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過保護同士
アベミハで「あの子が自分を大事にしない分、僕がいっぱい甘やかすんだよ」とかどうでしょう。
https://shindanmaker.com/531520より





 休日出勤が続いてる阿部君のために、土曜日だけど早起きして、お弁当と朝食を作った。
 オレが休みの日は、いつもあんま早起きしないんだけど、放っとくとろくな朝食食べてなかったりするし、夏バテしないか心配、だ。
 いつもと同じ、阿部君より少し早い時間に起きて、1人分のお弁当と2人分の朝食を作る。阿部君を送り出し、それからベッドに戻って二度寝して――目が覚めると、お昼前だった。
「うおっ」
 慌てて起き上がり、ベッドから出ると、測ったようなタイミングで枕元のケータイが鳴る。誰かと思ったら田島君で、うわっ、と思った。
『もしもし、三橋ぃ? 今どこだ?』
 電話の向こうから聞こえるのは、ざわざわとした雑踏の音。
「ごっ、めん! 今、起きた!」
 返事しながらクローゼットから着替えを出し、バタバタと洗面所に向かう。

「あ、あ、あ、後で、電話、する」
 焦りまくったオレの言葉に、田島君は『ゆっくりでいいぞ』って言ってくれたけど、とてもそんな、ゆっくりはできない。
 人生最速で顔を洗い、歯を磨いてシャツを脱ぐ。
 ポロシャツにデニムっていう、ラフな格好に着替え、財布をポケットにねじ込んで、今度はオレから田島君に電話した。
 今日、お昼に田島君と泉君と、映画行こうって言ってたのに、思いっきり寝坊した。
 目覚ましかけたハズなのに、いつの間にか切ってたみたい。二度寝って危険だなって、改めて思い知る。
 期末テストも3者面談も終わり、夏休み前半の補習も終わって、ちょっと気が抜けたかも知れない。阿部君はまだまだ頑張ってるのに、悪いなぁってちょっと思った。

 結局、2人と合流できたのは、待ち合わせ時間から1時間も過ぎてからだった。当然映画には間に合わなくて、仕方なくお昼を食べてから、バッセンに変更、だ。
「ごめんな、さい」
 深々と頭を下げ、遅刻の理由を正直に話す。
「お、お弁当作るのに早起き、して、二度寝したら、寝坊した」
 そう言うと、「弁当って、阿部の?」って不思議そうに訊かれた。
「そう。阿部君、休日出勤。ここんとこ、多いん、だ」
 オレの言葉に、「どこも大変だな」ってうなずく2人。どうやら、忙しいのは阿部君の会社だけじゃないみたいで、みんな頑張ってるみたいだった。
「けど、休みでも愛妻弁当って。甘やかし過ぎじゃねぇ?」
 じろっと睨みながら言われて、「そ、そうかな?」って首をかしげる。
 でも夏バテとか心配だし、放っといたらスティックの補助食品とかで済ませそうだし、同棲してるんだから、管理は大事、だ。

「あ、阿部君が自分を大事にしない、から、その分、オレが甘やかしてあげるんだ、よっ!」

 ぎゅうっと両手を握って鼻息荒く宣言したら、2人は顔を見合わせて、おかしそうに吹き出した。
「お前ら、高校時代と逆だな」
 って。
「う、ええっ? そう、かな?」
「そーだよ、過保護」
「過、保護、かな?」
 そんな風な自覚はないけど、2人がそうだって言うなら、そうなの、かも?
 でも阿部君は、毎日残業して帰って来るし、休日出勤増えてるし、「あちー、だりー」しか言わないし、最近お疲れで心配、なんだ。
「過保護、でも、上等、だっ」
 キッパリと宣言すると、また2人から「はいはい」って言われたけど、過保護、辞めるつもりはなかった。

「似たモノ同士だな」
 そんな風に言われると、ちょっと嬉しい。
 きっとオレがダメになりそうなときは、阿部君が過保護に世話してくれるんだろう。疑いなくそう思って、じわっと幸せな気分になった。

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あきゅろす。
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