Season企画小説
ハプニング・カウントダウン・4
トレーニングが終わり、ホテルに帰った後も、阿部さんは機嫌よさそうだった。
調子がいいから、かな?
それとも、ここの気候が快適だから?
オレの出来も、まあまあ及第点だったからだろうか? いい投手だってチームメイトに紹介した後で、もしオレがダメダメだったら、阿部さんだって困るよね。
「三橋には、ご褒美やらねーとな」
夕食を2人で食べてる間も、にやっと笑ってばかりだった。
ご褒美なんて、オレ、ずっと貰ってばっかなんだけど。これ以上貰い過ぎると、後のことがちょっと怖い。
「も、もう十分貰って、ます」
だって、この渡豪自体がご褒美だし。一流選手のトレーニングに参加させて貰ったのだって、スゴイ。
さらに言えば、オレを投手としても恋人としても大事にしてくれてて……これより「もっと」なんて、とても欲しいとは思えなかった。
ビーチサイドが一望できる、大きなリゾートホテルの10階が、オレ達の部屋だ。今まで見たこともないくらい、かなり広めのツインルーム。
別にスウィートって訳じゃないし、普通のツインだって阿部さんは言うけど、彼の「普通」の基準が分かんない。
ホテルの中にはプールもあるし、フィットネスルームもあるし、スパなんかもあるみたい。
フィットネスルームは割とよく使ったけど「トレーニングルーム」って感じじゃなくて、やっぱり健康増進が目的なのかなぁって感じ。
サウナにも行ってみたけど、基本的には練習場でのトレーニングがメインで、4日間たっぷり体を動かせて充実してた。
明日はホントにゴルフ、行くのかな?
気になって、ちょっとネットで調べて見ると、周辺にゴルフコースって結構いっぱいあるみたい。
料金は1人1万円もしないみたいで、学生のオレには高いなって思うけど、手の届かない値段じゃない。だったら、そう気負う必要もないのか、な?
シャワーでのんびりと1日の疲れを取った後、バスローブに着替えて部屋に戻ると、先に出てた阿部さんは、大きな窓際の椅子でお酒を飲んでた。
ブランデー? ウィスキーかな? ビールの銘柄も怪しいオレには、洋酒の区別なんてハードル高すぎて、説明されてもよく分かんない。
ただ、氷の入ったグラスで強そうな洋酒を呑む阿部さんは、ぼうっとするくらい格好良かった。
大人だなぁって思うと、ドキドキする。
おずおずと近寄ると、阿部さんがオレの方に顔を向けて、「来いよ」ってニヤッと笑った。
グラスをコトンとテーブルに置いて、そっと招きよせられ、隣に座る。
自然に重なる唇。
差し込まれた舌にふわっと洋酒の名残を感じて、じわっと体が熱くなる。
「阿部さん……」
思わず名前を呼び、ぎゅっと彼の首に縋ると、耳元でふふっと笑われた。
まだ両手で数えられるくらいしか会ってなかったオレ達にとって、今のこの状況は、初めての経験だ。
名前を呼んじゃいけない場所で会うこともあるし、そうでなくても、滅多に会えない関係だ。抱き合って名前を呼べるのが、どんなに大事で素敵なコトなのか分かってる。
「ん……ふ……っ」
重なった唇の隙間から、甘えた喘ぎ声が漏れた。
ずっとお預けを食らったままだから、欲しいって思う気持ちがどんどん大きくなってって、さすがにちょっと恥ずかしい。
舌と舌を絡めるキスは、粘膜と粘膜をすり合わせるっていう意味で、えっちに似てるとこあるんだって。
そんなことを思い出しながら、抱き合って深いキスに没頭してると、不意打ちでお尻をぎゅっと掴まれた。
「んうっ」
甘えた声と共にびくんと体を反らせると、「どうした?」って意地悪く訊かれた。返事もできずに黙ってると、掴まれてたお尻を、今度は優しく撫でられる。
昨日も一昨日も、同じようにキスして抜き合った。
阿部さんの大きな手で、オレのとまとめてしごかれた日もあったし、フェラをし合った日もあった。
昨日までと同様に、バスローブのすそが割られる。
太ももを撫でられると、オレもじっとしていられない。阿部さんのバスローブのあわせから、そっと左手を滑り込ませて、すべらかな肌を味わった。
筋肉の隆起が素晴らしい、ほれぼれするアスリートの体。
オレみたいに乳首が敏感って訳でもないみたいで、だからオレも遠慮なく触れる。
大晦日までお預けだって言うから、思いっきり油断してた。
「三橋、来い」
阿部さんに手を引かれ、ベッドサイドに連れて行かれる。
先に腰かけた阿部さんが、そのままオレの手を引いて、ヒザの上にまたがらせた。
阿部さんのヒザをまたぎ、導かれるまま首元に縋る。
顔を寄せられると、キスを拒むこともできない体勢。どちらからともなく舌を差し出し、粘膜を絡め合った。
えっちとある意味同じ行為? だからこんな、気が遠くなるくらい気持ちいいって思うんだろうか?
「ん、ふ、阿部さん……」
何度も深く深くキスを繰り返しながら、阿部さんの固い髪にそっと触れると――その直後、いたずらな指が、オレの尻の谷間をすうっと撫でた。
「ふあっ」
思わず喘いでぎゅっとしがみつくと、阿部さんは余裕の様子でふふっと笑って。
「……どうして欲しい?」
そんな意地悪な質問をした。
(続く)
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