Season企画小説
鬼の嫁取り・4 (R18)
一度オレの中に射精すると、少し余裕が出たみたいだ。
彼は自分の帯を解いて襦袢を脱ぎ捨て、繋がったまま、オレをヒザに抱き上げた。
「あ……っ」
固さを保つ肉杭に下から深く貫かれ、うめく。
口を開けてのけ反ると、髪を掴んで口接けられた。遠慮なく差し込まれた舌が、オレの舌を誘うように舐める。
腕ごとぎゅっと抱き締められて、身動きもとれない。力の入らない体は、彼の動くまま、思うままになってしまう。
何もかも隆也君の思い通りだ。
向かい合い、ヒザの上で抱き締められた格好で、上下に強く揺らされる。
「んんんっ、あああああっ」
突かれるままに喘ぐと、ふふっと笑われた。
だらしなく開けっ放しの口の中を舐められ、頬を舐められ、アゴの下、首筋を舐められる。
貫かれたトコからの、溶けそうな快感。肌を這う舌の動き。どっちにも集中できなくなって、おかしくなってしまう。
「ふあっ、ああっ」
喘ぎながら首を振ると、耳たぶを噛まれた。
大きな手のひらで背中や腰を撫で回され、再び布団に落とされる。
体勢が変わる度、中に埋められた肉の位置も変わって、悲鳴が漏れる。
痩せた胸板を押し撫でられて、女でもないのに気持ちイイ。
「胸っ、ああっ」
夢中でうわずった声を上げると、「なに?」って訊かれた。きゅうっと両乳首を指先で捻られ、たまらずに背中を反らす。
「やあああっ」
力の無い足で布団を蹴っても、無意味で。
「暴れんなって」
隆也君が楽しそうに、耳元で言うのが聞こえた。
「廉」
名前を呼ばれて、嬉しくて背筋がびりびり震えた。繋がった場所からあふれるように、快感が込み上げる。
「好きっ」
思わず口走ると、「はっ」と笑われた。
再び激しくなった揺さぶりに、視界も頭ん中もがくがく揺れる。
固く太いもので体の中をこすられて、支配されて、熱くて気持ちよくてたまらない。
「あっ、ああっ、気持ちいいっ」
目をぎゅっと閉じて叫ぶと、「薬のせいだろ」って言われた。
両ヒザの裏に手をかけられ、ぐっと真ん中から折り畳むようにされて、上からガツガツと穿たれる。
もう、どうされても気持ちイイ。甘い声しか上げられない。
やっぱり体の自由は利かないけど、彼をぎゅっと抱きしめたかった。
泣きそう。
好きだ。
「隆也君、たかやくんっ」
夢中で彼の名を呼び、目を合わせる。視界はやっぱりぼんやりとぶれてて、格好イイ顔がよく見えない。
「あっ、あああーっ」
高く啼いて射精すると、体内で暴れてた隆也君のモノが膨れた。
ぐっと増した質量に、ひっと息を呑んだ直後、奥がびしゃっと濡らされる。
「あっ……好き……」
うわ言のように呟くと、ぎゅっと強く抱き竦められた。
「廉……」
耳元で、荒い息が吐かれる。
汗をかいた熱い肌と肌が、たくましい腕の中に重なる。
「オレは鬼だ」
どんな顔でそんなセリフを言ったのか、相変わらず顔は見えない。でも、掠れたような低い声が、切なそうに響いた。
怖くない。
カタキじゃないなら、憎くもない。
「見れば分かる、よ」
弾んだ息の中、ふひっと精一杯笑ってみせると、隆也君は一瞬絶句して――。
「なんだ、そりゃ?」
そう言って、くくっと笑った。
長襦袢を掛布団代わりに体に掛け、力の入らない体を抱き込まれ、腕枕されて、しばらく静かに一緒に寝た。
乱れまくってた呼吸も、心臓の音も、抱き合ってる内にゆっくりと穏やかになって行く。
口移しで冷たい水を飲ませて貰うと、気持ちの方も少しだけ落ち着いた。
「もっと」
そっとねだると少し笑って、求めるまま何度も唇を重ね、水を飲ませてくれた。隆也君は相変わらず優しい。
ゴツゴツした大きな手が、オレの汗ばんだ髪を掻き上げ、優しく頬を撫でる。
体の中には激しくされた余韻が、まだ深く残ってて恥ずかしい。顔を覗かれるのも、見つめ返すのもちょっと無理で、カーッと顔が熱くなる。
やがて隆也君が、オレをゆるく抱いたまま口を開いた。
「13歳になる前に、生えて来たんだ。角」
角、と言われて、彼の額にぼんやりと目を向ける。肌の色より少し白いその角は、つるんとしてて冷たくなかった。
「最初は虫刺されか吹き出物だと思ってさ、気にしてなかった。けど、1ヶ月2ヶ月経っても治んなくて、むしろ大きくなって来てて。ついには皮膚を破って、とがったモノが生えて来た。角かも知んねぇって、自覚したのはその時だ」
隆也君はそう言って、オレに腕枕をしたままゴロリと天井を向いた。
「その頃にはもう、オレのオヤは死んでいなかったしさ。どっちの血のせいなのか、それとも拾われっ子だったのか、それすら分かんねぇ。ただ、髪で隠れねーようになった頃、もう村にはいらんねーと思った」
語られる3年前の真実はどれも初耳で、いきなりは信じられなかった。
「い、言ってくれたら良かった、のに」
厚い胸に縋りながら言うと、ふふっと笑われる。
「言ってどうなるんだよ?」
って。確かに、12、3歳の子供にはどうしてあげようもなかったかも、だけど。
オレにも瑠里にも修ちゃんにも……誰にも言わずに1人で村を出るなんて、そんなの寂し過ぎると思う。
「お前らに、拒絶されんのが怖かった」
その言葉に、胸が痛んだ。
13歳になる直前って、オレたち一緒に遊んだり勉強したりしてたよ、ね。
誰より身近にいて、誰より好きで、大事な存在だと思ってたのに。オレ、そんな風に隆也君が悩んでたことも知らなかった。
「……気付いてあげられなくて、ごめん」
思わずぽつりと謝ると、「お前は悪くねーよ」って、優しく髪を撫でてくれた。
「それに、別に不幸じゃなかったぜ。仲間もいるし」
ニヤッと笑われて、板の間にいた大勢の鬼たちを思い出す。
村とは違う、自由で無法で賑やかな連中の集まり。山に住み着き、峠を占拠する鬼の一団。
ああ、隆也君は、そこの長なんだっけ?
もう村には帰らないのかな?
――オレは?
そう思うと、なんだか落ち着かない気分になった。
(続く)
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