Season企画小説
しりあい恋愛・2 (事後描写あり)
三橋廉って名乗った男は、何つーか、すげー尻フェチらしい。
男の尻が好きで、好きで好きで好きで好きでたまんなくて、頬ずりして堪能すんのが悦びだとか。
日頃仕事で頑張り過ぎると、ストレスでおかしくなるっつーし。三橋さんの男尻好きも、その類なんかも知んねぇ。
女装して夜の街をうろつくエリートリーマンの話とか聞いたことあるけど、そんな感じなんだろうか? けど、女装と男の尻を撫で回すのと、どっちがマシかっつーと難しい問題だ。
三橋さんの年齢は、24歳。この冬に20歳になるオレの4つ上で、恐ろしいことに、大学のOBさんでもあるらしかった。
「はあ、お尻。可愛い、お尻……っ」
うっとりと呟きながら、三橋さんは宣言通り、オレの尻を撫で回した。
ベッドにうつ伏せたオレにまたがり、尻を撫で回し、揉みまくり、顔を擦り付けてはまた撫でる。
「むは、お尻、好き……」
うっとりした声出して、オレの尻に頬ずりして……一体何が楽しいのか分かんねぇ。
ジーンズの上からさんざん尻を堪能した後は、下着姿になってと頼み。下着姿を許した後は、それも脱げって頼んできた。
「ぬ、脱がして、いい?」
って。ボクサーのゴム部分を引っ張りながら訊かれると、マジ怖ぇ。
「いい訳ねーでしょー!?」
慌ててボクサーを押さえながら言うと、「じゃ、じゃあめくる、だけ」って。
そんな風に譲歩してると見せかけて、ぐいぐい来るとこが怖ぇと思う。やっぱ声掛け慣れてるってコトなんだろうか?
「き、キミほどのお尻は、そうない、よっ」
そんなこと言ってくれるけど、ちっとも嬉しくなかった。
それよりちょっとヤベェのは、勃つ訳ねぇと思ってたモノが勃ち始めて来たことだ。
男に尻を撫で回されて、なんで勃起して来てんのか、自分でも意味がワカンネー。つーか、現実を認めたくねぇ。
「ちょ……っ」
焦りながら身じろぎをし、尻を撫でる手を拒む。
少し尻を浮かして股間を覗くと、案の定ボクサーが隆起してて、結構ヤベェ。
戸惑ってると、後ろから肩をポンと叩かれた。
「どう、したの?」
ふひっと笑いながら訊く辺り、きっと「どうした」のか分かってんだろう。じろっと睨むべく後ろを向くと、三橋さんは思った以上に間近にいて、不覚にもドキッとした。
いつの間にかYシャツ1枚になってネクタイも取り、ボタンもいくつか外してる。
くつろげた襟元から覗く、日焼けを知らねぇ白い肌。くっきり浮かび上がる鎖骨、白い首、色気のあるノド仏、熱い息。
整えてた髪を少し乱し、頬をほんのり赤く染めてる三橋さんは、信じらんねぇくらい色っぽくて――カッと頭に血が上った。
正直、最中のことは無我夢中で記憶にねぇ。
「なぁ、やらしてよ」
とか、何かそんなことを口走ったようなのは覚えてる。
上下入れ替わるように押し倒し、Yシャツを剥ぎ取り、その白い上半身を撫で回し、キスして……我に返ったのは、彼をベッドに組み敷いて、1発終わった後だった。
キレイだったベッドはぐちゃぐちゃで、しわ1つなかったシーツはどろどろ。
お尻お尻ってうるさかったヘンタイはぐったりベッドに横たわり、その尻を奥まで貫いて、さんざん腰振って中に注いだのはこのオレだ。
「あの……三橋さん……?」
声を掛けながらそっと引き抜くと、「んんっ」って色っぽいうめき声が聞こえた。
もぞっと動く裸の腕に、またドキッとする。
「大丈夫っスか?」
髪にそっと触れると、思ったより柔らかくて細い。
「ん……」って声を上げながら、けだるそうにオレを見て、三橋さんがふひっと笑った。
「平、気。でもオレ、あの、う、後ろハジメテだった、から……」
ぼそぼそと恥ずかしそうに告げてくる様子が、やけに可愛く見えんのはなんでだろう?
うっかり1発やったから?
「後ろ」初めて、って。後ろじゃねー方はどうなんだって気になったけど、なんでか訊く気にはなれなかった。
「阿部君、は?」
むくっと起き上がりながら訊かれて、なんだか直視できなくて目を逸らす。
視線を感じて落ち着かねぇ。
「オレも、男はハジメテだ」
男も何も、まるっきりハジメテだったけど、そんなホントのことは言えねぇ。
ふふっと笑ってる気配に、ドギマギする。
事後って、こんな、たまんねぇ気分になるモンなのか?
これ以上一緒にいると、また理性を飛ばしてしまいそうで怖ぇ。平常心を保てねぇ。
お尻お尻うるさかったのは相手の方なのに、なんでオレの方がこんな、やらかしちまった気分になってんだろう?
「……帰る」
キッパリ宣言してベッドから降りると、「待って」って手首を掴まれた。
その握力はやっぱ、見かけに寄らず強くて振り払えねぇ。
さっき散々突っ込んで揺さぶった、白い裸が丸見えで、じわじわ顔が熱くなる。
ヘンタイのくせに。その色っぽさ、反則だろ?
「何スか?」
短く訊くと、「また会おう?」って。にへっと笑みを向けられて、ドキッとする。
「け、ケータイ教えてくれ、る? そ、それとも、校門で待つ?」
三橋さんが大学のOBだってことは、さっき尻を撫でられながら知った事実で――。
いつの間にか抜き取られた学生証を、ぺらぺらと見せられて、逃げられそうにねぇと悟った。
(続く)
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