Season企画小説
白靴恋・8 (R15)
パーティが終わった後も、なかなか落ち着いた気分にはなれなかった。
それは私だけではないようで、解散の後、上のフロアのバーに行かれたり、デッキに出て夜風に当たったりと、パーティの余韻を楽しまれる方も多そうだ。
7階のラウンジには、ダンスホールもオープンするらしい。12階にはカジノ気分の味わえる、ゲームコーナーもあるのだとか。
隆也さんのお友達も、「飲みに行くか」と話されていた。
船上の夜はざわめいていて、確かに私も、このまま船室にこもってしまうのが惜しい。けれど足がもう限界で、これ以上は歩き回れそうになかった。
隆也さんにもそれはお見通しだったようで、2人で乗ったエレベーターの中で、ひょいと横抱きにされてしまった。
「ひ、ひとりで歩け、ます」
タキシードの肩に縋りながら文句を言うと、「そうですか?」ってふふっと笑われた。
上から顔を覗き込まれて、恥ずかしくて目を背ける。1月のホテルでのことを思い出して、顔を覆いたくなった。
あの時は、お部屋からフロントまでだったけれど、今日は逆に部屋の奥まで、横抱きにされたまま連れ込まれる。
ベッドに投げ落とされ、悲鳴を上げる間もなく、覆いかぶさられてキスされる。
「ようやく2人きりだ」
ぼそりと呟いて、バッと身を起こす隆也さん。
上着を脱ぎ捨て、蝶ネクタイやカマーバンドを放り、手早く外したカフスボタンを、サイドテーブルにじゃらっと置く。
これから何をするのか、勿論分からない訳じゃない。
私も自分でドレスを脱ぐべきなんだろうか? そう思いつつ、何だか言われる前に脱ぐのははしたない気がして、手が動かない。
でも、彼が服を脱いでる間の沈黙が少し気まずくて、手袋だけを脱ぐことにした。
肘までの白いレースの手袋を脱ぎながら、どうしても目に入るのは、オレンジダイヤの婚約指輪だ。
同時に、篠岡さんの指にあった透明ダイヤの指輪のことが、ふと頭をよぎった。
「し……篠岡さん、ご婚約されたんです、ね。ご存知でし、た?」
隆也さんから贈られた指輪を抜き、手袋を脱ぐ。
かつてお付き合いされていたという女性の婚約を、彼はどう思うのだろう?
ふと明かりが陰って、目を上げると側に隆也さんがいた。
「知ってますよ。相手の男も、今日来てましたけど。名前、訊かなかったんですか?」
「そう、なんです、か?」
お相手のお名前は確かにうかがったけれど、知り合いとは思わず、聞き流してしまった。今日いらしたのなら、篠岡さんと同じく、高校時代のお仲間だったのだろうか?
どの方だろう?
ぼんやりと考えていると、持っていた指輪を奪われた。左手を掴まれ、薬指に再び指輪をはめられる。
上半身裸でスラックスだけになった隆也さんが、私の左手にキスを落とした。
「他の男の話を、ベッドでするものじゃありませんよ」
「ベッ……」
ド、と呟くより早く、今度は足を乱暴に取られた。小さく悲鳴を上げて、ベッドに手を突く私をよそに、強引にパンプスが脱がされる。
かかとが10cm高いハイヒール。それを脱造作に床に放り投げて、隆也さんが言った。
「背伸びなんてしなくていい。オレは、そのままのあなたが好きなんですから」
見透かしたようなセリフに、じわっと頬が熱くなる。
8歳の年の差は、どう頑張っても埋められない。篠岡さんと自分を比べても仕方ない。分かっていたハズのことを敢えて言われて、「はい」とうなずくしかなかった。
ぎゅっと裸の胸に抱かれ、ドレスの背中が静かに開けられる音を聞く。
大きな彼の手で服をはぎ取られ、裸にされるこの行程は、何度経験しても恥じらわずにはいられない。
肩から腕を抜かれ、ドレスを引き脱がされると、後に残るのは紐なしのビスチェと、ストッキングに覆われたショーツだ。
そのショーツに手を伸ばされて、思わず「待って」と身をよじった。
けれどそれで本当に待って貰えたことは、1度もない。
