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Season企画小説
行き止まり (2015エイプリルフール・卒業後・ヤンデレ注意・R18) 
 いつ終わるかも分かんない陵辱、だった。
 手首に手錠をかけられ、鎖でつながれて――昼も夜も犯された。
 ベッドの上だっただけ、マシなのかも知れない。
 海辺にある、リゾートホテル。カーテンを開け放した大きな窓からは、春の海岸が覗いてる。
「今日もいい天気だぜ」
 機嫌よく笑いながらオレに覆い被さってくる阿部君は、何を考えてるんだろう?

「も……やめ、て」
 首を振っても、懇願しても、泣いても、肌を這う手は止まらない。
 さんざんいじられ、敏感に変えられてしまった乳首が、あっと言う間に固く尖る。
 舐められ、甘噛みされると、歯を食いしばっても声が漏れる。
「声出した方が楽だぜ。お前ももう、分かってんだろ?」
 阿部君が囁きながら、オレの唇をぴちゃりと舐めた。
 イヤがって顔を背けても無駄で、強引に唇が奪われる。

 オレとキスして、何が楽しいんだろう?
 柔らかくもない平らな胸をぐいぐいと押し撫でられて、「はっ」と喘いだ。
 男の胸を触って、何が嬉しいの?
 腰を撫でられ、太股を撫でられ、そのまますくうように脚を開かされて、恐怖にヒィッと息を呑む。

「も、イヤ……」
 力なく拒絶しても、そんなことで阿部君はやめてくれない。拒絶も抵抗もムダだって、もう思い知らされた。
 大きく割り裂かれた脚の間に、阿部君の体が入り込む。
 ヒザを撫でられ、太ももの内側に舌を這わされ、脚の付け根をくすぐられる。
 一連の愛撫も恐怖でしかなくて、イヤで、やめて欲しくてたまらない。なのに――。
「勃ってんじゃん」
 からかうように言われて股間を撫でられ、「イヤッ」と叫ぶしかなかった。

 無意識に下腹に力が入り、あらぬところからグチュッとはしたない音が響く。
 羞恥にカーッと赤面し、いたたまれなくて目を閉じる。
 顔を両手で覆いたい。でも、手錠で繋がれたオレには、そんな自由すらなかった。
 不本意に濡らされた穴の縁に、太くて長い指が触れる。
 ぶしゅっと無粋な音を立て、ボトルから継ぎ足されるローション。
 穴を拓くために突き入れられた指が、浅いところ深いところをからかうように撫でていく。
「んんっ、いやあっ!」
 お腹側の一ヶ所、ひどく感じる部分をくうっと押されて、オレは思わず悲鳴を上げた。

 そこが前立腺なんだとか、知りたくもなかった。
 男同士でえっちできるとか、その方法とか、そんなのも知りたくなかった。なんでこんなことになったんだろう?
 穴の入り口に固く熱いモノを押し当てられ、息を詰めて目を閉じる。
 抵抗はできない。
 暴れれば暴れる程ヒドくされるだけだって、とうに体に覚え込まされて――。
 体を貫かれる感覚に、悲鳴を上げて身をよじった。


『海に行かねぇ?』
 阿部君から電話で誘われたのは、3月の終わりのことだった。
『リゾートホテルのタダ券貰ったんだよ。素泊まりだけど、メシなんか適当でいーじゃん。プライベートビーチあるらしーぜ』
 春にプライベートビーチって、とは思ったけど、夏みたいに混んでなさそうだし、いいと思った。
 何より、阿部君に誘って貰えたのが嬉しくて、オレは喜んで「うん!」と答えた。
 つい先日、高校を卒業したオレたちは、4月から別々の大学に通う。
 阿部君だけじゃなくて、他のみんなともお別れだから、仕方ないとは思ってたけど……やっぱり、3年間バッテリーを組んだ阿部君は、オレにとって特別だった。
 もう一緒に野球できないんだなぁって思ってたとこだったから、その誘いはホントに嬉しかったんだ。

