小説 3
Pick&ChooseU・1 (高3・文化祭)マイマイ様へ
※こちらは、Pick&Choose の続編になります。
※三橋に彼女(オリキャラ)がいます。苦手な方はご注意下さい。
野球部が4人もいるんだから!
そんな理由で押し切られ、多数決で文化祭の出し物が「甲子園喫茶」になった時――真っ先に反対したのはオレと、オレの恋敵だった。
「冗談じゃねーぞ」
だって、オレ達野球部、特にエース三橋をマスコットにした、テーマ喫茶とか!
「絶対ダメ!」
オレの恋敵、つまり、認めたくねーけど三橋のカノジョってことになってる、たれ目女・矢部は、立ち上がって大声で言った。
「三橋と握手とか、三橋と撮影会とか、絶対ヤダからねっ!」
誰もそんなコト言ってなかったんだが、どうやら考えてはいたらしい。
黒板の前に立ってた文化祭委員ほか、複数の女子が声を揃えて「えーっ」と文句を言いやがった。
「絶対人気出るのにー。いーじゃん、握手とか写真とか、減るもんじゃなしー」
そんな無責任な発言に「減るーっ!」と叫んだ矢部を、今回ばかりは支持したい。
日頃は、朝から晩まで三橋にくっついてて、三橋を独占し、それを見せつけて来るイヤミなウゼー女だったけど。
オレが自分の気持ちに気付いたのは、矢部に「三橋の横」ってポジション奪われちまってからのことだったから、ちょっと出遅れた感は否めねぇ。
けど、気付いたからには、ゼッテー負けねぇって決めている。
三橋は、夏に甲子園で活躍する前から、女子に結構人気があった。
3年になって背が伸び、体つきもたくましくなって。なのに物腰は柔らかいし、喋り方も優しいし、親切だし、女子に向かって「さん」付けするしな。
最近知ったことだけど、実は告白されたことも、1回や2回じゃなかったらしい。
けど、全部オレとの愛の野球のために、断って来てたんだそうだ。
さすがオレのエース!
引退してから、即行でカノジョ作っちまったけど……それがまた、とんでもなくウゼー世話焼き女だったけど!
でも、それくらいで人気なんか、そうそう衰えるもんじゃねーよな。
あわよくば、とか狙ってる猛禽系女子の10人や20人いたっておかしくねぇ。
もしかして、どさくさに紛れて、大事な指先とか右ひじとか右肩とか、あちこちベタベタ触って来るヤツがいねーとも限らねーし!
そんな、危険な猛禽の中に、オレの三橋を晒せって!?
ふざけんなっつの。
大体、なんで喫茶なんだ。
「野球部関連で何かやりてーなら、別に展示でもよくねー?」
泉が冷静に突っ込みを入れたが、「勿論、展示もするよー」と、言い返された。
つまり、甲子園をテーマにした、展示喫茶なんだとか。欲張り過ぎだ。
「三橋君はしぶしぶ免除としても、やっぱり目玉は、野球部員との握手会か撮影会よね!」
「4人の私物の、オークション的な事ってできないの?」
「野球部4人はユニフォーム姿で接客ね」
「あっ、じゃあ、ユニフォームのロゴ写し取って、お揃いのロゴエプロン作ろうよ!」
「三橋君、せめて等身大パネル欲しいなー」
オレ達の意見なんか丸ムシで、喫茶の概要がドンドン勝手に決められていく。
さっきから女子しか発言してねー気がするけど、これは、オレら男子の方が大人って事か?
それとも、クラスの主導権、完全に女子に握られてる?
ついには教室の前の方に集まって、あーでもねーこーでもねーと相談始めた女子。
一方、男子は、諦めたようにその様子を眺めてる。
まあ、でもこんなもんか。
オレだって去年まで、文化祭に興味無かったし。
今もねーし。
つか、甲子園喫茶とか、ふざけた内容になってなけりゃ、多分気にかけてもいなかったしな。
「野球部〜頼んだぞ〜」
男子から貰えんのは、そんな無責任な声援だけ。
「ま、設営は任せろ」
って。当日はバンバン働けってか?
「阿部、諦めろ」
泉は自分こそ諦めた顔で、机に頬杖ついてるし。
田島はギャハハハ、と陽気に笑って「楽しそーじゃん」とかほざいてる。
三橋はっていうと、落ち着きなく視線を動かして、ひたすらキョドってるだけだ。
そんで、オレは――三橋の心配しかしてなかったから。
「阿部君も女子に人気あるよねー。三橋君と違って、特定のカノジョもいないようだし? 握手会も撮影会も、姫抱っこサービスも、何にも問題ないよねぇ?」
そんな要求を突き付けられ、尚且つ、女子全員の視線を一身に浴びて。
「……はぁ?」
そう、弱々しく訊き返すことしかできなかった。
(続く)
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