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夏のコーヒーカクテル
家に帰ってコールドブリューを仕込んでから、改めてレンと外に出た。
休日には巣山の店に行く他に、あちこち一緒に出歩いてよそのカフェで食事したり、ウィンドウショッピングしたりする。
今日は一旦帰っちまったから、近場のカフェ＆バーで食事だ。
オレとしては、水出しが終わるまでレンを味わうのターンでよかったんだけど、むうっと可愛くむくれられたから、仕方ねぇ。
「まっ、まだ明るい、でしょ」
って。明るくなきゃいーんだな、って、思わず確認したくなった。
近場のカフェや喫茶は、もう大概網羅したと思うけど、メシの美味い店やコーヒーの美味い店なら、何度通ってもイイ。
今日レンを誘ったカフェ＆バーは、コーヒーもメシもどっちもそこそこ美味い店だ。そんで、昼間から酒も飲める。カフェ＆バーだと、夕方６時から酒を出し始める店も多いけど、この店は昼でも酒が飲める。
まあ、昼間だとバーテンダーが揃わねぇらしくて、簡単なモンしか出ねぇけど、そこまで通って訳でもねーから、それでイイ。
オレが飲むっつーより、レンに飲ませてぇって目論見があんのは勿論のことだ。
ほろ酔いのレンはガードが軟くて、色っぽくて可愛い。いつも可愛いけど、１０割増しで可愛い。
美味い外食のついでに美味い酒を飲み交わし、美味いレンを味わった後で、レンの淹れた美味いコーヒーを飲む。これ以上ねぇってくらい、完璧な休日だ。
テーブル席に案内され、水が来るのを待ちながらメニューを取り出す。
メニュースタンドにはデカくてカラフルなメニューの他に、季節限定のリーフレットメニューもあって、おっ、と思う。
「夏カクテルだって」
リーフレットをレンに見せると、レンは「へ、え」って目を見開いてて、食い付きはなかなかよさそうだ。
「夏カクテル」の中には、コーヒー系のカクテルもあった。
コーヒー系のカクテルっつーと、アイリッシュコーヒーとかコーヒーロワイヤルなんかの濃厚で甘いヤツが思い浮かぶけど、ここに載ってんのはコーヒーモヒートとブラッドオレンジコーヒーだ。
ミントもオレンジも、どっちもコーヒーに負けるんじゃねーかと思ったけど、よく見ると「コールドブリューコーヒー使用」って書いてある。
確かに水出しのコーヒーは、ライトで苦みも少ねーし、ハーブの風味を殺すこともねーのかも。
「おお、美味そうっ」
鮮やかな写真が載ってっから、レンの食い付きもイイ。
こういう時、うちのメニューも写真付きにした方がいーのかなと思わねーでもねーけど、面倒臭ぇし、やっぱり却下だ。
「両方頼んで、飲み比べするか？」
オレの誘いに、「いい、ねっ」って嬉しそうにうなずくレン。
ちょうど水を運んで来たウェイトレスも、「人気ですよー」なんて勧めて来て、タイミング良かった。
「じゃあオレはこっちのコーヒーモヒートと、日替わり定食、ライス大盛り」
さくっと注文を済ませ、レンにメニューを渡して注文を促す。
「オレ、も、日替わり、大盛り」
オレに合せて同じの注文するトコも可愛い。
「それと、これ」
って、リーフレットの写真を指で差し、カクテルを注文するトコも可愛い。ウェイトレスが去った後、オレに視線を戻してにへっと笑うトコも、勿論いつも通り可愛かった。
肝心のカクテルだけど、コーヒーの香りはありつつも、あんまコーヒーの苦みやコクはなかった。フルーティでミント、そんで甘い。女にウケそう。
店内で写真撮ってるヤツもいる。まあ確かに人気ではあるんだろう。
ブラッドオレンジコーヒーを頼んだレンも、こくこく美味そうに飲んでて、気に入ったみてーだ。
「ちょっと甘ぇなー」
「タカには、そうかも、ね」
そんな会話を交わしつつ、互いのグラスを交換し、カクテルを口にする。
「これも、美味い、よ」
コーヒーモヒートを一口飲み、にへっと頬を緩めるレンの顔は、もう既にほんのり赤い。
本人に言ったら、きっと「まだ酔ってない」っつーんだろうけど、確かにまだ色気全開じゃねーから、もうちょっと飲ませてもいいのかも。
「オレはビール頼むから、それ全部飲めよ」
ニヤッと笑いつつコールボタンを押し、ウェイトレスを呼ぶと――レンは「ええー」と文句を言いつつ、嬉しそうに笑ってた。
レンはいつも可愛いけど、ほろ酔いのレンはもっと可愛い。カクテルはちびちび飲むくせに、定食はバクバク食べてて、そんな相変わらずのトコも可愛い。
定食を食い終わる頃には、首までほんのり染まってて、いい感じに酒も回ってる。
酔い潰れるって程じゃねーけど、ガードが緩まる程度には酔ってて、ふわーっとしてて色っぽい。
まあ、そんな色っぽい姿をあんま人目に晒す訳にもいかねーし、さっさと肩を抱いて連れ帰る訳だけど。ふひふひ笑いながらふわーっと歩くレンは、やっぱすげー可愛くて、そんですげー美味そうだった。
（も、もう１杯っ）
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