ストッキング越しに敏感な場所を撫でられ、びくんと体が跳ねてしまう。イタズラな指が肉芽をかすり、たまらず「ふっ」と息を詰めた。
「ま、待って。まだ……」
まだネックレスもイヤリングも外してない。
なのに、ストッキング越しの愛撫をやめて貰えない。無意識に彼の腕にしがみつくと、上を脱ぐように言われた。
「じゃ、じゃあ、手を止めてくだ、さい」
言われるまま背中に腕を回し、たくさんのホックを1つ1つ外す。お願いしたのに隆也さんの手は止まってくれなくて、でも両手が忙しくて抵抗もできなくて、困った。
「はっ、やぁっ」
自分の声に甘さが混じる。
反射的にヒザを閉じると、それで彼の腕を挟み込んでしまって、ますます恥ずかしい思いをした。
「本当にイヤなんですか?」
なんて。訊かなくても分かってるくせに、意地悪だ。
「知りま、せん」
ようやく外せたビスチェをぐいっと押し付け、胸を隠しながら言うと、くすくす笑われた。
「廉……」
名前を呼ばれ、アゴを取られ、上を向かされてキスされる。
いつの間にか普通になってしまった大人のキス。ぎこちないなりに彼に応え、そっと舌を這わせることを覚えた。
「胸の奥がずっと、ざわざわして落ち着かない」
キスの合間にそう言って、彼が私をベッドに倒す。
落ち着かないのは私も同じで、一緒だなぁと思った。
「わ、たし、も……」
うわずった声で告げる。パーティはとうに終わったのに、まだ耳の奥にざわめきが残ってる感じ。
豪華なパーティ。豪華な装い。きらびやかな吹き抜けのホール。貸し切りの客船。たくさんの人に会って、たくさんお祝いを言われて。きっと気持ちが昂ぶっているのだろう。興奮が鎮まらない。
胸を隠す腕を剥がされ、そこに口を寄せられる。温かく湿った彼の唇が、舌が、胸の先端に吸い付いて、甘い痺れを誘った。
「ふあ……っ」
小さく喘いで、目を閉じる。
大きな手のひらがもう片方の乳房を掴んで、ぐいっと強く揉んだ。
もう痛いばかりではなくて、体の奥がじゅんと潤む。その潤んだ箇所を、別の手が撫で上げる。
ストッキング越しにしばらく愛撫を繰り返し、その手がやがて、上から中に差し入れられた。
「ぬ、脱ぎ、ます」
カッと顔を熱くしながら申し出ると、「ああ」と言って隆也さんがどいた。
彼の視線を感じながら、ストッキングごとショーツを脱ぐのは、何だかとても恥ずかしかった。
彼もまた、私を見つめながらスラックスを脱ぎ落した。
雄々しく昂ぶり、天を突くモノを寄せられ、ハッと恥じらって目を逸らす。
「見慣れたでしょう?」
なんて、訊かないで欲しい。
「み、な……っ」
言い返そうとして、でもできなくて、ますます頬に熱が溜まる。
少し乱れた髪を撫でながら、隆也さんが上ずった声でねだった。
「舐めて貰えますか?」
初めての要求にドキリとしたけれど、イヤだとは思えなかった。赤い顔のままこくりとうなずき、目をそらして顔を寄せる。
そっと唇を当てると、固くて太いそれがビクリと揺れた。
どこをどうすればいいかも分からず、促されるまま舌を這わせると、少ししょっぱい。男らしくて、なんだかドキドキするようなニオイがして、やはりイヤではなかった。
「口の中に入れて」
掠れた声での指示に従い、そっと先端を口に含んだ。
目を閉じたまま舌を這わせる間、隆也さんは熱い息を吐きながら、私の結い上げた髪を解いてる。
石の付いたピンが放られ、はらりと髪が落ちてから、隆也さんの声が聞こえた。
「悪いけど今日は、泣かせてしまうかも知れません」
そんなの、いつもじゃないですか。そう思ったけれど、言えなかった。口の中に含んでいたものを引き抜かれ、肩を押されて、ベッドに再び倒される。
脚を大きく押し開かれ、濡れた場所をあらわにされて、長い指を沈められる。
「あ……っ」
快感にのけ反る暇もない。
さっき舐めた巨きなもので、貫かれたのはすぐだった。
(続く)
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