Season企画小説
ぱいぱいポッキー (2019いいおっぱいの日・原作沿い高1)
今時ポッキーゲームを知らねぇって言い放つ程無知じゃねぇ。ポッキーゲームっつーのは要するに、両端からポリポリ食い合って、最後にキスするかどうかってヤツだろう。
恋人同士ならそのままキスすりゃいーし、友達同士ならチキンゲームになるとも言える。
ポッキーの長さ分の距離に誰かの顔が近付くとか、普通に話してりゃ有り得ねーからこそ、ゲームとして成り立つ面もある。
ゲームにかこつけて急接近を図ってもいい。イチャイチャしたけりゃしてもいい。ただ、だからってやりてぇかどうかってのは別の話だ。
「阿部、ポッキーゲームとかやらねーの?」
水谷にそう訊かれて「は?」って真顔で訊き返すくらいには、くだらねーと思ってた。
だって、別にポッキーなんか使わなくたって、キスしたけりゃすればいーじゃん。それにそもそもチキンゲームだとすると、それをやる意味がワカンネー。
オレに取ってポッキーゲームとは、マジで興味の範疇外だった。
ただ、付き合ってる相手はっつったらどうなんだろうとは思う。
「ええー、三橋にやろうって言われたりしないの?」
「しねーなぁ」
水谷の問いにキッパリ答えてから、しねーよな? と改めて考える。
「ああー、まあ、三橋からは言えないかぁ」
納得したように離れてく水谷の態度に、分かったようなこと言うなってムカッとしたけど、考えて見りゃ確かに三橋からは言えねーかも知れねぇ。
言い出せねーでいるだけで、もしかしたらホントはああいうの、やりてぇって思ってる可能性はあるんだろうか。
仮にそうだとすると、言い出せねーのは元々の遠慮がちな性格のせい? それとも、オレが丸っきり興味ねぇのを悟ってるからか? よく考えりゃどっちもありそうで否定できねぇ。
「ポッキーゲームな……」
オレの呟きを耳にして、ぐいっと身を乗り出して来る水谷。
「購買に売ってるよ、ポッキー」
「あ、そう」
教えてくれんのは親切心だとは思うけど、そんな気合入れて買いに行くつもりはねーから、正直余計なお世話だった。
ポッキーゲームにも色々あるって知ったのは、その放課後のことだ。
午後の練習を終え、誰もいねぇ三橋の家にいつものように寄ってった後。「あの、ね」って恥ずかしそうに顔を赤くしながら、恋人が雑誌を開いてオレの前に差し出した。
そこに写ってたのは、胸元を大きく開いたミニスカナースのエロ写真。
「は?」
意味が分からず、首をかしげながらそのグラビアをよく見ると、大きく開いた胸元からこぼれそうになってるデカい胸の、その間にポッキーが挟まれてる。
けど、だからそれが何って話だ。
三橋は男、オレも男。当たり前だけどポッキーを挟むような胸はねぇ訳で、そのグラビアをわざわざ見せる意味がワカンネー。
もしかして、こういうのがやりてぇって事なんだろうか。頑張って寄せて寄せても無理じゃねぇ? いやそれとも、やっぱ女と付き合いてぇって意味なのか?
「これが何?」
そう問い返す声が、思いっ切り低くなっちまったのは仕方のねぇ事だろう。しかもミニスカナースだし、三橋の好みドンピシャなエロ本で、それを持ってるって事そのものにもムカついた。
けど三橋本人は、オレの不機嫌さに気付いてもねぇようだ。
「あのね、これ、やりたいって思っ、て」
そう言いながらグラビアを引っ込め、代わりにポッキーの大袋を差し出して来る三橋。
普通の箱入りのじゃなくてファミリーパックっつー気合の入り方も謎だけど、「やりたい」とか言いつつ、シャツを脱ぎ出したのも謎だ。
「は? どうやって?」
ただでさえ薄っぺらい体してんのに、いくら頑張って肉を寄せてみたって無理なものは無理じゃねぇ?
戸惑うオレの前で、上半身裸になった三橋は、「でも、胸、ないから、ね」って照れ臭そうに言いながら、チョコレートクリームをどーんと出した。
意味がワカンネー。
胸がねぇって分かってんのは幸いだけど、チョコクリームの意味が分かんねぇ。食パンにジャム代わりに塗るヤツだってのは分かるけど、そういう問題じゃねぇ。
それで何をすんのかと思ったら、三橋はそのチョコクリームを自分の胸にぺたぺたと塗り付けて――。
「ぱ、ぱいぱいポッキー、です」
そう言って、チョコを塗り付けた胸に、ポッキーをぺたりと貼り付けた。
いやマジ、意味がワカンネー。何がぱいぱいだ。挟めてねーだろ!
「お前なぁ……」
少々呆れつつ、おバカな恋人の肩を掴んでそのまま床に押し倒す。
「うひゃっ」
色気のねぇ悲鳴が可愛い。ポッキーを胸に貼り付けてんのも、間抜けで可愛い。
ポッキーゲームには興味ねーし、ぱいぱいポッキーも正直バカバカしいとしか言えなかったけど、バカバカしい事にムダに行動力を発揮する、おバカな恋人は悪くねぇ。
なんでオレ、こんなのが好きなんだろう。
遠慮なく顔を寄せてポッキーに食いつくと、三橋のニオイとチョコが混じって、何とも言えねぇ甘さが香った。思わずぶはっと吹き出すと、「わ、笑っ……」って恋人が唇をとがらせる。
「だっておかしーもん」
くくっと笑うと、じわじわ赤面しつつ両手で顔を覆う恋人。今頃になって照れても、ぱいぱいポッキーは取り消せねーし、胸に塗り付けたチョコは消えねぇ。
「田島にでも入れ知恵されたんだろ? バカだな、お前」
からかいつつも胸板に舌を這わせ、塗りたくられたチョコを舐める。
三橋の体温で温まったチョコクリームは、とろりと濃厚に融けてすげー甘い。ポッキーより甘い。ポッキーよりエロい。
チョコを舐め取りながら乳輪にも口を寄せ、ぷくりとした乳首を攻める。
「ふあっ」
びくんと恋人が体を跳ねさせたけど、肩を強く押して抵抗を封じた。そのままべろべろと胸を舐め、チョコと共に反応を味わう。
「そもそも今日はまだ、ポッキーの日じゃねーっつの」
オレの言葉に「ふえっ?」と声を上げる三橋は、今日が何の日か知らねーらしい。
11月8日、いいおっぱいの日。
図らずもいいおっぱいを味わえて、これはこれで悪くねぇ。たまにはこういう行事めいたことに、乗ってやるのもいいなと思った。
(終)
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