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小説 1−16
逃げない小鳥 (原作沿い高1・阿→→三・キモベ?)
アベミハへの3つの恋のお題:抱きしめてもいいかな/準備はいいかい?/待て、なんて言わないで
#shindanmaker https://shindanmaker.com/125562 より。


 三橋に告白して以来、三橋の様子がおかしくなった。元から挙動不審気味ではあったけど、最近は更にそれが激しい。
 目ぇ合わねーし、「おはよう」の挨拶さえドモっちまって言えてねーし、オレから声かけたら飛び上がるくらいビビってる。オレの顔見るなり、ぴゅうっと逃げてくこともある。
 すげぇ可愛い。
 こんだけ態度が変わるってことは、そんだけオレを意識してるってことだろう。意識してるってことは、全く脈がねぇって訳でもねぇってことで、そう思うとちょっと嬉しい。
 告白してあっさり「ふうん」で終わるより、真っ赤な顔で逃げられる方が絶対イイに決まってる。
 まあ、逃げたばっかじゃいさせねーけど、それはおいおいでいいだろう。
「おーい、戻って来いよ」
 逃げた先のフェンスの向こうで、恐る恐るこっちをうかがってる三橋に笑顔で手を挙げる。
 フェンスの陰じゃ丸見えだし、隠れてることになんねーのに。あれでこっそりしてるつもりなんだろうか? バカだなぁと思うと同時に愛おしさが沸き上がり、顔が緩むのが抑えきれねぇ。
「阿部、怖っ」
 近くにいた誰かがぼそっと呟くのが聞こえたけど、三橋以外はどうでもいいし。オレの耳には入んなかった。

 告白の返事は急がねーけど、アピールは引き続き続けるつもりだ。
「レン、昼メシ一緒に食おーぜ」
 にこにこ笑いかけながら三橋の側に近寄って、隣をしっかりキープする。
 あわあわ、はくはくと口を開けたり閉めたりしてんのが可愛い。目がキョドッてて、柔らかな髪がぶわっと逆立ってっけど、それはまあいつものことだ。
 そんな風に動揺しつつ、「無理」とか「イヤ」とか言わねぇってことは、オレを拒絶してねぇってことだと思う。
「好きだぜ」
 三橋にだけ聞こえるよう、こそっと耳元で囁いてやると、更にキョドリが激しくなった。首がひょこひょこ動く様子が、小鳥みてーで可愛い。
 従順な犬みてーなトコもあるのに、小鳥みてーなトコもあるって。天使なんじゃねーかと思う。天使かも知れねぇ。

「唐揚げ1個食うか?」
 指で唐揚げを1個つまんで口元に持ってってやると、ちゅうちょしつつも素直にぱかっと口を開ける三橋。
「あーん」
 ぼそりと言いながら口に唐揚げを放り込んでやると、一気にドカンと赤面してて、可愛くてどうしようかと思った。
 三橋の唇に軽く触れた指先を、ニヤリと笑いながらべろりと舐める。
 そんなオレを見て、三橋が「むぐっ」とむせてたけど、そこはちゃんとお茶を飲ませて背中をトントン叩いてやった。

 練習の後、帰りを一緒にと誘うのも勿論のことだ。
 田島んちに寄る時もあるけど、そっからは2人だし、2人になれる時間は見逃さねぇ。
「阿部、レンをいじめんなよ?」
 田島からは不当な牽制をされたけど、好きな相手のこといじめるつもりなんかねぇっつの。べたべたに愛して可愛がって甘やかすことはあっても、いじめるなんかあり得ねぇ。
 まあ、将来的にはあんあん啼かせることもあるかも知れねーけど、それは嫌がる涙じゃねぇハズだ。
「追い詰めんなっつってんだよ、聞いてんのか、コラ?」
 泉にすごまれたけど、コイツの態度が挑戦的なのは今に始まったことじゃねーし、三橋にすごまれてる訳じゃねーからどうでもいい。
 いや、三橋にすごまれるのも、イイかも知れねぇ。
 返事の代わりにほのぼのとした笑みを返し、田島家の門前でキョドッてる三橋の元に向かう。どっちかが「うげっ」って言ってたけど、どうでもいいヤツのどうでもいい声は、オレの耳には入んなかった。

 通い慣れた夜の道を、三橋と一緒にゆっくりと帰る。
 頑張ってる三橋は今日もランニング通学で、そんなときオレは荷台に三橋の荷物も乗せてやる。荷物を運びがてら三橋んちにそのまま上がり込み、一緒に勉強することもある。
 真っ暗でしんと静まった三橋んちに、パチパチと明かりを点けながら入ってく時は、いつもたまんねぇ気持ちになる。
 孤独に慣れたコイツに、オレの温もりを与えてやりてぇ。まあ、下心もそれなりにねぇこともねぇけど、それは男子高校生なら仕方のねぇことだろう。
「レン、この間の返事だけど……」
 おもむろに口にすると、三橋が「ふおっ」と飛び上がった。
 さては油断してたな。すげぇ可愛い。油断大敵だ。だがオレは敵じゃねぇ。
「あ、あ、あのっ」
 声を上ずらせながら、真っ赤になって身を縮ませる様子も、どうしてやろうかってくらい可愛かった。
「抱き締めていーかな? いーよな?」

 腕を伸ばして近寄ると、「待っ、てっ」って逃げられた。
「いーぜ、待つよ。10秒?」
 ニヤリと笑いながら、「いーち、にーぃ」と数えるオレに、三橋がふあふあと可愛く慌てる。
 イヤなら「イヤ」ってキッパリ拒絶すりゃいいだけの話なのに。それをしねぇってことは、心底イヤじゃねぇんだろう。
 追い詰めんなって泉は言ってたけど、こうして逃げ道を用意してやってんだから、無理強いにはならねぇハズだ。
 問答無用で抱き締めたりしてねーし、キスだって、無理矢理奪うつもりはねぇ。
「準備はイイ?」
 10秒数えてから訊くと、「まっ、まっ」って真っ赤な顔で照れられる。
 待って、ってちゃんと言えてねぇのが可愛い。ついでに言うと、「待て」なんて言わねぇで欲しい。

「何もしねーから。ハグだけ。剥ぐだけ」
 服を引き剥がしてぇ衝動を抑えつつ、紳士的に抱き締める。
 告白して以来挙動不審になっちまった三橋だけど、オレの腕ん中でじたじた身じろぎする様子はすげー可愛いままだから、後悔はなかった。

   (終)

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