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Season企画小説
期間限定で別れようと言われたら・10 (完結)
 一週間ぶりの甘い吐息。噛み付くように重ねた唇。
 キスは涙の味がして、それでもやっぱり甘かった。

 オレは三橋に謝りもしねーで、肩を抱いてオレの部屋に連れ込んだ。三橋もぶつかるくらいの勢いで、オレに抱きつき、自分から部屋に入って来た。
 競争するみてーに、服を急いで脱ぎ捨てる。
 二人同時に生まれたまんまの姿になって、抱き合ってもつれ合い、マットレスの上にダイブする。

 オレだけのものだ。
 誰にも渡さねーし、誰にも貸さねー。
 オレだって。
 三橋以外、誰のものにも絶対ならねー。

「早く、早く来、て!」
 三橋が上擦った声でねだる。
「痛くして、いい、から! 早く、来てっ」
 一週間ぶりだ、オレだって待てねぇ。性急に穴をほぐし、ゴムのパックを一つ取る。
 すると三橋が首を振った。

「いら、ない! 今日、は、使わない、で!」

「三橋……」
 そうだな、ごめん。
 心の中で謝って、でも何も言わねーで。オレだけの場所に、三橋だけのオレを押し当てる。
 ぐぷ、と溢れる人口の愛液。
 女じゃない。オレも、三橋も。でも構わねー、それでいい。
 女なんか知らなくていいし、女なんかと比べなくていい。
 わずかに感じる抵抗を、突き破るように進めると、すぐに柔らかな粘膜がオレを包む。

「あ、べくん」
 三橋が喉を仰け反らせ、安心したようにため息をついた。その息を吐き切らねーうちに、覆いかぶさって激しく突く。
 不安も、不満も、執着も、愛情も。全部一点に込めて、捻り込み、擦り付ける。
 最初から、全力。
「あ、あ、あっ」
 三橋は眉を寄せ、オレの背中に爪を立て、ずっと悲鳴じみた声を上げ続けた。

 痛かったかも知れねー。
 無茶し過ぎかも。
 でも、オレだって。オレだって……。
「限界だったんだっ、くそっ!」
 三橋の中に、思いの丈を全部吐き出し、それでもまだ、足りなかった。それを塗りこめるみてーに、繋がったままで揺さぶり続ける。気の済むまで、何度も。
 そしてそれを、三橋もただ、喘ぎ泣きながら受け入れた。


 試合の疲れもあったんだろうに、オレの気持ち全部受け止めて、三橋は意識を失った。
 その体をタオルとスポンジで清めてやって、そこでオレも力尽きた。
 考えてみりゃ、当然か。一週間、寝てなかったもんな。

 5月16日、月曜日。
 目が覚めたら、腕の中に三橋はいなかった。
 うわ、今、何時?
 開け放したドアから、カタンコトンとダイニングの音が聞こえ、時計も確かめずに飛び出した。
 メシの炊ける匂い。そして、味噌汁。
「おは、よう」
 キッチンに立ってるのは三橋で……ダイニングには、オレ達しかいねー。
 オレのイスには誰も座ってなくて、黒とグレーの毛糸の固まりが、代わりにそっと置かれてた。

「こ、れ……?」
 見覚えがある。岩清水がソファで寝てた日、編み棒にくっ付いてたの、これじゃなかったか?
 広げるとサマーセーターで、小さな紙が、ひらっと落ちた。
 拾い上げると、女らしい整った字で、「不愉快な思いをさせました、申し訳ございません」と書かれてる。
「何で、オレに?」
 サマーセーターはもう一着あって、茶色とベージュの、それにも確かに見覚えがあった。

「阿部君が、言ったんだろ? オレ達付き合ってるって」

 三橋が、オレの茶碗にメシをよそいながら言った。
「だから、誕生日プレゼント。恋人さんと、ペアルック、良かったらって」
 ふひ、と笑われて、呆然とする。
「いや、オレ言ってねーぞ。お前が言ったんじゃねーの?」
 昨日の朝だ。岩清水は、何でも無い事のように言ってたよな、「恋人同士だと存知ています」とか。
「え、オレ、言ってない、よ」
 三橋はきょとんとして、首をかしげてる。

 じゃあ、誰から聞いたんだ?
 いや、聞かなくても、お見通しだったんか?
 あいつが来てから、オレ達、ほっとんど会話してもなかったのに。それでお見通しって、どうよ。
「やっぱ魔女だ……」
 オレは呟きながら、味噌汁を汁椀に注いだ。
 今まで作らなかった朝の味噌汁、何だかあの魔女の痕跡みてーで、苦笑する。

 昨日の夜、三橋とあいつと、どんな話をしたのか……結局、おれは聞いてねぇ。別に知りたくもねーし、聞いたって仕方ねー。
 三橋はオレのもんで、勝ち負けで言うなら、勝ったってことだ。
 でも、何だろな、このスゲー敗北感。っていうか、一生勝てそうにねー感じ。
 そう、丁度……モモカンに感じるのと、同じ。


 オレは、魔女の編んだサマーセーターを着て大学に行った。三橋には、明日着ろって言った。
 スゲー魔よけになりそうな気がする。いや、三橋に必要なのは、虫除けか?
 明日は三橋の誕生日で、また三橋はあちこちの女から、大量にプレゼント貰うんだろう。
 その中にはきっと、また多分手作りの何かが入っていて、それを見たら、オレはまたイヤな気分になるかも知れねー。

 けど、もう、心は揺らさねー。
 自信持って、ずっと三橋の側にいる。


 そう誓う事が、今年、オレから三橋へのプレゼントだ。

  (完)

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