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Season企画小説
ラブサンプル・中編 (R15) 
「……女モノの保湿材、ねぇ。何に使うんだよ、こんなモン?」
 阿部君が厳しい声で訊いた。
 まさか、えっちに使うんだよとは言えなくて、返答に困る。
「ゴムは? 買ったのか? 誰とヤルために?」
「ち、ち、違うよっ、買ったんじゃない、貰った、んだ」
 誤解をとこうと首を振ると、「誰から!?」って余計に怒られた。
「さっ、やっ……」
 サンプル、薬局で、って言いかけて口ごもる。こんな風に追い詰められると、言葉がすらすら浮かばない。
 どう説明すればいいんだろう? いっそ、チラシ見せればいいのかな?

 ハッと思い付いてスポーツバッグを探ったけど、みんなチラシを外してくれたから見当たらない。
 オレが最初に受け取った分は、チラシ付きだったハズだけど……あれ、どこに入れたっけ?
 でも、それを思い出すより先に、阿部君にバッグを引ったくられた。
「こんないっぱい……」
 呆れたように絶句されて、カーッと顔が熱くなる。
 恥ずかしいし言い訳したいけど、頭にも顔にも血が上って、何をどう言えばいいのか分かんない。
 ただ、チラシで見た言葉が頭に浮かんで――思わずそれを、口走った。
「きょ、今日、ゴムの日だって!」

 一瞬ぽかんとした阿部君に、「……はあ?」って訊き返されて、ますます顔が熱くなった。
「それで、や、薬局の前で、配って、て!」
 ほとんど叫ぶように言い訳するオレに対し、阿部君の方は冷静だ。
「こんなにいっぱいか?」
 って。眉を寄せて、すっごく疑わしい目で見られて、どうしていいか分かんない。オレ、ウソ言ってない、し。
「だ、から、野球部の仲間から貰ったん、だ。『頑張れ』って。オレ……」
 言葉が出て来ない。
 顔が熱い。
 もう恥ずかしくてたまんなくて、けど何か、ここまで来たらもう言っちゃえとも思えて来て、ぎゅっと目を閉じる。
 阿部君、オレたち、付き合ってる、よね?

「オレ、えっちしたいんだ!」

 阿部君からの返事はない。きっとまた、ぽかんとした顔してるんだろうって、見なくても分かる。恥ずかしい。
「も、もうハタチ、だし。オレ……」
 言葉に詰まった時に、「何言って……」って阿部君がぼそっと言うのが聞こえた。
 ズキッと胸が痛んだけど、でも、素直に引き下がろうって気にはならなかった。『お前次第だぞ』って誰かからも言われた、し。
「オレだって、す、好きな人と繋がりたい、よ、阿部君っ!」
 大声で叫んで、ガッと目を開ける。
 胸を張って顔を上げ、目の前の恋人に視線を戻して――。そしたら、阿部君が赤い顔でそっぽ向いてるのが見えた。

「くそっ、お前……っ」
 歯噛みするように言われたけど、真っ赤になってるせいか、あんま怖いとは思えない。
「阿部君、は? したくない、の?」
 唇をぐっと引き結び、阿部君の横顔を見据える。
 そしたら阿部君は、「ばっ……」って言葉を詰まらせて、持ってたオレのスポーツバッグを投げ捨てた。
 あっ、と思った次の瞬間、抱き締められてビクッとする。
「してーに決まってんだろ!」
 怒ったような声。
「まだ早いかと思って、待っててやってたっつーのに、おめーはっ!」
 そんなセリフの後、はーっ、と耳元でため息をつかれる。
 呆れられかなってドキッとしたけど、そんなことより「したい」って阿部君に言って貰えたのが、オレにとっては重要だった。

「阿部君……」
 ねだるように顔を上げると、何も言わなくてもキスしてくれた。
 抱き合ったまま唇を重ね、何度も舌を絡め合う。舌を強く吸われて「んっ」と喘ぐと、髪の毛をわしゃっと掴まれた。
「いーの? オレ、手加減できそうにねーけど」
 耳元で言われて、こくこくとうなずく。
「そ、んなの、望むところ、だっ」
 キッパリと言い返すと、阿部君はぷはっと吹き出して、またオレを抱き締めた。

 お風呂には一緒に入った。
 狭い洗い場で体と頭を洗い合い、それからオレの……体の中も洗った。
「足、もっと広げて」
 壁に縋ったオレのお尻に、阿部君がシャワーヘッドを近付ける。ボディソープをまとった指に、敏感な場所を撫でられる。
 恥ずかしいとこ全部丸見えにされて、触られて、とんでもなく抵抗あったけど、「自分がする」って言ってもダメだった。
「こういう準備が、大事なんだよ」
 って。真面目な顔で言われると、イヤだとも言えない。肛門の周りを撫でた指が、ゆっくりと中に入って来る。

「あっ……やあ……っ」
 振り向いて、阿部君の肩に縋りながら声を上げると、「やめるか?」って静かに訊かれた。
 ここまで来てやめるなんて、冗談じゃない。
「やめるの、やだ」
 上ずった声で答えると、眉間に優しくキスされる。
「三橋……」
 押し殺した低い声。
 阿部君だって興奮してるのは、明らかに分かった。隆々と勃起したモノを見せられて、オレの体温がじわっと上がる。
「あ……」
 淡く喘ぐと、キスされた。
 入り口をなぞってた指が深く差し込まれ、ぐるんと回されて、塞がれた口から声が漏れる。

「三橋……」
 阿部君が、キスをほどいてオレを呼んだ。
「出る前に舐めて」
 掠れた声でお願いされて、ちゅうちょなく阿部君の股間に顔を伏せる。
 口の中深くに誘い込み、唇と舌とで締めながら頭を上下すると、あっという間に阿部君がはじけた。塩みの濃い粘液を飲み下し、促されるまま顔を上げる。
「フェラ、上手くなったな」
 くくっと笑いながら、洗い髪を撫でられる。
「え、えっちも上手く、なる?」
 思わず訊くと、耳元で「ばーか」って言われた。そんなたった一言で、背筋にびびびっと電流が走る。

 キュッと止められるシャワー。
 もつれ合うように風呂場から出て、体を拭くのももどかしく、オレの部屋に戻る。
「ホントにいーんだな? もうやめてやれねーぞ?」
 オレをベッドに押し倒し、阿部君が言った。
 
「やめ、ないで」
 まっすぐに顔を見つめてそう言うと――ゆっくりと上にのしかかられた。

(続く)

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