Season企画小説 悪霊祓いとカボチャランタン・1 (2018ハロウィン・守護神×祓い師・R18) ※この話は「悪霊祓い廉」の続編になります。 三橋廉は高校生にしてプロの悪霊祓いである。 古くから続く悪霊祓いの一族・三橋家の当主の孫であり、若手随一の実力者。雑多な霊を近付くだけで斬り払い、跡形もなく消し去るその姿は、「琥珀鬼」とも呼ばれ、畏れられている。 見る者が見れば、廉の周りに琥珀色の美しい光がらせん状に渦巻いているのが分かるだろう。 これこそが廉の力の証であり、彼にぴったりと寄り添う守護神の寵愛の証でもあった。 今日も廉は一族の指示に従い、放課後に悪霊祓いの現場に向かった。 現場は人身事故の絶えない踏切である。開かずの踏切とも言われるその現場では、遮断機を強引に潜り抜け、電車と衝突する事故が相次いで起きているらしい。 しかも最近では、電車の通るハズもない真夜中に、警報の音と共に遮断機が下りることもあるそうだ。 学校から直接現場に出向いた廉の格好は、Tシャツの上に綿シャツを重ね着した、高校生らしい服装だ。ジーンズにスニーカー、そして通学カバン代わりのエナメルバッグ。どう見ても、プロの祓い師には見えない。 けれど、見た目で侮られるのは、廉の方も慣れている。 「み、三橋家から派遣、されました。廉、です」 とつとつと名乗り、依頼者にぺこりと頭を下げる。 仕事の依頼者は鉄道関係者だったように思うが、悪霊祓いには関係ないので、廉の記憶も定かではない。 「キミが? 本当かね?」 依頼者が顔をしかめながら疑問を口にしていたが、それも耳には入らなかった。 代わりに耳に入るのは、傍らにぴったりと寄り添う少年の言葉だ。 『こりゃ多いな』 ふふっと耳元で笑う声に、廉は黙ったままこくりとうなずく。 少年の姿も声も、余程力のある人間にしか感じ取れるものではない。この場に「もう1人」少年がいるなど、依頼者には当然分からないだろう。 漆黒の狩衣に漆黒の髪。ハッとする程整った顔立ちをした、漆黒の目を持つ守護神だ。 依頼者の懐疑的な視線を無視して、踏切に近寄る廉。 ふいにカンカンカンカンと鳴り響く警報。 ギギッ、と音を立てて遮断機が下りる。それをくぐるようにして、廉が線路に立ち入った。 「キミ!」 焦ったように依頼者が呼び止めるが、廉は構わず線路と線路の間に立ち――。 「邪魔、だ」 感情のない声で、ぽつりと一言呟いた。 踏切の中に凝っていた黒い巨大な塊が、廉の接近におののいて揺れる。 おおお、と声なき声を上げ、廉を恐れるように動き出す塊。けれど、そんな悪霊の逃亡を「琥珀鬼」が逃すハズもない。 「消えて。上がっ、て」 短い言葉で断罪し、身に潜む力を開放する。 廉の周りにらせん状に渦巻いていた光が、ぶわりと大きくなってらせんを広げ、容赦なく悪霊の塊を斬り裂いた。 バラバラにされた塊に、廉が軽く右手を差し出す。 悪霊を斬り裂くらせんの光は、廉の守護神の冷徹な刃。差し出された右手から放たれる琥珀の光は、廉自身の慈悲の導き。 琥珀の光は斬り刻まれた霊を包んで、上へ上へと導いていく。 この美しい光景を目にすることができるのは、廉以外には誰もいない。けれど、場が清浄になったのは、霊感を持たない依頼者にも分かったのだろう。 「終わりまし、た」 「お世話になりました」 ドモりながらの廉の言葉に、依頼者は神妙な顔で頭を下げた。 仕事の後、早々に家に帰りたかった廉だったが、それは傍らに寄りそう守護神の少年によって却下された。 『家まで待てねーよ』 くくっと笑う声と共に、耳元に見えざる舌が這わされる。 見えざる体が廉を後ろから抱き締めて、見えざる手がTシャツの中を這いまわる。 「ちょっ、ダメ……っ」 駅へと向かう足を止め、声を詰まらせて身をかがめる廉。 『ここで犯されたくなきゃ、寄り道しろ』 有無を言わさぬ声と共に、乳首をつままれてコリコリと刺激されれば、廉にはうなずくしか道がない。 目についたスーパーに駆け込み、男子トイレの個室の1つに閉じこもる。それを待ってたかのように、不可視の手が廉の綿シャツを剥ぎ取って、ジーンズのベルトを外し引き下ろした。 「隆也……」 上ずった声で、廉が相手の名前を呟く。 それを合図にしたかのように、剥き出しにされた廉のつぼみを、見えざる肉が貫いた。 「ふあ……っ、……っ」 高い悲鳴を上げかけながら、必死に声を殺す廉。 勿論、男子トイレにもこの個室にも少年神の結界が施されてはいたけれど、だからといって、声を上げるのが恥ずかしくない訳がない。 個室の壁に手を突かされて、後ろから抱き締められ、強く体内を穿たれる。 必死に抑えていたハズの声が、抜き差しが強く激しくなる内に、耐え切れなくなって漏らされる。 「あっ、あ、はあっ、あっ……」 悦びの混じった声が、スーパーのトイレの個室に響く。少年神の結界に阻まれ、その声を聞くものは他にいない。 『気持ちイイか、廉?』 耳元に落とされる囁きに、喘ぎ混じりの声で「んんっ」とうなずく。 これは神事だ。 神の力を借りる代わりに、自分の身体を差し出す神事。 やがて廉の体腔に吐き出された神の精は、熱く廉の身に浸みて、琥珀色の光を生み出した。 (続く) [*前へ][次へ#] [戻る] |