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Season企画小説
そう禁断でもない関係・4 (にょた)
 メシ食った後、腹ごなしも兼ねて散歩に出かけた。
 そんなにでかくねぇ温泉街は、浴衣着た泊り客でそこそこ賑わってるようだった。
 まだ温泉入ってねーから、来た時のまんまの格好だったけど、他人が着てんの見てたら、浴衣もいいもんだな、と思う。
 土産物屋の灯りにふらふらと廉が寄ってくから、危なっかしいと思って手を繋いでやると、また真っ赤になっていた。
 ベッドの中では大胆にねだったりもするくせに、今更手ぇ繋いだぐらいで赤くなるとか、女心はよくワカンネー。
 背が違うから仕方ねーけど、オレの方からは肩を抱く方がやりやすいし。そう言えば、手を繋ぐってあんました事なかったかも?
 まあ、こんなんで機嫌が直るんならと思って、散歩の間中はずっと手を繋いだまま、土産物屋をひやかした。

 部屋に戻ると、膳が片付けられていて、もう布団がひかれてた。
 二つ並んだ布団を見て、廉がじわっと赤くなる。
 そういや、こうやって布団並べて寝るのって、初めてかも知んねーな。ダブルベッドより、妙にあからさまな気がする。
「何? もう夜のコト想像してんのか?」
 ははっと笑ってからかうと、廉はますます顔を赤らめ、「そんなこと、ない」つってうつむいた。

 温泉には別々に入った。
 せっかくの露天風呂だし、1回は入っておかねーと勿体ねぇ。
 部屋で浴衣に着替えようとした時、廉があまりにもたついてたんで手伝ってやったら、スゲー緊張してたんで笑った。
 今から風呂行こうつってんのに、襲う訳ねーだろ。そんなガッついてるように見えんのかな?
 つーか別に、襲うも何も、無理矢理ヤッたことなんか無かっただろ?
 猿じゃねーんだから、もし「今日はイヤ」とか言われたら無理強いするつもりねーし。そりゃ嫌味の1つくらいは言うかも知んねーけど、本気じゃねーし。
 けど……首筋に軽くキスして、「じゃあ風呂行って来い」つって送り出したら、真っ赤な顔で出て行った。

 時間も時間だからだろうか、本館の大浴場は混んでたみてーだが、露天風呂には人も少なくて、ゆったりと入れた。
 雪でも降ってりゃ最高なんだが、こればかりは巡り合わせなんだから仕方ねぇ。
 夜の露天風呂は、控えめなライトアップが絶妙にキレイで、夜空には星も見えていい雰囲気だった。

 本館の自販機でスポーツドリンクを2本買って、部屋に戻った。
 洋室のデカいソファに座り、置かれてた夕刊を読もうとしたところで、戸口がカラリと開いて、廉が戻って来た。
「ほら、飲んどけ」
 スポドリを1本渡し、髪を乾かすように言うと、廉は曖昧にうなずきながら、和室の奥に入ってった。
 内風呂の横に、確か大きなドレッサーもあったハズ……と思い出してる内に、間もなくそっちからブォーンと機械音が聞こえてくる。
 パラ、と音を立てて新聞をめくり、経済面を読んでると、ソファの隣に廉が座って来た。

「暇ならTVでも見てろよ」
 新聞から顔も上げずにそう言うと、廉は「うん……」と言いながら腕に縋りついて来る。
 甘えてんのか?
 こういうとこ、まだ子供だなと思う。
 体は大人でも、中身は子供だ。一体いつになったら、甘えてくんのやめんのかな?
 はあ、とため息をつきながら、おざなりに頭を撫でてやると、ますます強く縋られた。

 ウゼェ、と思って振り向くと、廉が泣いててビックリした。
「なに? 相手して欲しーの?」
 読みかけの新聞から目を離し、肩に手を回して抱き寄せると、オレの首に手を回して縋り付いて来る。
 シャンプーがふわっと香った。
 ……まあ、もう夜だしな。布団見て赤くなってたくらいなんだから、期待してたんかも知んねー。

 涙をべろっと舐め取り、へたくそに着た浴衣のあわせから手を差し込んで胸を揉む。
 去年よりわずかに膨らみを増した乳房は、まだ固くて若い。
 息を弾ませ、甘くうめき始めた廉は、もう真っ赤になっていて――そんなに欲しかったのかとちょっと呆れた。
 快感に溺れやすいたちなんか?
 まあ、高校生なんてそういう年頃かも知んねーけど。

「廉ちゃん、いやらしいな」
 耳元で囁いてやると、彼女はますますオレに強くしがみ付き、上ずった声で「やあっ」と言った。
 ここでこのまま抱いてやっても良かったけど、せっかくの布団だしと思って、抱き上げて和室に連れて行く。
 いつもはベッドの上でそのまま抱くけど、たまには布団の中でヤんのもいいかも知んねー。
 掛布団をまくり上げて敷布団の間に廉を押し込み、そのままオレも滑り込むと、ちょっと暑くてちょっと重くて、やっぱいつもとは違う感じがして、興奮した。


 翌朝は9時に仲居が布団を上げに来た。
 オレはソファで朝刊を読んでたけど、廉は裸で布団の中にいたから、ちょっと焦ったみてーだった。
 シーツを巻き付け、大慌てで奥の内風呂の方に駆け込んでった廉を見ながら、ため息をつく。
 相手はプロだから色々慣れてんだろうし、そもそも女同士なんだから、少々見られたっていいじゃねーか。
 どうせゴミ箱見られれば、ヤッたことなんか1発で分かるっつの。

 オレはそう思いながら、ソファで新聞の続きを読んだ。
 朝メシの膳が運ばれて来たのは、それからもうしばらく後だった。

(続く)

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