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初めてのたこ焼き
タコ焼きを焼くけどどれもうまくいかず、やっと出来た奇跡の一個を2人で崇めるアベミハ
#恋ともつかない
https://shindanmaker.com/736744より




 会社の宴会のビンゴゲームで、阿部君がたこ焼き器を貰って来た。
 最新式のじゃなくて、昔からあるような電気式のだけど、たこ焼き器って初めてだから、ちょっと嬉しい。
「じゃあ、たこ焼き祭り、しよう」
「いや、祭りじゃなくていーだろ」
 オレに比べて阿部君はテンション低目だったけど、一応賛成してくれた。なんだかんだ言って、たこ焼きは美味しいし、正義だよね。
 まず必要なのは、たこ焼きミックスとゆでだこと、紅ショウガと青のり、天かす、かつお節……。冷蔵庫にないのは分かってるので、さっそくスーパーで買って来た。
「まずは油ひいてー」
「あー」
 ヤル気なそうに返事しながら、阿部君がたこ焼き器にサラダ油を引いていく。その間にオレは、たねの準備、だ。
 たこ焼きミックスに、計量カップで測った水を入れ、ぐるぐる混ぜ込む。みじん切りした紅ショウガと、天かすも入れて、だまにならないようひたすら混ぜる。

「そろそろじゃねぇ?」
 阿部君の言葉に従い、お玉ですくったたねを入れると、じゅうっと生地が音を立てた。
「おい、生地、多くねぇ?」
「おっ、多くない、よ。タコ、入れて」
「でっかけりゃいいってモンじゃねーんだぞ」
 わいわい言いながら、たこ焼きが焼けるのをじっと見守る。
「まだ?」
「えっ、まだだよ」
 オレがそう言ってんのに、「そろそろじゃねぇ?」って、阿部君が竹串を手に持った。
 ああっ、と止める間もなく、じゅうっと有り得ない音が響いて、「もうーっ!」って怒鳴る。

「まだだって言った、でしょー」
「分かんねーよ、回して見ねーと」
 悪びれもしないで言い放つ阿部君に、反省の2文字はないみたい。
 間もなく10個のたこ焼きは、ぐちゅぐちゅのイビツな何かになった。せめて丸くして欲しいんだけど、どうなんだろう?
「生地が多過ぎなんだよ、貸してみろ」
「ああっ、油っ」
 言い合うオレたちの目の前で、再びじゅうっと音を立てるたこ焼き。
「火が通ってりゃいーじゃん」
 って、そんな適当なことを言いつつ、竹串をキープしたままの阿部君は、絶対意地になってると思う。

「ま、丸く焼い、て」
「やってるって」
「お、オレ、が」
「イヤ、お前には絶対無理」
 わいわい言いながら挑戦した2回戦も、あんまうまく行かなくて。
 ネットでコツを検索し、「よしっ」って挑んだ3回戦で、1個だけ完璧に真ん丸のたこ焼きができたときには、思わず「おおーっ」って2人で拝んだ。
「これこそ、たこ焼きっ」
 興奮するオレにうなずきながら、「どうだ、スゲーだろ」って自慢げに阿部君が胸を張る。
 確かに奇跡的に会心の1個だったけど、それ以外の失敗はほぼ、阿部君のせいに違いない。

「す、ごい、けど……」
 すごいけど、「すごいっ」って尊敬する気にはなれなかった。

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