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Season企画小説
ホワイトクリームの狂夜・前編 (大学生・同棲・2018ホワイトデー)
 ホワイトデーの夜、いつも帰ってくる時間になっても、阿部君が帰ってこなかった。
 大学はもう春休みだし、バイトも夕方までって言ってたし。そりゃ、「早く帰る」なんて約束はしてなかったけど、一緒に暮らしてるんだし、ご飯はできたら一緒に食べたい。
 どっかで寄り道してるのかな?
 同棲を始めて2年目の春。バレンタインのチョコは渡したけど、特にお返しは期待してない。だから別にいいんだけど、やっぱり連絡なく遅い日はソワソワする。
 電話したら迷惑、かな?
 じゃあ、メールしてみよう、かな?
 ケータイを握り締め、どうしようって迷ってると――玄関の呼び鈴が、ピンポーンと鳴った。
 阿部君は当然合鍵を持ってるから、呼び鈴を鳴らすハズはない。
 でも、じゃあ、誰だろう?

 首をかしげながら「はーい」とインターホンで応じると、聞き覚えのある声が「開けてくれー」って聞こえて来た。
「うお、田島、君?」
 慌てて玄関に向かうと、ドアの向こうにドスッと重い荷物を置いたような音がする。
 何だろうとドアを開けると、そこにあるのは引越し用くらいのすごくでっかいダンボール。子供なら余裕で2、3人くらい入れそうなサイズで、なんだかすごく重そう。
 TV? それとも洗濯機、かな? でもどっちも家にあるし、田島君が運んでくる意味が分かんない。
 しかも運んできたのは田島君だけじゃなかった。泉君も浜ちゃんもいる。
 3人がかりって、どんだけ重い物なんだろう?
「ど、どうした、の? これ、何?」
 戸惑いながら訊くと、「いいもの」ってニシシッと笑われた。

「とにかく運んじまおーぜ。三橋、ドア開けといて」
 テキパキとみんなに指示を出す田島君。その堂々とした態度に気おされて、「う、うん」とうなずいてドアを開ける。
「そっち持って」
「せーので行くぞ」
「せーの」
 3人で声を掛け合って、巨大なダンボールを持ち上げるみんな。段ボールの箱は幅がホントにギリギリで、入り口のとこに擦って「大丈夫か?」なんてみんなで声をかけてた。
 狭い2LDKのアパートのリビングに、やがてデーンとダンボールの箱が置かれる。
 はあーっ、と満足げに息を吐き、汗をぬぐってる3人は達成感マンタン、だ。「やれやれ」とか「重かったなぁ」とか、口々に会話を交わしてる。
「あの、これ、何?」
 キョドリながら訊くと、「ホワイトデーのプレゼント」って。

「阿部君、から?」
 ドキッとしながら訊くと、「さーな」って、またニシシと笑われた。
「開けてビックリだぜ!」
 って。思わせぶりな言い方にもドキッとする。
「ナマモノだから、早く食えよ」
 泉君がもっともらしく言うのを聞きながら、浜ちゃんがダンボールの封を開ける。
 フタを開けるだけじゃなくて、直方体の展開図みたいに縦の面も横の面も同時にパカッと開かれて――中から、半裸で縛られた阿部君が出てきてビックリした。
「ふおっ」
 ビクッと飛び跳ねると、田島君が得意げに笑みを向けてくる。
「な、開けてビックリだったろ」
 って。確かにビックリで、うまく驚きを言葉にできない。
 半裸で両手両足を縛られてるだけじゃなく、阿部君は目隠しにさるぐつわまでされてて、むーむーと文句を言いながら蠢いてる。

「な、鮮度いいだろ」
 って。泉君にニヤッと笑われて、こくこくとうなずく。
「さあ、仕上げだ〜」
 浜ちゃんがゆるく笑いながら、ホイップクリームを取り出した。
 カバンの中に入ってたのか、スーパーのレジ袋の中に入ってたのか、よく見てなかったから分かんない。家で作って来てたの、かな?
 半裸で転がされた阿部君の胸元に、シュシュシュシュシュ、とホイップクリームを塗ってく浜ちゃん。ケーキみたいに波々で、ところどころにバラができる。
 生クリームで飾りを作るのは、そういや難しいんだっけ? 
「う、上手い……」
 思わず感心すると、「だろー?」って得意げに笑われた。
 阿部君は仰向けでうごうご動いてたけど、浜ちゃんはそれに構わず生クリームを盛り付け、最後に胸にイチゴを飾った。

「すげー、エロー」
 ぎゃはは、と笑い声を上げる田島君。黙って写メを撮る泉君。
「さあ、三橋。どっからでも食えよ」
 わいわいと3人に囃され、じわーっと顔が熱くなる。阿部君も、気のせいかほんのり赤い?
「お、オレ、イチゴっ」
 きっぱりと宣言し、阿部君の胸に飾られたイチゴに顔を寄せる。生クリームごとぱくっと食べたイチゴは甘酸っぱくて、クリームは甘くて、美味しかった。
「じゃあ、オレらは帰るから。後はごゆっくり」
 あっけなく立ち上がる3人に、正直「ええっ!?」って思ったけど、もう夜だし仕方ない。
「わ、かった。あ、ありがとう!」
 お礼を言って口元をぬぐい、3人が帰るのを見送る。後に残されたのは、縛られたままの阿部君と、オレの2人だけ、で――。

「ふ、2人だけになった、ねっ」
 ふひっと笑いながら阿部君に告げると、阿部君はやっぱそれ以上身動き取れないみたい。むーむーとさるぐつわの中で唸りながら、縛られた体をうごうごと動かした。
「ほ、ほどいて欲しい?」
 こそりと訊くと、またむーむーと唸られる。
 目隠ししてるのに、睨まれてる気がするの、なんでだろう? 今ほどくと無茶苦茶怒られそうで、ちょっと怖い。
「お、大人しくしないと、ほどきません、よー」
 ぼそぼそと告げながら、阿部君の胸元に顔を寄せ、もう1個のイチゴを食べる。ついでにたっぷり盛られた生クリームをごっそり舐めると、その下から薄く色付いた乳首が見えた。

(続く)

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