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Season企画小説
ぬるま湯にはもう浸かれない・11
 さっさと告白すりゃよかった。いつもみてぇに堂々と、「好きだ」っつって唇も奪えばよかった。一体オレは、何を怖がってたんだろう?
 片思いだと思い込んで、ずっと諦めてた。好き過ぎて辛くて、同居すら解消しようかと思ってた。バカだ。
「三橋……!」
 名前を呼んで、抱き締める。三橋の腕が、遠慮がちに首に絡まる。
「好きだ」
 もう何度目かも忘れた告白。
「ゴメンな、さっきは電話、無視して。料理、作ってくれてあんがとな」
 頬を撫で、髪を撫でながら礼を言って、そのまま深くキスをする。
 舌を絡め、唾液を送り、甘い口の中をいつも通りむさぼると、三橋が甘い声でうめいた。

「お、オレも女の子、う、うちに入れちゃダメ、なの、忘れてて、ゴメン」
「いいって。ただのダチだろ?」
 オレの言葉に、三橋が「うん」としっかりうなずく。
 楽しそうに笑ってたの思い出すと複雑だけど、今はそれより、目の前のコイツを味わいたくて仕方ねぇ。
「三橋……欲しい」
 キスを繰り返しながら、シャツの下に手を入れると、三橋がびくんと背中を反らした。
「んっ、ほ、欲しい、って……?」
「お前」
 ささやかな問いに短く答え、すべらかな肌を撫で上げる。
 抵抗しねーのをいいことに、シャツを胸までまくり上げて唇を落とすと、「ひゃあっ」と色気のねぇ悲鳴が上がった。

 それにすら煽られんのは、酔ってるせいなんだろうか?
 抑えがききそうにねぇのは?
 ぴっちりと薄い筋肉をまとう投手の体。手のひらを這わせ、胸筋を押し撫でて、薄茶色の乳首に顔を寄せる。
 乳輪を舐め、乳首を舌で転がして、ちゅうっと吸い付き歯を立てると、三橋の悲鳴に色が混ざった。
「感じた?」
 訊きながら、もう片方の乳首も攻める。
「ま、待って、待って……」
 上ずった声で制止されたような気がしたけど、耳に入んなかった。待つのはもう、うんざりだ。

 考えてみりゃ三橋の誕生日の夜、初めてキスした時から、ずっと我慢してた。いつかこの一方通行が終わんのを、ずっと待ち望んでた。
「もう半年も待ったんだぜ」
 これ以上はムリだ。
 それに、我慢して自分の気持ち押し殺して来たからこそ、三橋を泣かせることになったんだ。待っても後悔するんだから、いっそ待たねぇ方がいい。

 唐揚げより先にお前が食いてぇ? バースデープレゼントにお前が欲しい? ケーキより三橋? 生クリームより精液? 熱に浮かされた頭ん中で、口説き文句を考える。
 そしたら、いつの間にか全部口に出して言ってたみてーだ。
「あ、べくん……」
 組み伏せたままの三橋が腕ん中で震えて、ふと見ると両手で赤い顔を覆ってた。
「よ、酔ってる、でしょ」
 指摘されても、もう自分じゃ分かんねぇ。体が熱いのも、三橋しか見えねーのも、欲望が抑えきれねーのも、全部酔いのせいなのか?
「ああ、お前に酔ってる」
 ぼそりと告げると、更に「もうっ」と怒られた。

 いくら文句言われたって可愛いだけだ。ぽかっと胸を叩かれたけど、余計に火を点けられて、呼吸がだんだん荒くなる。
 酔い癖が悪いのは三橋だろう。いきなり抱き付いて甘えて、キスまでしてきたくせに。そのくせ「好き」の一言も言ってくんなかったくせに。
「お前が誘ったんだろ」
 言いながら身を起こし、バッとシャツを脱ぎ捨てる。
 三橋のシャツも脱がせ、ついでに下の服も下着ごと引き脱がすと、三橋が悲鳴を上げて顔をぼんっと赤らめた。
「ひあっ、ま、待って……」
 って。そのセリフは多分さっきも聞いた。
「だから、もう待たねぇって」
「目が、座ってる」
 おののくように呟かれ、顔が緩むのが抑えらんねぇ。ニヤッと笑いながら腰を捕らえ、そこにちゅうちょなく顔を落とす。
 キレイな色のまま剥けた陰茎は、ほんのりピンクで勃ち上がってて、期待してんのがよく分かった。

 なあ、もう、遠慮しなくていいんだろ?
 酔ってるって言われたら、酔ってんだろう。同じ男の性器を口いっぱいに頬張って、何の抵抗感もねぇ。ぼうっと頭ん中が白くかすむ。
 オレが頭を上下するたび、口ん中に少しずつ滲む塩味。
「ああっ、ひっ、やあ……っ」
 切羽詰まったような甘い喘ぎを、霧の向こうに遠く聞く。髪を掻き回され、縋るように引っ張られる。
 かすかな痛みが、夢じゃねぇ証拠だ。
「阿部君っ、阿部君っ! いやっ、あああっ!」
 ひと際高い声と共に、口ん中に白濁が散る。
 それは、ほんのりしょっぱいけどスゲー甘露で、飲み下すのにためらいはなかった。
 飲んでから、そういや潤滑液代わりにすりゃよかった……と思ったけど、飲んだモノは仕方ねぇ。

 こういうとこが酔ってる証拠か?
 体中が熱い。
 全部出してぇ。
 三橋の痴態をもっと見てぇ。
 息を弾ませながら横たわる三橋に、再び覆い被さって頬を撫でる。
「イヤか?」
 そっと訊くと、三橋は一瞬ちゅうちょした後、赤い顔で首を振った。
 夢じゃねぇことを祈るしかなかった。

(続く)

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