Season企画小説
ハプニング・カウントダウン・5 (R18)
どうして欲しいかなんて、考えるまでもなかった。
昨日だって一昨日だって、ホントはずっと欲しかった。それを言わなかったのは、阿部さんがオレの野球を大事にしてくれてるの、分かってるから、だ。
阿部さんとの約束は優先したい。明日は野球じゃないけど……。
「で、でも、ゴルフ……っ」
欲しがってんのバレバレの、上ずった声。
敏感なトコを指先でなぞられて、いやらしく腰が揺れる。
「んっ」
息を詰まらせると、楽しそうに笑われた。
「ゴルフとどっちが優先?」
って。そんなの、訊かなくても分かってる癖に。イジワル、だ。
ゴルフがしたい訳じゃない。でも、ゴルフをしたくない訳でもない。オレが欲しいのは阿部さん、だ。
「阿部さんと一緒に、いられる、方……っ」
恥ずかしいのを我慢して正直に言うと、「何だ、それ?」って、また笑われた。
互いについばむようなキス。乾いたままの阿部さんの指が、オレの穴の入り口を撫でる。
「オレのカバン開けて、要るモン持ってこい」
そんなセリフと共に床に下ろされ、オレはふらふらと彼の指示に従った。
クローゼットの横に置かれた、阿部さんの黒いエナメルバッグ。ぽうっとしながらファスナーを開けると、目的の物はすぐに見つかった。
見覚えのある、赤いローション。
いつも使う水色の、普通のじゃなくて、特殊な店で使う特殊なヤツ、だ。これを中に塗り込められると、それだけで平静じゃいられなくなる。
黙ってそれを阿部さんに渡すと、「ふーん」ってニヤッと笑われた。
見透かすように見つめられ、カーッと顔が赤くなる。
「来いよ、お望み通り塗ってやる」
自信たっぷりにベッドに誘う阿部さんは、なんでそんな格好いいんだろう。
凛々しく整った顔に笑みを浮かべて、阿部さんがオレに手を伸ばす。そっからベッドに押し倒されるまでは、あっと言う間だった。
バスローブを脱がされ、裸の肌に強引な手のひらが這わされる。
「やっぱ明日はプールにするか?」
オレの胸を押し撫でながら、阿部さんが言った。
機嫌良さそうって思う間もなく、鎖骨の上に顔を寄せられ、キスマークをつけられた。
「あっ」
声を上げると、「んー?」って訊きながら、きゅうっと右の胸をねじられる。
「あああっ」
悲鳴すら、我ながら甘えて響いた。
阿部さんに調教された体は、痛みの先にすぐ快感を拾って、羞恥心を捨てさせる。
「ホント可愛いなお前。たまんねぇ」
嬉しそうに言われると、オレも嬉しい。
緩んだ脚の内側をなぞられ、期待にはしたなく勃起する。ソコにはちっとも触れられてないのに、先走りがどんどん溢れ出る。
ぶちゅっ、と色気のない音が足元に響いた。
例のローションを出す音だと直感的に悟って、体の奥がきゅんとうずいた。
塗り込められるとじくじくして、欲しくて欲しくてたまんなくなるローション。阿部さんの固い大きなモノで、ガンガンに中をこすられないと、正気を保っていられない。
使えば使うほどやみつきになって、慣れるなんて一生無理そうだ。
そのローションをまとった指が、つぷっと1本、オレの穴に挿れられた。
「あっ」
上ずった声とともに、びくんと腰が跳ねる。
2本、3本とオレを拓く指が増えるたび、中にそれが塗り込められる。
ぐちゅぐちゅと響く濡れた音、じわっと熱くなる体腔。気まぐれのように落とされるキスにも、もう集中できない。
「うあっ、もうっ」
目を閉じても、ぶんぶんと首を振っても、高まってく欲望を散らせない。
「もう、何?」
意地悪な問いかけに、はくはくと唇から吐息が漏れた。阿部さんだけが余裕なの、ホントずるい。
「もう、挿れてくだ、さい!」
両手で顔を覆いながら懇願すると、満足そうに「いーのか?」って訊かれた。
「明日の予定、パァになんぞ?」
このタイミングでそんなこと訊くの、ホントに意地悪だと思う。
欲しくなるローションをたっぷり穴に塗り込められたら、オレがどんな風になるか分かってるくせに。
もう自身もゴムをまとって、臨戦態勢でいるくせに。
「阿部さんっ」
悲鳴混じりの声で呼ぶと、左右に脚を押し裂かれた。
固いモノが熟れた穴に押し付けられて、ソレしか考えられなくなる。
ゴルフの予定も、先輩たちの顔も、全部頭から吹き飛んで、ただ阿部さんだけを求めた。
欲しい。欲しい。阿部さんの肉を奥まで欲しい。
「ああっ、早くっ」
はしたなくねだって、首を振る。
もう、自分が何を口走ってるかも分かんない。聞こえない。
オレに分かるのは、体の奥のどうしようもない渇望と、ゆっくり覆い被さってくる阿部さん、その阿部さんの浮かべる笑みだけだ。
しんと静まった、リゾートホテルのツインルーム。
ずんずんと鳴る重低音もなく、周りで上がる嬌声もないから、オレの声は高く響いた。
限界まで焦らされた体が、大好きな人の強直に容赦なく貫かれる。
叫んだ気がするけど、自分じゃもう何も分かんなかった。
直後、強く彼に揺さぶられて、歓びと期待に全身が震えた。爪を立ててしがみつき、体をのけ反らせて叫ぶ。
頭の中も体の中も、阿部さんだけでいっぱいにされた。
「ああんっ、もっとっ」
いつもなら恥ずかしくて言えないセリフを、むせび泣きながら口にする。
あっ、あっ、と甘えた嬌声が、揺さぶられるたびオレから上がる。
夜はまだ始まったばかりで。
恋人との至福の時間も、まだまだ始まったばかりだった。
(続く)
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