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Season企画小説
しりあい恋愛・10 (事後&挿入描写あり・終)
 2回戦が終わった後、しばらくベッドでゴロゴロした。
「お尻……」
 三橋さんが拗ねたようにぼやくけど、どうやら起き上がる元気もねぇらしい。
「触れば?」
「さわれ、ない……」
 むうっと唇をとがらせる様子は、とても社会的地位のある年上の男とは思えねぇ。文句を言う声もちょっと掠れてて、しどけなく横たわる様子も、色っぽさにあふれてた。
「シャワー浴びる?」
 汗ばんだ髪を撫でながら訊くと、「まだ、ムリ」ってため息をつかれた。
「まだ、中、入ってる」
 ぼそぼそ言いながら、照れ臭そうに赤面すんのが可愛い。とうに抜いたモノが「入ってる」って、つまり余韻でもあるんだろうか?

 ふっと笑うと、「阿部君のせい、だろ」って睨まれた。
 長いまつ毛に覆われたデカい目が、潤んだままオレに向けられる。さっきまでのセックスの名残を引きずりまくりの状態じゃ、どんなに睨まれたって迫力に欠ける。
「ごめん」
 謝って、彼の頭をすくい上げるように抱き寄せる。拙い腕枕に三橋さんは応じてくれて、オレの胸元にくっついた。
 胸筋をするすると撫で回し、左胸に耳を寄せる。尻に比べると淡泊な撫で方で、何だか微笑ましい。
 柔らかな髪に胸をくすぐられ、ちょっと気持ちイイ。
 脇をくすぐられたって何ともねーけど、こんなわずかな刺激でも心地よく感じる。
「心臓、ドクドクして、る」
「そりゃ運動したし」
 ぼそぼそと他愛ないことを話しながら、セックスの余韻を静かに楽しむ。ちゅっとキスすると、三橋さんもふひっと笑って、それから億劫そうに身を起こした。

「ん……」
 微かに眉を寄せ、三橋さんが息を詰める。
 たっぷり注ぎ込んだモノが、滲むか何かしたんだろう。あんまからかって不興を買うのも怖ぇから言わねーけど、そうしてる様子も愛おしい。
「シャワー浴びる?」
 手を伸ばしながら訊くと、「んっ」って素直にうなずかれた。
 腕を掴んで引き起こし、肩を貸して、もつれ込むようにバスルームに向かう。そこはやっぱ普通の風呂よりも広くて、ほんの少し寒かった。
「ちょっと寒ぃ」
 正直に訴えながら、シャワーの雨の下、三橋さんに抱き着く。
 腕に囲って抱き締めて、オレの方を向かせて唇を奪うと、可愛く「も、う」って抗議された。

 ボディソープを互いに手のひらで泡立てて、バスタブの中で洗い合う。
 三橋さんは思った通り、オレの尻ばっか洗おうとしてきて、ちょっと笑えた。お返しにって肩や背中、脇や胸を撫で洗い、ついでのように乳輪をくすぐる。
 「やっ、もうっ」って、文句を言う三橋さんが可愛い。
「ちょっ、どこ、さわっ、ああっ」
 オレの愛撫に、ビクンと白い裸身が跳ねる。
「ちゃんと洗わねーと」
「洗って、んんっ」
 がくっとヒザから崩れそうになんのを腕に抱き、キスしながら全身を洗い流す。あまりにも可愛い痴態を見せられ、萎えてた股間に血が戻る。
「なあ、いい?」
 三橋さんの手を導いて勃起したモノに触らせると、カーッと赤面しながら「ダメ」って言われた。

「ケーキ、食べる、でしょ」
「ケーキより先に、別のモン食いてぇ」
 囁きながら、三橋さんを壁に押し付け、こっちに背中を向けさせる。
「さっ、さっき、食べた、のに」
 言い返しつつ、三橋さんの方も勃ち上がってて、興奮の色は隠せねぇ。
 尻たぶを開かせ、奥のつぼみに指先で触れると、そこはまだ濡れて緩んでて、ねっとりと指を受け入れた。
 はっと息を吐き、熱く滾る肉根を押し当てる。
 ずずっと腰を進めると、中はさっきより少しキツくて、ぎゅっとオレを締め付けた。


 シャワーの下での立ちバックは、気持ちよかったけど消耗した。
 三橋さんはもう立ってらんなくなって、ソファにぐったりもたれてる。
「ケーキ、自分で切っ、て」
 ぷうっと不満そうに命令する彼は、さすがにちょっとお怒りらしい。「ごめん」って謝りながら、言われた通りに皿を出し、冷蔵庫のケーキを箱から出した。
 オレのために用意してくれたのは、長方形のフルーツケーキ。
 イチゴやメロン、オレンジ、ぶどう、いろんなフルーツがぎっしり乗ってて、そこに埋もれるようにチョコプレートが飾られてる。
――Happy birthday たかや君――
 そんなささいな「おめでとう」が嬉しい。
 ホントにオレの誕生日、知っててくれてたんだって実感する。

「ケーキ切れたよ、三橋さん」
 きっちり半分に切り分けたケーキを、それぞれの皿に移して呼ぶと、三橋さんは気だるげにこっちを見て、来い来いとオレを手招きした。
「何?」
 素直に近寄ると、ポンポンとソファの座面を叩かれる。
「ケーキの前、に、お尻」
 って。
 感動も台無しの要求に、ふふっと笑えた。相変わらず残念で、相変わらず男尻好きだ。
 けど、こんなにぐったりにさせたのもオレだし、拒否なんてできるハズもねぇ。素直にソファに横たわり、尻をどうぞと三橋さんに差し出す。
「はあー……」
 三橋さんはソファの横にヒザを突き、うっとりとオレの尻に顔を埋めた。
 すりすりと頬ずりして撫で回し、揉み回し、尻たぶを甘噛みして、また撫でて――撫でながら、オレの手首をぎゅっと握る。

 ひょろいくせに、握力が意外と強いのも相変わらずだ。
「痛ぇよ」
 軽く文句を言うと、「黙って」って言葉と共に、冷たく重い物がずしっと手首にハメられる。ガチャッと鳴る金属音に、一瞬手錠を連想した。
「えっ、手錠!?」
 ギョッとして身を起こすと、手首には銀に光る金属の輪っか。ただ、手錠じゃなくて時計だったけど、文字盤にRから始まる5文字が見えて、鳥肌が立つ。
「手、錠じゃない、けど、似たようなモノかな」
 うひっと笑って、「お揃いだ、よー」と立ち上がる三橋さんを、呆然と見上げる。
 三橋さんの腕時計なんて、正直今まで気にしてなかった。あれもROLEXだったのか? つーか、お揃いって!?
 セレブのやる事は、ハンパなくて洒落になんねぇ。

「この先ずっと、そのお尻、予約、だから」
 何を言われたか分かんなくて「は?」と訊き返すと、こてんと首をかしげられた。
「受け取った、よね?」
 イタズラっぽく笑う様子は、可愛いけど確実にわざとだ。
 一体、何年分の予約だっつの。万札よりもタチ悪ぃ。どうせこれも、返品不可能なんだろう。
 もしかして、一生逃げらんねーのかも? そう思うとちょっと怖ぇけど、でもそんなとこも多分好きなんだから、甘んじて受け取るしかねぇ。
 まだ尻以上の価値はねぇのかも知んなかったけど、その内オレ自身のことも、認めさせてぇなと思った。

   (終)

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