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Season企画小説
タイムラグ (2014夏至・原作沿い高2・801注意・R18)
 2人分の荒い息がこもった部屋ん中に、開けっ放しの窓の方から、ひと際涼しい風が吹いた。
 ギシギシとベッドを軋ませながら、窓の外を見ると夜が来てる。
 部屋ん中はだいぶ前から暗かったから、あんま気付かなかった。夢中になってたし。
 オレの下で悶えてる三橋は、もっと気付いてねーだろう。なんせ、ずっと目ぇ閉じたままだ。
「あっ、はあっ、……、あっ」
 暗くなった広い空間に、部屋の主の甘い喘ぎ声が響く。
 目ぇ閉じて、口を半開きにして、蕩けきった顔を晒して。無防備な顔、オレに観察されてんのにも気付いてねぇ。
「やっと日ィ暮れたぞ」
 そう囁いても、上ずった声で「んっ」と返事するだけで、やっぱ目を開けようとはしなかった。

 1年で1番陽の長い日。
 昨日と大して違わねぇだろと思うけど、気のせいか夕方が長かったように感じた。
 窓の外がいつまでも明るくて。そのくせ、部屋ん中は少しずつ暗くなってて。勉強なんかやめて抱き合え、と、朱色の夕陽にそそのかされた。

 組み伏せた白い肌が、しっとりと汗ばんでぺっとりと吸い付く。
「んっ、んっ、ふぁ、……っ、……っ、ああっ」
 喘ぐたび、ふわっと香る甘い匂い。
 オレも汗だくになってたけど、そんでもベッドの上での運動を、やめてやろうって気にはなんねぇ。
「三橋」
 名前を呼んで、覆いかぶさって口接ける。
 舌を絡めると三橋の胎内がくぅーっと締まって、粘膜にこすられ、たまんなく気持ちイイ。
「んんーん、んっ、んんん、んっ」
 三橋も善いんだろう、キスしながら、喘ぎっぱなしだ。
 オレの背中に、夢中でしがみついてくんのが可愛くてしょうがねぇ。

 勉強するつもりで用意した、テーブルの上の卓上ランプが、放置されたまま点いている。
 ベッドん上にいると、ちょっとした間接照明みてーだ。オレが動くたびに壁に映った影も揺れる。
 三橋の脚もゆらゆらと揺れて、その影も揺れんの見てたら、鏡見るより興奮した。
「はーっ、スゲー善い……」
 顔を覗き込みながら告げると、三橋のまぶたがぴくんと震えた。快感に上気した顔が、ますます赤く染まる。
 スゲー善くて、スゲー可愛い。
 無茶苦茶に抱きつぶしてしまいてぇ。
 
 繋がったまま抱き起して、ヒザの上に乗らせると、三橋が「ああーっ」とのけ反った。
 深いとこまで串刺しにされると、いつもこうだ。
 ぎゅっと抱き締めて、動かねーでキスをする。きゅうきゅうと締められて、抜き差しを休めても感じてんのが分かる。
 キスを解いて、斜め下から顔を覗き込んでやると、薄目を開けた三橋がぼんやりとオレを見た。
 長いまつ毛の下、色素の薄い大きな瞳がぬらっと濡れて明かりを映す。
 ちょうど目の前にうるんだ半開きの口があって、はふはふ息をするたびに、歯や舌がちらちら見えた。
 ゆるく下から突き上げてやると、「あ……」とか「う……」とか小さな声を漏らし出す。

「気持ちいーか?」
 訊かなくても分かってるけど、わざとそうやって訊いてやったら、上ずった声が返って来た。
「きも、ちい」
 無防備に目を閉じられて、首にぎゅっと抱き付かれて、ぞくっと背筋に電流が走る。。
 突如、無茶苦茶にしてぇって思いが沸き起こって、もっかい倒して正常位に戻った。
 ぐっと腰を掴み、両脚抱えて引き寄せて、激しく抜き差しを開始する。
 ガンガンに突き上げると、白い体がガクガクと揺れて、三橋の悲鳴が高く上がった。

「ああっ、ふああっ!」
 開け放った窓から外に、届きそうな嬌声。
 ギシギシとベッドが軋み、組み伏せた恋人が身もだえる。
「あああっ、激し、い」
 って。不満なのか悦んでんのか、それともただの感想だろうか?
 少なくとも、手加減して欲しがってるようには聞こえなくて、じゃあ期待に応えようと思って、息さえ詰めて揺さぶった。
「あっ、あっ、もうダメ、もうダ、メ……」
 目ぇ閉じたまま、ぶんぶん首を振ってうめくけど、「ダメ」って言われたって続けるに決まってるし。
 むしろ押さえつけて、更に強く突き込んで、あんあん啼かせた。

