Season企画小説
ラブサンプル・後編 (R18)
最初に阿部君がやったのは、あの保湿ローションをオレの中に塗り込めることだった。
とろっとした透明な液を絡めた指が、洗ったばかりの穴を探る。
ベッドで仰向けに寝かされ、脚を押し開かれて。恥ずかしい格好でされるがままに、準備されるのを受け入れる。
「あっ……う」
浅いところをこすられると、我慢できなくて声が漏れた。複数の指が、ローションのぬめりを借りて、ゆっくりと穴を拓いてく。
ぐちぐちといやらしい水音がして、生々しくて恥ずかしい。阿部君の息も、オレの息もスゴく荒い。
奥をぐいっと押された時は、びくんと体が跳ねた。
「んんっ!」
悲鳴を上げたオレに、阿部君が満足そうに笑う。その笑い方もすごく色っぽくて、なんか全身がびりびりした。興奮と期待に胸が詰まる。
「阿部君、もう……!」
たまんなくなって、縋ってねだると、「おー」って上ずった声が聞こえた。
「オレももう、我慢できねぇ」
ちゅっと軽いキスの後、阿部君が身を起こしてアルミパックを取り上げる。手早く自分に着けた後、「いっぱいあるもんな」って、オレにも着けてくれた。
着け方なんてオレ、知らなかったのに。阿部君は知ってたみたい。やっぱり色んなこと知っててスゴイ。
ゴムの日のことは知らなかったみたいだけど、オレだってそれは知らなかったんだし、おあいこだ。
脚を押し開かれて、腰が浮く。
拓かれ、濡らされた場所に固いモノが押し当てられる。
「あっ……」
期待に声を上げると、直後、ソレがゆっくりと入って来た。
「力抜いてろよ」
上ずった声で言われたけど、呼吸をするだけで精一杯で、他は何も考えられなかった。
ゆっくりゆっくり、阿部君の肉に穿たれる。
「入ってんの、分かるか?」
熱を帯びた恋人の声。
オレが誘って、お願いして、始めて貰ったえっちだけど、同じく興奮してくれてるの嬉しい。
「んっ……!」
こくこくうなずくと、手を掴まれてお尻の方に導かれ、触らされる。
「ほら、繋がってんぞ」
って。
ゴムをまとった阿部くんの陰茎が、根本までオレに入ってる。指の感覚でそれを悟って、繋がってるんだって実感が増した。
「ああっ、オレっ……」
言葉が出てこない。
貫かれてる。大好きな阿部君が、中にいる。
「好きだ、三橋」
愛を告げる声に、高まった気持ちが煽られた。
ぎゅーっと抱き締められ、嬉しくて気持ちよくてたまんない。
目をぎゅっと閉じると、ゆっくりと杭が抜かれた。ずずっと中をこすられて息が詰まる。
浅いとこ、深いとこ、確かめるように阿部君が動く。ゆっくりとした攻めに、体も気持ちも揺さぶられる。
肌と肌の触れ合い。彼の動きに合わせて、「んっ、んっ」と声が出る。
繋がってるの実感できて気持ちイイ。
「ああ、好き……!」
背中にしがみつくと、「ああ」って言われてキスされた。
結合がぐっと深くなり、舌をむさぼられたまま「んんっ」と喘ぐ。濃い唾液を送り合い、縋るように舌を吸う。
阿部君の動きが速く強くなったのは、キスがほどけた直後だった。
「ふあっ、あああっ、んあああ、あああっ」
大声で叫び、身をよじる。
気持ちイイより、激しい。でもそんな激しさが、身悶えするくらい嬉しい。
「ワリー、手加減、できねぇ」
息を弾ませながら言われて、ぶんぶんと首を振る。手加減なんかしなくていい。望むところだ。
だってオレ、ずっとこうなりたかった。体の奥まで繋がって、もっと深く愛されたい。
「もっ、と!」
目をギュッと閉じて叫ぶと、腰をガッと掴まれた。奥の奥まで貫かれ、さらに強く突き上げられる。
「あっ、あああっ!」
甘い悲鳴。
「もっと? こうかっ?」
阿部君の声も上擦って甘い。
ずんずんと中を突かれて、「んああーっ」と嬌声が漏れた。
「いい声」
そう言う阿部君の声の方が、いい声だ。耳から入って全身に回り、快感を倍にする。
激しい揺さぶり。ベッドがキシキシ鳴って、喘ぎ声が止まらない。
「ふあっ!」
前を触ってもないのに射精して、きゅうっと中が締まるのが分かった。体内で暴れる阿部君の肉を、無意識に体腔が締め付ける。
「う……」
肉の感触に小さく喘ぐと、一瞬唇が奪われた。
「出すぞ」
切羽詰まった声での、短い宣言。くっ、と彼が息を詰め、体内の肉根がびくんと跳ねる。
あ、今、阿部君が……。そう思うと、繋がったとこから甘い電流が走って、脳みそまで痺れた。
一気に肉杭を引き抜かれ、衝撃に「あっ」と声が出る。
阿部君がいなくなってもまだ余韻が残ってて、じんじんして熱を帯びてて、落ち着かない。
終わ、り?
はあはあと荒い呼吸を繰り返しながら、目まいに耐えて目を開ける。そしたら、裸の胸の上に、何か生温いモノがぺたんと放られた。
何? と思って見たら、口を縛ったゴムだ。中には出したばかりの白濁が入ってて、カーッと顔が熱くなる。
「これ……!」
阿部君を見上げると、「何?」ってふふっと笑われた。新しいアルミパックを破るのを見て、期待にドキンと心臓が跳ねる。
「体、平気?」
熱を帯びたような目で、じっと見つめられて1つうなずく。
「痛くねぇ?」
そう訊かれて、「痛い」なんて答える訳ない。
保湿ローションをとろりと手のひらに落とし、それをゴム越しの性器にまとわせる阿部君。
彼のソレは、出したばかりなのに萎えてなくて、誇らしげに上を向いてて――すごく男らしかった。
どうしよう、欲しい。
オレ、彼が恋人で良かった。
ヒジを突いて起き上がり、彼に抱き付いてキスを奪うと、肩をぐいっと押されてベッドの上に沈められた。
「三橋……」
色っぽく掠れた声で、オレの名前を呼ぶ阿部君。
目尻の垂れた二重の目が、熱を帯びてオレを見下ろす。
「ヤベェな、連休中にゴム、全部なくなっちまうかも」
そんな軽口を言いながら、覆いかぶさって来る。荒い息を吐いても、汗をかいてても、阿部君は余裕だ。
オレは、再びの挿入に甘く息を詰めながら、彼の背中に腕を回した。
「望むところ、だよ」
だって、まだまだゴールデンウィークだし。
オレ、ずっと阿部君とこうなりたいって思ってたし。体の奥深くまで、彼を感じたい。もっともっと、感じて欲しい。
そう言うと、阿部君は「ははっ」っと声を上げて笑って――。
「後悔すんなよ?」
いきなりガクンと、オレを強く揺さぶった。
(終)
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