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Season企画小説
恋人としたい事・14 (R18) 
 最初に感じたのは、異物感だった。
 指先を挿れられた瞬間こそ、「うっ」って上ずった悲鳴が出たけど、力が抜けてるせいか痛みはなかった。
 阿部さんの広い肩にぎゅうぎゅうとしがみつき、中を探られる感触に耐える。
 汚いのに、とか、恥ずかしい、とか、そんなの感じる余裕もない。頭を空っぽにして、膝立ちの格好で阿部さんに縋る。
「痛くねぇ?」
 ぼそりと訊かれ、「ない、です」と首を振る。
 痛くはない、痛くはないけど、阿部さんの指が中にって思うと、何も考えられなかった。

「あ……っ」
 自然と漏れる声。
 なんでだろう? 口が閉じらんない。
 体内をぐりぐりと触られ、びくりと腰が跳ねる。たまんなくなって阿部さんの肩口に唇を押し当てると、ふふっと笑う気配がした。
「つけてもいーぞ、キスマーク」
 優しい声で阿部さんが囁く。
「噛み痕でもいい、つけてみろ。思いっきり噛んでいい。これからお前に、もっとヒデェことするんだから」
 言いながら、ぐりっと奥をえぐられた。
「ああっ!」
 悲鳴を上げてのけ反っても、阿部さんの指は止まらない。いつの間にか本数を増やされて、丁寧に中をたどられる。

「歯形、つけねーの?」
 耳元に囁かれ、そこに軽いキスを貰う。
 歯形って言われても、分かんない。キスマークも分かんない。何も考えらんなくて、頭がどんどん空っぽになる。差し込まれた指の動く様子しかもう、分かんない。
「わ、かん、ない……」
 ひどくうわずった声で正直に言うと、「そうか」ってふふっと笑われた。
「あ……は……」
 閉じられない口から、うめき声が漏れる。
 シャワーのお湯が熱い。抱き付いた阿部さんの体も熱い。
 中を洗われる感触に、腰が跳ねる。
 とんでもなく恥ずかしいことされてるのに、頭が麻痺して、何も考えられない。

 それがどんくらい続いただろう? やがてゆっくりと指が引き抜かれ、なだめるように背中を優しく撫でられた。
 準備を耐えたご褒美に、甘いキスを1つ貰う。
 舌を絡める元気もなくて、ぽかんと開いたままの口に、肉厚の舌が差し込まれる。
 コーヒーの匂いは、もうしなかった。
「ベッド、行くか」
 耳に心地いい低い声。
 誘われ、促されても返事なんかできなかったけど、今更「やだ」なんて言わないって、阿部さんにも分かって貰えたみたい。返事は強要されなかった。
 しがみついてた肩からやんわりと引き剥がされ、見つめ合った後に、もう1つキス。
 深くて短いキスの後、腕を掴まれて立たされた。導かれるままお風呂から出て、バスタオルで体を拭かれる。何もかもされるがままで、「自分で」とも言えない。
 阿部さんがざっと自分の体を拭いてる間も、ぼうっと待つしかできなかった。

 今まで何度も訪れた恋人の部屋。何度もここでキスされたけど、ベッドに入るのは初めてだった。
 さらさらのシーツの海に沈められ、上からのしかかられてキスされる。
 温かい手のひらで、オレの胸を押し撫でる阿部さん。
「は……あ……っ」
 女でもないのに、なんで気持ちいいんだろう? 手のひらを這わされ、舌を這わされて、気持ち良くて背中が反る。
 恥ずかしくて目が開けられない。気持ち良くて、口が閉じられない。はくはくと無意味に動かしても、何も言葉が浮かばない。
「あ……」
 唇からこぼれ出るのは、熱のこもった音の羅列。

 気持ちいい。大好き。
 阿部さん、阿部さん。
 心の中で名前を呼んで、広い背中に腕を回す。
「廉君……廉……いいな?」
 阿部さんが、少し掠れた声で訊いた。
 それは多分、最終確認。でもオレの答えなんて、とっくに決まってる。この状態で「やめようか」なんて言われたら、それこそおかしくなるだろう。
 もう返事すらまともにできなくて、「んっ」と妙な音が出た。
 お風呂で1度出したハズの股間が、期待にびんびんと熱を持つ。けど、もうそれすら恥ずかしいと思う余裕もなかった。
 欲しい。欲しい。阿部さんが欲しい。
 丁寧に洗われ、咲かされたつぼみが、空気に触れてひくりと疼く。

「いつかお前と、使えたらって思ってた」
 阿部さんがそう言って、水色の何かのボトルの封を開けた。ぴりぴりとビニールの剥がされる音の後、とろっとした液体を阿部さんが手のひらに取る。
 それをたっぷり絡めた指で、再びつぼみに触れられた。
「そ、れ……っ?」
「ラブローション。男同士でヤル時には、要るんだよ」
 そんな簡単な説明の後、拓かれて火照った穴の中に、ローションがたっぷりと注がれる。たったそんだけの刺激でも、びくびくと腰が跳ねた。
 濡らされたせいで、つぼみが疼く。
 もっと触って欲しい。もっと気持ちよくして欲しい。もっと、もっと……。口に出せない望みを抱きながら「阿部さんっ」って名前を呼ぶと、足首を強く掴まれた。
 そのまま強引に押し開かれて、ドキッと心臓が跳ねあがる。

 あられもない格好。何もかも無防備に丸出しにされて、恥ずかしいとこ全部見られてる。
「うあ……っ」
 羞恥心に喘ぐと、阿部さんがまたのしかかってきた。
 顔の両側に肘を突かれ、閉じ込められるようにキスされる。甘い吐息、甘い唾液、舌を絡められて快感にひたってると、つぼみに固くて熱いモノが触れた。
 あっ、と思うより先に、肉の杭が打ち込まれる。
 時間をかけて咲かされたそこは、さっきのローションの滑りを借りて、ずずっと阿部さんを呑み込んだ。
「ん、んんーっ、ああああっ!」
 キスがほどけて、悲鳴が出た。
 体にぽっかりと空いてたウロが、大好きな人に満たされる。阿部さんでいっぱいにされていく。

「いーぞ、力抜け」
 嬉しそうな声で、彼が言った。
 ずずっ、ずずっと肉が沈められ、中がみっしりと埋められる。
 痛くはない。痛くはないけど、やっぱ初めての行為は衝撃的で。必死に阿部さんにしがみつき、広い背中に爪を立てることしかできなかった。

(続く)

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