 風の通りをよくするために、あっちもこっちも窓開けてっから、ここがもし集合住宅なら、ご近所さんに丸聞こえだろうな。
 けど三橋んちは庭が広くて、周りに高いビルなんかもねーから、少々の善がり声なんかは道路にも届かねぇ。
 階下に人がいりゃさすがにヤベェけど、三橋んちの両親はまだ当分帰んねーし。
 密室じゃねーとこで存分に喘がせまくんのは、開放感とちょっぴりのスリルで、病み付きになりそうでたまんなかった。

「イク、イクっ!」
 うわ言繰り返して、三橋がゆっくりと首を振る。
 目はぎゅっと閉じて、口はぽかんと開けて、甘い息を散らしてる。
「オレも、イキそ……っ」
 胎内の粘膜が熱くうねって、気持ちイイ以外の言葉が出ねぇ。
 体温で溶け切ったローションが、抜き差しに合わせてぐちゅぐちゅ鳴った。
「ふあああっ」
 三橋の高い声。
 三橋が射精したと同時に、三橋ん中もきゅううっと締まって、搾り取られるようにオレも続いた。

 はあ、はあ、と荒い息を整えながら、額に浮かんだ汗をぬぐう。
 ゆっくり三橋ん中から出ると、たっぷり出したオレの白濁が、一緒にちょっとあふれ出た。
 抜け出す瞬間、三橋がぴくっとすんのが好きだ。
 ちょっと萎えたモンで浅いトコこすられんのがイイ、とか。
 じゃあ、ってガチガチの内に浅いトコを攻めてやったら、それは善すぎてダメらしい。
「阿部君のは大き過ぎるから、凶悪だっ」
 前にそう言われたけど、意味ワカンネー。いつもずっぽり飲み込んでるくせに。
 きゅうきゅう締めて来て、食いつかれてるみてーで、お前の穴の方が凶悪だっつの。ホント、病み付きになってそうで怖ぇ。

「シャワー、行くか?」
 汗で顔に張り付いた猫毛を指先で払ってやりながら、三橋の顔を覗き込む。
 三橋はうっすらと目を開けて、胸で大きく呼吸しながら、首を振った。
「後、で……」
 力のねぇ声に、ふふっと笑う。
「ぐだぐだしてっと、夜が明けちまうぞ。今日は夏至だし」
 そう言いつつ、三橋の横にごろんと寝転がって天井を見つめる。
 点けっぱなしの卓上ライトが、テーブルに反射して天井をぼんやり照らしてる。
 1年で1番、夜の短い日。
 恋人と濃密な時間を過ごしてると、あっという間に朝が来てしまいそうだ。

 埼玉の日の出は、午前4時25分。
 今年もまた、5時に裏グラに集まって、瞑想しながらの朝練が始まる。
 暑くなんのは、これからだ。

 胸呼吸を繰り返しながら、ぼうっと天井を見上げて三橋が言った。
「オレ、たち、なんで、えっち、しちゃったんだ、っけ?」
 言われてみりゃ、そうだった。
 勉強する気満々で、ローテーブルに向かい合って卓上ランプ点けて、ノートと問題集開いてたのに。なんで……こうなったんだっけ?
「さあ」
 適当に返事すると、また三橋がぽつりと言った。
「確か、夏至の日だ、って阿部君が言って……」

 夏至の日だってオレが言って――。
「ああ、思い出した」
 夏至の日だってオレが言って、そんで三橋に訊かれたんだ。「前から不思議だったんだ、けど」
 って。
「なんで、一番暑いのは、夏至の日じゃないん、だろう?」
 って。
 それは……大気が温められるまで時間差があるからだ。梅雨が明けてから地面が熱せられ、それから空気が熱くなる。これには比熱が関係してて……。

「つまり、愛撫を始めた直後から、お前が喘ぎ始めるまでタイムラグがあるように、太陽に長く照らされて大気が熱くなるまでだって、同じようにタイムラグがあるんだよ」
 そのタイムラグを実地で教えてやろうとしたんだけど――。
「どう? 分かった?」
 髪を撫でながら訊くと、「分かんない」ってすぐに首を振られた。
 まあ、そりゃそうだよな。オレだってちゃんと実感はできなかったし。

「じゃあ、分かるまでやろうか?」

 そう言ってくったりした体に乗り上げ、馬乗りで恋人を見下ろすと、三橋は一瞬「ふえ?」と首をかしげて、数秒後に真っ赤になった。

  (終)

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