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フランス革命とゼリーの日
「今日は、何の日だったでしょう?」
教室の教壇に立ち、生徒たちに質問すると、「はーい」って元気よく手が上がった。
こういう場合、大体ウケ狙いだって分かってる。
分かってるけど、当てなきゃいけないのもお約束、だ。
「7月14日は、ゼリーの日です!」
堂々とした回答に、教室中がドッと沸く。
「もっと、有名なのあるだろ」
笑い声がある程度収まるのを待って、淡々とツッコミを入れると、今度は逆に、みんなが真面目な顔になった。
「有名なのって何ですか?」
「歴史的、なの」
生徒の質問に答え、ぐるっとみんなの顔を見回す。歴史の授業中なんだから、歴史的なのに決まってる。
っていうか、ちょっとは年表開くとかして欲しい。
「分かった人」
答えを募っても誰も手を挙げてくれなくて、ちょっぴりガッカリした。
「7月14日は、フランス革命の日、だよ」
オレの言葉に、みんなが「ああー」と声を上げる。
「何年でしょう?」
当たり前の質問に、今度はいっぱいの手が挙がった。
ゼリーの原料になってるゼラチンの日も、7月14日なんだって。
これは偶然じゃなくて、フランス革命の日に合わせてこの日を記念日にしたみたい。
フランス語でジュレって呼ばれるゼリーができたのも、18世紀末から19世紀初頭、ちょうどフランス革命前後の頃のことらしい。
ちょっと調べると、色んなことが繋がってたりして、結構面白い。
そういう面白さから、勉強に繋がってくれると嬉しいんだけど、中学高校で成績のよくなかったオレには、あんま強くは言えそうになかった。
そういえば、歴史年表覚えるの、昔は苦手だったっけ。
『なんで試合内容暗記できんのに、年表暗記できねーんだ!?』
阿部君にそんな風に怒られて、年表を詰め込まれたの覚えてる。白地図ならぬ白年表をバーンと出されて、ちまちま埋めさせられたっけ。
あの頃があるから、今があるのかなぁ? そう思うと、感謝しなきゃーって思えてきた。
ゼリー寄せ、は、今から作るの面倒臭いから、お礼にゼリーを買って帰ろう。
ふひっと笑いながらコンビニに寄り、デザートコーナーを覗き込む。
オレンジゼリー、ももゼリー、グレープゼリー、パンナコッタ……。ちらちら見比べながらしばらく悩み、果肉たっぷりのゼリーを2つ選んで買った。
デザートはゼリーにして、じゃあ、おかずは何にしようかな?
阿部君、ゼリー、いらないって言ったら貰おう、かな?
あれこれ考えながら夜道を歩き、今日の献立を考える。
阿部君が帰って来たのは、それから1時間くらい後のことで。偶然だけど同じゼリーをお土産に買って来てくれて、気が合うなって嬉しくなった。
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