Season企画小説
期間限定で別れようと言われたら・1 (2011三橋誕・大学生・R18)
三橋は向かい合って抱かれる方が好きだというけど、オレはバックも結構好きだ。
四つん這いにさせた三橋の、引き締まった腰を抱えて容赦なく打ち付けると、白い背中がだんだんネコのように反ってきて、獣のようで、ぞくぞくする。
快感と衝撃に耐え切れねーで布団に伏せ、それでもオレを欲しがって腰だけ高く上げて、甘い声で啼きっ放しな感じになるのも、やっぱり大きな獣みてぇ。
最後は正常位にしてやろうと、いっぺん抜いたら、三橋がすんげー甘い声で「やだぁ」とねだった。
「ほら、終わりじゃねーよ。上向け」
昔は三橋も細かったから、ぐったりしてたって、オレが抱きかかえて裏向けてやる、なんて芸当ができたもんだけど……今はそれができねーもんな。
「もっと欲しーんなら、ほら、こっち向けって」
「あ、んん、阿部、くぅん」
やっと上向きになって、三橋はオレの首に腕を巻き、自分から足を広げて挿入を助けた。
プロ目指して頑張って体作って、三橋はでかくなったけど。セックスの時はいつまでもオレに甘えてて、スゲー可愛い。
貫かれる瞬間は、白い喉を仰け反らせて息を漏らす。
オレの名前呼んだり、「好き」っつったり。セックスの最初はずっと騒がしいのに、だんだん快感に負けて、何も喋れなくなっちまうのも、いつも思うけど、スゲー好きだ。
「はっ、くっ、三橋、三橋っ」
焦らしとか小細工はやめにして、オレももう、射精の為に動きを早く激しくする。
三橋も男だから、そういう動きだって分かるみてぇで。まだ足んねぇ時は、「もっとぉ」とか「終わっちゃヤダぁ」とか甘くねだったりする。
でももう今夜は、満足みてぇだ。半分気絶してて、もう喘ぐ元気も残ってねぇ。
こら、三橋。寝るな。
「くっ!」
……はぁぁー、とゆっくり息を吐きながら、ゴムの根元を押さえて三橋から離れる。
「あ、んん」
今まで無言だったくせに。抜こうとすると名残惜しげに文句を言われて、苦笑する。
そうしてたっぷりと愛し合った後。オレの腕の中でまどろみながら、三橋が言った。
「あ、そうだ、阿部君………」
「んー? 何だ?」
「来週、一週間だけ……オレと、別れて、下、さい………」
そう言って、三橋はそのまま、すうっと安らかな寝息を立てる。
オレは一瞬、何を言われたのか理解できなくて、三橋に腕枕してやったまま、天井を見上げた。
一週間だけ、何だって?
「はあー?」
三橋の下から腕を引き抜き、馬乗りになって、ガクガクと肩を揺らす。
「てめっ、どーゆー意味だ、コラ!」
しかし三橋は目を開けねぇ。
ちっ、と舌打ちして、今度は軽く両頬を叩いてやる。
「起きろ、コラ、三橋!」
すると三橋は半眼を開け、宇宙語を呟いた。
「ひにゃいにょ」
――ダメだ、落ちてる。
落としちまったのはオレだから、責める事もできねぇ。
「にぇむいんにょほゅ」
三橋はもっかい呟いて、もぞもぞと向きを変え、また寝息を立て始めた。
こうなったらもう、朝までこいつは目を覚まさねぇ。
謎の爆弾発言の真意は、明日の朝、訊き出すしかなさそうだ。
来週って、いつからかワカンネーし。
別れる、とか……。
ダメージ大きいんだぞ。冗談でもやめて欲しい。
朝目覚めたら、三橋が腕の中にいなかった。
三橋はプロを目指して大学で野球をやってて、朝練もあるから、いつも早起きだ。でも普段は、三橋が起きる気配で、オレも目が覚めちまうんだけどな。
「あれ?」
時計を見ると、午前8時をちょっと過ぎてる。
「うわ、やべ」
目覚まし時計、消しちまったか?
今日は月曜、授業は9時から。うちの玄関から大学の教室まで、所要時間平均30分。
素早く計算しながら、ロンTを引っかぶる。下は……あー、昨日のジーンズでいーや、もういーや、どうせ誰も気にしてねーし。
部屋を出ると、ダイニングテーブルには三橋が朝飯の用意をしてくれてた。おにぎりと、ほうれん草の卵とじ、プチトマト。
行儀悪ぃけど、立ったまま卵とじを掻き込んで、もぐもぐやりながら靴下をはく。
おにぎり頬張りながらアゴをさすると、ちょっとヒゲ生えてんな。充電済みの電気シェーバーで、鏡も見ねーでヒゲを剃る。
プチトマトまとめて口に放り込んで、皿とフォークを洗い桶につけておく。こういう気遣い一つで、三橋の機嫌が左右されるんだから、馬鹿にできねー。
歯磨き済ませれば、8時29分。おし、上出来。
オレは鞄持って鍵閉めて、機嫌よく駅まで小走りで行った。
いつも通りの朝の始まりだと……このときはまだ、思っていた。
(続く)
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