 そうして出向いた、3月30日。
 平日だからかな? タダ券を貰ったというだけあって、リゾートホテルはガランとしてた。
 外壁とか扉とかちょっと塗装が剥げてたし、もしかしたら、あまりはやってはないの、かも。
 でも、部屋は広くて豪華だった。
 ベッドが1つしかなくて、あれっと一瞬思ったけど、「見ろよ!」って阿部君に弾んだ声で指を差されて、窓に駆け寄ってて忘れちゃった。
 大きな窓からは海が見えて、バルコニーから直接海岸に出られるようになってるみたい。
 砂浜を裸足で歩きたいな、とか、夏なら泳ぎに行けるのかな、とか、色々考えてテンションが上がった。
 近くのファミレスで定食を食べた後、「内緒な」って言って、小さなスーパーでチューハイを買った。
 それをホテルに持ち込んで、交代でお風呂に入った後、乾杯して――覚えてるのは、そこまでだ。
 気が付くとオレは全裸で、両手に手錠をかけられ、大きなベッドに繋がれてた。

「よお、起きたか」
 オレを組み伏せ、嬉しそうに顔を覗き込んで来た時の、阿部君の笑顔が忘れられない。
 何が起きたのか分からなかった。
 唇を奪われ、肌に手や舌を這わされて、体の奥まで暴かれても。さんざん犯され、泣かされた今でも。やっぱりまだ、分かんないままだ。
 阿部君はなんで、オレにこんなことしたんだろう?
 なんでオレに手錠をはめたの?
 なんで……セックス、を?
「なん、で?」
 尋ねた言葉に、答えはなかった。
 ウソでも「好きだ」とか言ってくれれば、まだ納得できたかも知れないのに。くくっと笑われるだけで蹂躙されて――これじゃ、恨むことしかできそうになかった。


 それから何度貫かれただろう? もう回数なんて覚えてない。
 今が朝なのか夕方なのかも分かんない。
 体の奥深くまで串刺しにされ、ガクガクと揺さぶられ、泣きながら悲鳴を上げる。
「あっ、あああっ!」
 いやいやと首を振っても、攻める腰は緩まない。
 遠い潮騒。
 はあはあと荒い息遣いを間近に聞き、繋がったところがぐちゅぐちゅと鳴る。
 軋むベッド。痛む心。
 力の入らない手足が、彼のリズムでバラバラと跳ねる。
 辛いだけじゃない感覚が、心も体も支配する。

「4月の朝だ、ぞっ」
 オレを突き上げながら、阿部君が言った。
 じゃあ今は朝なのかな? と、思ったのはそれくらいで――そのまま揺さぶられ、喘がされ続け、じきに何も分かんなくなった。
 熱くなった体腔に、阿部君が精を放つ。
 それを呆然と受け止めた直後、肉根が引き抜かれて、衝撃にうめく。
 終わった、と、ホッとすることも、もう忘れた。凌辱は朝も昼も夜も、断続的に行われてて、いつ終わるかなんて区切りがない。
 荒い呼吸に嗚咽が混じっても、誰も慰めてくれない。オレは諦めに目を閉じて……。

 と、その時だった。手首がふいに軽くなったのは。
 小さな金属音と共に手錠が外され、ようやく拘束が解かれて、ホッとするより呆然とした。

「解放してやるよ、三橋」

 そんなセリフと共に、大きな窓が開け放された。
 朝の冷たい空気と共に、潮のニオイと波の音が、一気に部屋の中を満たす。
 逃げろ、とばかりに促され、オレはのろのろとベッドから降りた。
 途端にガクンと足から崩れ、床を這うことになったけど、バルコニーの手すりに縋れば、何とか立ち上がることができた。
 裸のままで、砂浜に1歩降り立つ。
 服がどうとか、お金がどうとか、そんなことは頭になかった。ただ、逃げたかった。逃げていいって言われて、ふらふらと逃げた。

「なーんて、な。好きだぜ」
 くくっと笑う声は、耳に届かない。
 残酷なウソに騙されて、オレは行き止まりの海で振り向いた。

   (終)

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