Season企画小説
失敗のフェードアウト・3 (R15)
誰かに体をまさぐられるのは、高校の時以来のことだった。
記憶にあるよりも性急な手つきで、阿部君がオレから服を剥ぎ取ってく。合間に体を撫で回され、平らな胸をぎゅっと揉まれて、「はっ」と息が漏れた。
運動部に長くいると、チームメイトの裸を見る機会も多くある。
ロッカーでの着替えは勿論、合宿に行けば大浴場に入るし、いちいち人目を気にしない。
オレだって、高1の時はみんなの視線を気にしてたけど、そのうち何とも思わなくなった。唯一例外は阿部君だけで――それは今でも変わんないみたい。
シャツの下の肌をじっと見つめられ、居たたまれなくて赤面した。
誰かにこうして、熱い視線を向けられるのも久々で、どうしていいか分かんない。
視線で穴が開いてしまいそう。そんなにじっと見ないで欲しい。
「うあ、も、もう見ない、で……っ」
身をよじって訴えると、「なんで?」って真顔で訊かれた。
「久々なんだし、じっくり見てぇのは当たり前だろ」
オレの体をまさぐる手を止め、阿部君が身を起こす。
ホッとする間もなく、ゆっくりと彼が服を脱ぎ出して、ニヤッと見下ろされて心臓が跳ねた。
阿部君の裸を見るのも、久々だった。他のチームメイトと何も変わらないと思うのに、恥ずかしくて直視できない。
相変わらず鍛え上げられた肉体は、オレよりも少し大きくてたくましい。
ぼこぼこと割れた腹筋。以前より厚くなった胸筋。肩幅も、くっきり浮き上がるノド仏も、鎖骨も、なんだか大人びて色っぽい。
けど何より色っぽいのは、肉食獣みたいにきらめくその瞳だろう。
目尻がちょっと垂れてるのに、視線がすごく鋭くて、オレをまっすぐに射竦める。
1mmも逃げることができないまま、裸の腕がまたオレに触れた。
肌と肌が触れ合って、久々の温もりを感じてビクッとする。
ベルトを外され、下半身も脱がされるのに抵抗できない。それどころか、無意識に腰を上げて協力しちゃって、ウソでも「イヤだ」とは言えなくなった。
すっかり勃ち上がった股間が、浅ましく先走りをこぼしてるのが分かる。
ふっ、と笑われて居たたまれない。
大きな温かい手に触れられて、ビクンと腰が浮き上がる。
「やっ、待っ……!」
「やじゃねーだろ」
ふふっと笑いながら、阿部君の手がオレの竿を握り込む。ひゃっ、と悲鳴を上げて腰を引いても、当然許して貰えない。
高校時代、何度もされた行為。
何度もオレに触れた手。その手はオレの弱いトコを覚えてて、的確にオレを追い詰める。
やがて阿部君も股間をくつろげ、オレを抱き起してソレに触れさせた。
「触って」
興奮を抑えた声に、ぞくっとする。
赤面しながら熱いモノを握り込むと、それは記憶通りの形をしてて、熱く固く滾ってた。
誰もいないオレの家で、明るい居間で、キスしながら触れ合ったのを思い出す。
先へ先へと進もうとする阿部君に、ついて行けなくて怖くて尻込みして……それでも「イヤだ」とは言えなかった。
あの頃みたいに触り合いながら、キスされて舌を絡める。
阿部君の吐息は甘く、熱くて、「好き」って思いがこぼれそうになった。昔も好きだったけど、今も好き。
握り込まれた陰茎をこすられ、「ふあっ」と高い声が漏れる。阿部君も同じく息を詰めてて、いつかと同じ状況にドキッとした。
視線を上げると、阿部君もオレの顔をじっと見てる。
じわっと赤面しながら目を逸らすと、顔を寄せられてちゅっと軽くキスされた。
「ずっとこうしたかった、三橋」
少し掠れた低い声で、阿部君がオレに囁く。
その間も彼の手は休むことなく、オレのを握り込み擦り上げる。
「この1年、どうしてた?」
快感と共に、与えられる質問。「ど、どうって……」と戸惑う声が上擦る。
「オレはこの1年、ずっとお前のことばっか考えてた。どうやってお前を追い詰め、手に入れようかって、そればっか考えてたよ」
ふふっと耳元で笑われ、身動きができない。
心臓がドキンと跳ねたのは、恐怖からなのか喜びからなのか、それもよく分かんない。
「どうやってお前に触れようか考えてた。このぷりんとした尻を揉み、その谷間を暴き、ひそやかな穴に入ることばっか考えてた」
そんなことを囁きながら、阿部君が手の動きを速める。今までのが遊びだったみたいに、快感の波が一気に押し寄せ、たまらず「ああっ」と射精する。
がくんと脱力しかけると、阿部君の含み笑いが聞こえた。
「お前のイキ顔、やっぱカワイーな」
たちまち赤面したオレを、どんどん阿部君が追い詰める。
「イキ声も可愛い。録音しとけばよかった」
「ろ……っ」
録音、って。ホントにはしないと思うけど、不穏な響きにゾクッとする。
けど、恐怖に震えるより先に、抱き込まれてお尻を揉まれた。さっき聞かされた通りの手順で、谷間に指を這わされて、その奥の秘所に触れられる。
穴の縁を撫でられ、「ひやっ」と腰を上げると、阿部君の腕がオレの腰に巻き付いた。
くくっと愉しそうに笑う声が、焦るオレの耳に届く。
胸はドキドキと鼓動が激しく、とても平静でいられない。
「やっ、ちょ……っ」
ちょっと待って、と言いかけた瞬間、縁を撫でてた指がつぷっと軽く挿れられる。
それは案外あっけなくて――けど、確かに異物感があって、悲鳴を上げないではいられなかった。
(続く)
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