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お中元のおすそ分け
今日のアベミハ:宅飲みで飲み比べして潰れる
#同棲してる2人の日常
https://shindanmaker.com/719224より



「ジャーン」
 そんな擬音を口にしながら、三橋がデカい紙箱の中身をバーンと見せた。
 有名メーカーの定番ビール、ロング缶500ミリ12本セット。
「お、中元」
「……の、貰いモンだろ」
 化粧箱の表書きには三橋のじーさんの名前が書かれてて、余ったのを貰って来たの、バレバレだ。
 けど、貰いモンだろうが何だろうが、ビールはビールだ。普段発泡酒ばっかだから、ビールの貰いモンはかなり嬉しい。
 さっそく冷やしてるみてーで、紙箱の中は6本くらい空きがある。
「もう冷えてんの?」
 冷蔵庫を覗きながら訊くと、扉に6本ずらっと並んでて、おおっ、と思った。

「1日1本、だよ」
 三橋の注意を「おー」と流しながら、冷えた缶を1本取り出す。
 カシュッとプルタブを開けるとすげーいい音がして、一気にテンションが上がった。
 ぐっとあおると、のどに爽快な炭酸が来て、ほのかに苦くてすげー美味い。ごくっと飲み干すと胃の中が一瞬冷たくなって、それからじわーっと熱くなった。
「はー、美味ぇー」
 ぐいっと口元をぬぐい、リビングのソファにドカッと座る。
「やっぱ夏はこれだなー」
 あっという間に飲み干して、テーブルの上に缶を置くと、「ああっ」って三橋の文句が聞こえた。
「もう飲んだ、の? 今日、これで終わり、だよ」
 親父に文句言ってる母親みてーなこと言ってっけど、その右手にはしっかり同じ缶が握られてて、イマイチ説得力がねぇ。

 カシュッ。三橋が缶を開け、ラグの上に座ってビールを煽る。
「ふああー、美味い」
「なー、美味いよな」
 オレの言葉にこくこくうなずき、ぐぴぐぴとビールを飲む三橋。
 しばらく気持ちのいい酔いに浸ってたら、三橋が「あっ」って立ち上がった。
「おつまみ、忘れてた」
 カン、とテーブルに缶を置く、その中身はほとんど空っぽだ。
「せっかく作ったんなら、食おうぜ」
 ニヤッと笑いながら後を追い、背中にぐいと腕を回すと、「もうー」ってまた迫力なく怒られた。

 皿の上にはピリ辛きゅうりと、ゆで卵の明太マヨのせ、子持ちシシャモ。
「美味そうじゃん」
 誉めながら冷蔵庫を開け、中から2本取り出すと、「あっ、もうー」って怒られる。
「1日1本って、言ったでしょー」
 って。だったら、6本も一気に冷やすなっつの。
 くくっと笑いながら缶を開け、「開けちまった」って言い張ると、ぺしって腕を叩かれた。
「わざとらしい、よっ」
 ぷうっと膨れる恋人は、何度見てもすげー可愛い。
 文句言いつつ、結局2本目を開けちゃうとこも、誘惑に弱くて可愛い。

 子持ちシシャモを頭からパクッと齧って、中身の減ったビールを煽る。
「うまっ」
「美味い、ねー」
 競うようにビールを煽り、おつまみを食べ、また酒飲んで……そのうち視界がぐるーっと回り始めたけど、楽しいから気になんなかった。
 三橋がごろっと寝転がり、オレも箸がうまく使えなくなって、食おうとしたきゅうりがぼたっと落ちる。
 まだ2本しか飲んでねーのに、おかしーな。
「ふあー……」
 妙な声を上げ、くすくす笑ってる三橋は、完全に酔っ払いだ。
 やっぱ500mlを2本は多かったか?
 次から2本目は、350mlにするべきか?

 どうでもいいこと考えながら、ごてっとテーブルに突っ伏して、「寝んなぁ」と三橋に声かける。三橋から返事があったかなかったか、もう頭が働かなくて――記憶があんのは、そこまでだった。

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