Season企画小説
節分・鬼パーティ・4 (終)
レンのウブな反応を引き出すには丁度いいと思ったエロクイズだけど、改めて会場中を見回してみると、注目してるヤツは半分くらいだった。
ビュッフェテーブルからこっちのステージ側にいるヤツばっかで、テーブルの向こう側に陣取ってる連中は、クイズを聞きつつビュッフェにたかってるか、クイズ聞かずに飲み食いしてるかのどっちかだ。
だったら、いつまでもこんなゲーム大会とやらに付き合ってる義理はねぇ。
「メシ食わねぇ?」
こそりとレンに囁きつつ、腕を回した腰を押す。
「で、で、でも」
レンはちゅうちょしてるっぽいけど、同じネタばっかでいい加減飽きたし、司会者よりオレを見て欲しい。
「何? もっと聞きてーの? エロいコトに興味あんのか?」
こそりとからかってやると、ぼんっと赤面すんのが可愛い。
丸っきり興味ありませんって顔してるより、素直に照れてる様子もイイ。
「きょっ、きょっ……っ」
興味ねぇって言おうとして、言えてねーのが微笑ましくて頬が緩んだ。ルリって名乗ったゴスロリイトコは「口下手だ」とか言ってたけど、このドモリっぷりは口下手なんてレベルじゃねぇと思う。
そんでも素直にステージに背を向けて、ビュッフェの方に来てくれたんだから、脈がねぇって訳でもねぇんだろう。
「エロいクイズなら、オレが出してやるよ」
腰を抱いたままテーブルの方に近寄って、レンの手に皿を持たせる。
「6はシックス、靴下はソックス。じゃあ、オレが今してーことはなーんだ?」
ガキの時に流行った、しょうもねぇクイズを1つ。
結構有名なヤツだと思ってたけど、案外レンは知らなかったみてーだ。「シ、ソ……っ」って言葉を詰まらせて、真っ赤になって恥じらってて、すげー可愛い。
むき出しの肩もチラ見えの腹も白いのに、同じく白い顔と耳は真っ赤で、マジで可愛い赤鬼だ。
白い肌に食い込むボンデージ、ヘアバンドにつけられた角、角と一緒についてる耳も倒錯的なくらい似合ってて、このまま丸ごと食いてぇと思う。
「答え、何?」
ニヤッと笑いながら囁くと、レンの赤い顔がますますカーッと赤くなる。
「しっ、しっ、」
「し? シックスナイン?」
「違っ!」
真っ赤な顔で振り返る、レンの反応が可愛くておかしい。からかい過ぎんのよくねぇと思いつつ、ウブな反応が見たくてたまんねぇ。
ああ、これがいわゆる、好きな子にちょっかい出したくなるいじめっ子の気分ってやつなんだろうか。
正直、初恋もまだだったし、そういう不条理な感情今までちっとも分んなかったけど、これかぁって悟ると納得だ。これはやべぇ。仕方ねぇ。
「ほら、答えはあとでたっぷり教えてやるから。今はメシ食っとけよ」
くくっと笑いつつトングを掴み、レンの持つ皿の上に目についた太巻きを盛ってやる。
オーソドックスな太巻きもあるけど、サーモンとかカツとかアナゴなんかの太巻きもあって、色んな種類で面白い。
恵方を向かずに食う太巻きなんかに意味はねーけど、レンがこれにかぶりつく顔は見てみてぇ。
斜め上を向いて目ぇつぶってあんぐりと頬張る……って、その恵方巻の作法事態、下ネタ意味してんのをウブなレンは知ってんだろうか?
「あっちで一緒に食おーぜ。どれが美味いか教えてよ。それとも、オレのを食ってみる?」
腰を撫でながらニヤッと笑いかけると、レンはぶんぶん首を振って、「太、巻きっ」ってたどたどしく答えた。
「オレの、って意味分かった?」
それにもぶんぶん首を振られて「知らない」って言われたけど、赤面してる時点で分かってんだろっての。
下ネタを知らねぇようで知ってて、でもやっぱ中途半端で。すぐに真っ赤になるくらい不慣れで。同年代の男だっつーのに、こんな魅力的で惹かれねぇ方がどうかしてる。
「なあ、連絡先教えてよ。そしたら、さっきのクイズの答え教えてやるから」
実地で、とは口にしねーままポケットからケータイを取り出し、今後に繋げる努力する。
クイズの答えは、問題を英語で言うこと。つまり、オレの今してぇことは「what I want to do now」。
けど、レンが多分想像したことだって、間違いじゃなかった。
くだらねぇ下ネタクイズなんかに意味はねーけど、レンのウブな様子をこうして間近で見られんのは悪くねぇ。
できればもっと、これからもずっと、もっと近くで見ていてぇ。
デカい口でぶっといモノをあんぐり咥えてむさぼるレンは、色気のねぇ大食い鬼なのにエロくて可愛い。ちらちらこっちを気にしてんのも可愛い。
遠慮なくケータイを向け、太巻き食ってる横顔の写真を撮り、煽情的なボンデージを記録に収める。
見えそうで見えねぇ乳首は、どんな色してんだろう?
その下に絶妙に隠された肌の、触り心地も気になる。
ステージの方ではまた別のゲームが始まったみてーで、わいわい賑やかな声がする。けど、それに夢中になってんのは、やっぱ鬼たちのうちの半分で。
オレの目の前にはボンデージの赤鬼がいて。
豆まきはねーけど太巻きはあって、オレも今は鬼の1人で――互いに鬼同士、節分に少々羽目を外すくらい、よくあることに違いなかった。
(終)
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