Season企画小説
阿部君の鬼退治 (2014節分・大学生・R15)
阿部君が「節分だぞ」って言って、豆まきセットを買って来た。
小さい升付きのいり豆と、赤い鬼のお面。輪ゴムもついてるお徳用だ。
大学入学と共に同棲したオレ達の、2人きりでやる初めての節分。
初めての誕生日、初めてのクリスマス、初めてのお正月も楽しかったから、初めての節分も、きっと楽しく過ごせると思う。
オレも今日は、スーパーで恵方巻きの材料買って来たんだ。ご飯も寿司飯用に、ちょっと固めに炊いてある。
「今日、晩ご飯、恵方巻き作る、よっ」
阿部君にそう言うと、「おっ、スゲー」って誉められた。
さっそくじゃんけんで、鬼を決めた。結果はオレの負けで、オレが鬼。
「じゃあ、さっさと始めよーぜ」
嬉しそうに鬼のお面を渡されて、えっ、と思う。
だって、まだ夕方だ。普通豆まきって、夜にするんじゃなかったっけ?
でも。
「TVで成田山とかの中継、見たコトねーのかよ? 昼にやってんだろ?」
そう言われると、納得するしかなかった。
「じゃ、じゃあ、準備する、ね」
オレはそう言って、鬼のお面の耳の穴に、輪ゴムを通した。目もくり抜いて、前が見えるようにもした。
そんなに深く被るのも子供みたいでどうかと思うけど、どうせこの場には2人しかいない、し。ちょっと恥ずかしいけど、たまにはいい、よね。
阿部君と暮らすこの家は、2LDKのアパートだ。
豆を撒くのは、各部屋とキッチンと洗面所、トイレ、それに玄関くらいかな? お風呂場もいる?
そう思いつつ、お面を被る。
うお、結構息苦しい。
でも、「準備、できた」と言ったオレに、阿部君が言ったのは……。
「はあ、それで!?」
というセリフだった。
「何言ってんだ、三橋。鬼だろ? 鬼っつったら、裸じゃねーか」
って。
真顔で言われて、ちょっと戸惑う。
確かに一般的な鬼の姿って、虎の毛皮のパンツ1枚とか、かも。でも、だからって節分の鬼役に、そこまでは求められてないんじゃない、かな?
ドモリながらそう言うと、「うちではやるぞ」って、また真顔で言われた。
「鬼役はうちでは親父だけどな」
阿部くんちのオジサンの鬼の姿を想像すると、確かに似合うかも、って思ったけど。でも、絶対ウソだよ、ね?
「で、でも、う、うちは違う、し……」
じーちゃんちでは、豆をまくのは家長の役目だって言って、じーちゃんがまいてた。
鬼役は特にいなくて――。
でも、そんな言い訳、阿部君には通用しない。
「いーから、いーから」
って、あっという間に脱がされちゃった。
セーターだけならまだしも、ジーンズまで脱がされちゃって、さすがに恥ずかしい。脱がされる時に、一緒にお面も取れちゃって、それも恥ずかしかった。
慌ててお面を被り直したけど、恥ずかしいのは変わらない。
顔が熱い。
体を庇うように腕で隠し、ちょっと内股で猫背になってると、「ぶはっ」と笑われた。
「すげー、全身真っ赤だぞ。そういう赤鬼もアリだな」
って。ヒドイ。絶対面白がってる。
だったらオレも鬼になっちゃえ、って思って、「がおー」って言いながら阿部君に飛び掛かったら、あっけなく捕まえられた。
「よーし、鬼捕獲」
ニヤッと笑われて悔しい。
でもそれより、そのままベッドルームに連れて行かれて、あれっ、って思う。
まずはここから豆まきするのかな? と、思ってたら――。
「予定変更。やっぱ、鬼退治から先にやんねーと」
阿部君はそう言って、オレをベッドに押し倒した。
鬼退治って……えっ、ど、どういう意味?
「ま、豆、まき、はっ?」
じたじた暴れながらそう言うと、「豆なら、ほら」って、きゅうっと乳首をつままれた。
「やあっ」
思わず声を上げたら、くくっと楽しそうに笑われる。
「ほら、効果あった」
って。
「でもコレ、大豆じゃねぇなぁ。大きさは小豆で、色は金時豆か? 味は?」
阿部君はそう言いながら、オレの乳首に顔を寄せ、べろべろ舐め回した後、歯を立てた。
お面のせいで息苦しい。視界もかなり遮られてて、阿部君が見えなくてちょっと怖い。
けど、手を伸ばしてお面を取ろうとしたら、「こら」って怒られた。
「今は鬼だろ」
そう言って、お面の上からちゅっとキスされる。
厚紙がふにっと唇に当たって、変な感じ。
こんなキス、意味ないって思うのに、余計恥ずかしいのはなんでかな?
その間も阿部君のイジワルな指は、オレの乳首をこねたりつまんだりして動いてた。
しゃぶられて、噛まれて、爪を立てられて、びくびくと体が震えちゃう。
「あ、阿部君、そこばっかりはヤ、ダッ」
たまらなくなって悲鳴を上げたけど、やめて貰えない。
「鬼っつったら豆だろ」
って。でも乳首は豆じゃない、のに。
「ヤダぁ……」
泣きそうになりながらそう言うと、ようやく豆攻撃がやんだ。でもホッとする間もなく、ずるっとパンツが脱がされる。
「鬼のパンツの下は、どうなってんのかな?」
お面のせいで顔は見えないけど、阿部君、すごく楽しそうだなって、それくらいは分かった。
「あっ、お前の金棒、びしょ濡れだぞ」
そんなこと言われて、ますます顔が熱くなる。
「金棒と恵方巻き、どっち先に食う?」
とか言われても、どっちが何なのかよく分からない。考えられない。選べない。
両脚を抱えられ、大きく広げさせられて。
「中に豆がねーか探さねぇと」
って、指でさんざん探られて。その後、熱くて固いモノを押し当てられたら――。
それが「金棒」なのか何なのか、考えてる余裕はなかった。
鬼のお面、かぶったまま貫かれて、揺すられて、「退治」された。
いつものことだけど、1回じゃ当然許して貰えなかった。何度も「金棒」を食らわされた。阿部君の方が鬼だ。
当然、その後は豆まきなんてできるような状態じゃない。
ホンモノの恵方巻きを食べられたのも、日付変わった後だった。
「来年は年の数だけ……」
そんなコトを真顔で言う阿部君に、ぞっとする。
オレ、節分の鬼役なんてやったの、今日がはじめてだけど。節分を怖がる鬼の気持ちが、ちょっとだけ分かったような気がした。
(終)
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