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Season企画小説
失敗のフェードアウト・4 (R18)
 指が1本入っただけじゃ終わらない。そんなことも、初めて知った。
「ひゃっ、やだ……」
 身じろぎをして、その手から逃れようとしたけど、そこまで阿部君は甘くない。
「ちゃんと準備しねーと、痛ぇ思いすんのはお前だぞ」
 指をぐりぐり動かしながら、脅すようにオレの顔を覗き込んでくる。
「で、も……」
 痛い思いは確かにイヤだけど、こんな準備もやっぱり怖い。そんで、ぐいぐい押してくる阿部君も怖い。逃げ道がないのも怖かった。
 はっ、と息を詰めながら、太い指が動く感触に身を竦める。
 思わずぎゅっと阿部君に縋ると、ふっと満足そうに笑われた。
「それでいーんだよ、三橋。そうやってオレに縋ってろ」

 ちゅっと軽いキスの後、べろりと頬を舐められる。ライオンに捕えられ、舐められてる子ネズミの気分。
 指が引き抜かれ、また増やされて戻って来る。
「ふあっ」
 しがみついて叫んでも、「準備」する手は止まってくれない。
 阿部君は手加減するどころか、怯えるオレを見て楽しんですらいるみたい。「カワイーな」って囁かれた。
「声、抑えなくてもいーんだぜ」
 って。そんなこと言われても、呼吸の仕方もよく分かんない。
「お前の中、すげー絡み付いてくる」
「やっ」
 聞きたくなくて顔を逸らすと、さらに指が増やされた。悲鳴を上げてびくっと震えるオレに、もっと怖いコトが告げられる。
「オレのは、もっと大きいぞ」
 くくっと笑われ、耳元に舌を這わされて、怖くて、もがくしかできない。

「ああ、お前ん中にようやく入れる」
 嬉しげに囁かれて、ちょっと胸が疼いたけど、悦びよりやっぱり「どうしよう」って思いの方が強かった。
 逃げたい。逃げられない。もっと、後にして欲しい。考える時間が欲しい。けど、「1年待っただろ」って言われると、反論できない。
 この1年、オレは逃げられたって思い込んで安心しきってて、何も考えて来なかった。
 こんな時、どう躱せばいいのかも考えられない。
 指が引き抜かれ、ぶちゅっと謎の液体を注がれ、脚を掴まれて押し開かれる。組み敷かれて「ひっ」と悲鳴を上げると、阿部君は嬉しそうに笑みを浮かべてて――。
「愛してる、三橋」
 鼓膜をビリッと震わす声で囁きながら、指で慣らして拓いたソコに、熱いカタマリを押し当てた。

 「待って」と訴える暇もなかった。
 本人が言う通り、指よりも圧倒的に大きくて太いモノが、ぐっと中に入ってくる。
「あ、あ、あ、あ、ウソッ」
 上ずった声で喚いても、状況は何も変わらない。阿部君が緩やかに腰を振り、肉の杭をオレに埋める。
 奥まで貫かれた時は、びくっと腰が揺れた。
「はー、すげぇ」
 阿部君が満足げな声を出し、オレをぎゅっと抱き締める。
 深くキスされ、舌を差し込まれたけど、それに応える余裕もない。「あ、あ……」と声を上げ、ひたすら胎内の異物感に耐えた。
 「可愛い」とか「すげぇ」とか「オレのモノだ」とか、囁かれ、告げられたけど、もうよく分かんなくて喘ぐしかない。
 ゆっくりと阿部君が動きだし、夢中で背中にしがみつく。
 中を擦られ、えぐられ、揺さぶられる度に声が漏れる。閉じられない口からは「あ」の音しか出せなくて、自分でもどうしようもなかった。

 やっちゃった、って思った。
 取り返しのつかない事態に、どうしようって焦る自分がいる。
 もう遅い。逃げられない。後悔と諦めが頭の中を支配して、考えがぐるぐるまとまりつかなくて、もう訳が分かんなかった。
 ダメだって思うのに、口から漏れるのは上擦った喘ぎ声で、手足に力が入らない。
 体の奥の深くを突かれ、こすられて、支配される。
「あ、ああ、ふあ、あっ」
 喘がされながら目を閉じて、首を振ってもがく。
 そんなオレの心を見透かしたみたいに、阿部君がまた耳元で囁いた。
「考えんなって」
 ぎゅっと背中を強く抱かれ、重なった肌の温もりを感じる。
「お前は全部オレに任せて、快感にうっとりしてりゃイイ」

 そんな訳にはって思ったけど、揺さぶりが強くなって、言えなかった。
 否定しても否定しても快感の波が押し寄せて、精一杯の思考が散り散りに砕ける。「考えるな」って、前にも言われたな。そう思ったけど、それが何かは思い出せなかった。
 異物感が快感に変わり、悲鳴が嬌声に変わる。
「ああああーっ」
 頭の中に星が光って、ビリビリと脳が痺れた。
「三橋、三橋っ」
 阿部君が、抑えた声でオレを呼ぶ。
 どこか切羽詰まったような雰囲気で、彼も感じてるみたいでじわっと嬉しい。
「あ、あっ、あべ、くんっ」
 縋り付いて喘ぎながら、オレも彼の名前を呼んだ。「好き、好きっ」と、思いが口をついて溢れ出る。
 「オレも」って言われた時は、嬉しかった。突然抱き起され、ひざの上に乗らされて抱き締められる。

「愛してる、三橋」
 さっきと同じ言葉を告げられたけど、もうそんな、怖いとは思えなかった。
 頭の中は空っぽで、砕かれた考えの断片が散らばるだけで、それ以上何もない。求められるまま舌を絡め、彼の首に腕を回す。
「もう逃げなくていいよう、閉じ込めような」
 そんな言葉と共に、腕の中に囚われて、息ができないくらい抱き竦められる。
 一瞬、どうしようって思いが頭の隅をよぎったけど――再びベッドに倒され、身動きできないよう押さえつけられて揺さぶられ、何も考えられなくなった。

(続く)

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あきゅろす。
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