Season企画小説
鬼の嫁取り・3 (R18)
山に巣くって、最近勢力を伸ばし始めたのは、鬼の一団だって聞いてた。
本当に鬼がいるだとか、鬼のように強いとか、どうして「鬼」だと言われてるのかは分かんない。
鬼の面をつけてるからかも知れない。
そしてその鬼の一団に、3年前、オレの幼馴染みはさらわれたんだと思ってた。
もう食われたんだと言う人もいた。諦めろ、って。
けど、オレはずっと忘れられなくて――。
「隆也、君」
白い面を外した後には、成長した端正な顔があった。
キリッと濃い眉、少し垂れた涼やかな目、高い鼻、意志の強そうな唇、すっきりとしたアゴ……。
13歳の頃の面影を残しながら、更に格好よくたくましく成長した幼馴染み。その隆也君の額、髪の生え際からは2本の角が生えている。
「オ、ニ……」
思わず呟くと、「だから、どうした?」って訊かれた。
「鬼だから、斬ろうってか? やんならやれよ」
形のいい唇を歪めて、角をはやした鬼が笑う。
こんな時なのに、頭がしっかり働かない。
目眩がひどくて体が熱くて、目の焦点が合いにくい。しっかり目を凝らしてないと、目の前の鬼の顔も二重三重にぶれてくる。
「てめーが殺んねーなら、こっちが犯んぞ」
鬼がそう言って、オレの長襦袢の帯を解いた。
「ま、待って」
うわずった声を上げても、震える懐剣を向けても、もう鬼を止めることはできない。
ヒザを割られて、腰を掴まれ、引き寄せられる。
――怖い。
「隆也君っ」
もう一度呼んだけど、彼を怒らせただけだった。
「んなヤツはいねーっつっただろ! もう鬼に食われたんだよ!」
「違っ……!」
とっさに首を振ったけど、何が違うのか分かんなかった。
はあ、はあ、と荒くなる呼吸。体に力が入らなくて、考えが上手くまとまらない。
体にまといつく襦袢が熱い。
懐剣を構えた手が震える。
「もう黙れ」
鬼が押し殺した声で言った。
同時に、股間にぬるい液がかけられる。
香油だ、と悟った次の瞬間、肛門に細くて固い何かが捻じり込められた。
「やっ!」
痛みはなかった。異物感よりも恐怖が強い。
抵抗なくずるっと挿入された何かが、穴の中を広げるように回される。香油が中にまで塗り込められて、溶けてるように熱くなった。
脚にも腰にも力が入らず、暴れることも逃げることもできない。
全身が熱くて。
「なんで、オレ……っ?」
乱れた呼吸の中、上ずった声で訊いたけど、彼からの応えはなかった。
穴を拓く指が、2本3本と増やされる。
懐剣を握った手でたまらず顔を覆うと、その手首をぐいっと掴んで、鬼がオレを組み伏せた。
オレから懐剣を取り上げるなんて、きっと簡単なハズなのに。どうして彼はしないんだろう?
情欲に濡れた、真っ黒な目がオレを見下ろす。
「オレを殺んなら、これが最後の機会だぞ」
響きのいい低い声。
3年の間に変声期を迎えて、昔のままの声じゃなくなってたけど、でもよく聴くとやっぱ、どことなく馴染みがあるように思えるから不思議だ。
鬼には思えない。
カタキじゃない。
だってオレはずっと前から、隆也君が好きだった。
ぽろっと懐剣が手から落ちる。
同時に、拓かれた穴に固いモノが押し当てられて……一気にぐぐっと貫かれた。
「ああーっ!」
衝撃に悲鳴が漏れて、体が弓なりに反る。
指よりも圧倒的に大きく太く、長くて、そして力強い。奥まで穿たれ、息を整える間もなく、がくがくと激しく揺さぶられる。
「はっ」
熱い。溶けそう。
塗り込められた香油のせい? それとも飲まされた薬のせいかな?
彼の言う通り痛みはなくて、ただ奥を突かれ、中をこすられてとろとろに溶けそうだった。
「んっ、……あ、ふあっ……」
自分のものじゃないみたいな、のぼせたような声が出る。
犯された場所からぐちゅぐちゅと濡れた音が立って、生々しくて気が遠くなる。
手にも足にも力がなくて、ぎゅっと縋ることもできない。力なく広い背中に腕を回すと、鬼が少し腰を緩めた。
「薬が効いてるみてーだな」
短い髪を掴まれ、顔を覗き込まれる。
「廉……」
荒い息の中、静かに名前を呼ばれて、唇を奪われた。肉厚の舌が差し込まれ、オレの口の中をぐるりと舐める。
目の焦点が合わなくて、彼がどんな顔をしてるかはよく分かんなかった。
「痛くねーか?」
響のいい声に囁かれて、全身にぞくぞくと震えが走る。
「んっ」
上ずった声で返事すると、汗ばんだ胸に抱き込まれた。
オレのとは違う、日に焼けたたくましい体。鬼なのに日向のニオイがして、泣きそうに懐かしい。
ふいに強く抱き締められて、息が詰まった。
直後、再び動きが早く、強くなり、ガツガツと突かれる。
「ふあっ、あああああっ!」
なけなしの力で爪を立てると、「くそっ」って短くののしられた。
「あっ、隆也君っ」
名前を呼んでも返事はない。でも、「そんなヤツはいねぇ」とも言われない。
熱い。
溶けそう。
気持ちいい。
――好きだ。
「たかや、くん……っ」
揺すられながら呼んだ声は、自分でも恥ずかしいくらい甘く響いた。
再び唇を重ねられ、顔を寄せられる。
そっと手を伸ばして角に触れると、つるんとしてたけど冷たくはなかった。
若鹿の鹿茸みたい。そう思うと、怖くなかった。
(続く)
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