 彼はそう自己紹介して、それから話を切るように、私の頭をぽんと叩いた。
「じゃ、行こうか、廉ちゃん」
 背中を押される。

「おー、また明日な、三橋」
 泉君が軽く手を上げる。
「あ、う、うん」
 手を振り返すけど、笑顔になれない。気まずくて落ち着かない。
 下着……はいてないの、気付かれてなかった、よね?
 彼との関係も、「秘密の恋人」だとか見抜かれてなかった、よね?
 
 私は泉君をちらちら見ながら、でもまっすぐ顔は見られなくて、彼に背を押されるまま店を出た。
 沈黙が気まずい。
 機嫌がいいのか悪いのか、彼の気持ちが分からなくて怖い。
 イジワルされるより優しくされたい。けど……。
 車に乗り込んだ後、ドアを閉める音がいつもより大きく響いた気がして、私はビクッと身を竦めた。

 彼は運転席に座ったまま、シートベルトも締めないで、さっきの黄色いレジ袋を開けている。ガサガサと音を立て、中から出したのは見覚えのある黒い紙箱。
『どっちにする?』
 さっきアダルトコーナーで、ピンクのとコレと選ばされそうになっていた。
 大人の……オモチャ……。
「そ、れ……」
 震える声で問いかけると、彼はようやく私を見て、ニヤッと笑った。
 そして乱暴にパッケージを引き破り、中から黒いモノを取り出した。

 それをどうするの、とは訊けなかった。
 どうして今開けるのか、も。
 私はイジワルの予感に緊張しながら、心もとないヒザを擦り合わせた。まだ下着ははかせて貰ってなくて、後部座席に放られたままだ。
 カチカチと何やら音を立てて、彼が電池を仕込んでいく。ああ、電池で動くんだ、と、思うけど見てられない。
 恥ずかしくて見てられない。
 視線を逸らして窓を見ると、ちょうど店の出口から、泉君が出て来たとこだった。
 黄色いジャケットを着たスタッフさんと、笑顔で何か話してる。
 ああ、お兄さんなの、かな? そう思ってぼんやりと見てたら、横から「おい」と声がした。

 ハッと目を向けると、ぐいっと抱き寄せられてキスされた。
「ヒザ立てて」
 キスの合間にそう言われ、足を手のひらで撫でられる。
 言われるままおずおずとヒザを立て、シートにブーツのかかとを乗せると……下着の無い敏感な部分に、彼の指が触れて来た。
「んっ」
 微かな痛み。そして快感の予感に電流が走る。

 舌を絡められ、指で攻められ、たちまち息がはずみだす。
 くちゅくちゅと水音がして、彼がキスしたままふっと笑う。
「インラン」
 意地悪なセリフに、胸が苦しい。でも好きで、苦しい。
 キスが終わり、ぽうっと彼を見つめると――今度は真っ黒でグロテスクなモノが、唇にぐいっと押し当てられた。

「よーくしゃぶれよ」

 耳元で囁く甘い声。その間も彼の指は、休むことなく私を攻めて、くちゅ、にちゅ、と音を立てながら、私の理性を奪っていく。
 バカな私。バカな娘。
 かすかにゴムの臭いのする器具を、私は素直に両手に持って口いっぱいに頬張った。
 ミニスカートの下、ショーツも着けず、はしたなく脚を広げてヒザを立てて。その中心に、男の指を受け入れて、火をともされて。

 と――いきなり、真横の窓がウィーンと開いた。

 えっ、と驚いて目を向けると……そこには、同じく驚いた顔をした泉君が立っていた。

(続く)

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あきゅろす。
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