小説 1−15
時にはちょっと乱暴に・7 (終・R18)
「つるっつるなのに、オトナちんこだな」
阿部君が笑いながら言うのが聞こえた。
そんなつるっつるにしたの、自分のくせに。からかうように言われて、でも自分では見えなくて、恥ずかしさに顔が熱くなる。
「でも、キレーな色だ。未使用っぽいな」
くくっと笑いながら先端を舐めまわされ、「んんっ」と喘ぐ。両手を拘束されてて、身じろぎもできない。快感に耐えようとしてシーツを蹴ると、つぼみをぺろりと舐められた。
「んっ、ぶっ」
色気のない声が漏れ、刺激にびくんと腰が浮く。
「ひくひくしてんな。もう欲しい?」
あからさまな問いに答えらんなくて恥じらってると、「オレも限界」って告げられた。
太ももを舐め上げられ、足の付け根に歯を当てられて、それがどうしようもなく気持ちイイ。噛まれるのはやっぱ怖いけど、痛みの奥には快感があって、そんだけでいっぱい啼かされる。
「は、レン、キレーだ」
タマの裏をくすぐりながら、そこにキスを繰り返す阿部君。キスなら口に欲しいけど、物理的に言えないのがもどかしい。
うまく喋れないのはいつものことだけど、物理的に喋れない、見えない、動けないっていうのは、なんかすごい効果あるみたい。
でも、こうして単純に状況に興奮できるのは、相手が大好きな恋人だから、だ。
他の誰かとなんて想像もしたくないけど、阿部君にだったら襲われたい。
阿部君だって、楽しんでるっぽいのは、これがプレイだからだと思う。サービスっていうのは、どっちに対してのなのかビミョーだけど、オレだってイヤじゃないし、本気で抵抗するつもりない。
お風呂の中でたっぷり洗われた後だったから、後ろをほぐす必要なんてほとんどなかった。呼吸を荒くした阿部君が、オレの両脚を割り開き、性急にローションを塗り込める。
ローションの冷たさも、いつもより余裕のなさそうな準備も、何もかもが刺激になって興奮が止まらない。
いつもの「いいか?」って言葉もなくて、拓かれたそこに滾ったモノが押し当てられる。
ずんっと貫かれる衝撃。「んぶぅ」って残念な喘ぎ声。
「はっ、レンっ」
顔の間近で名前を呼ばれ、ぎゅっと腕に抱き込まれる。
そのままずんずんと与えられる律動。じゅくじゅくに熟れ切った内壁が、固く太いモノに犯されて擦られる。
どこをどうされても気持ちイイ。
身動きできないまま揺さぶられ、快感から逃げられなくて、ぶんぶんと首を振る。
「んんんっ」
残念な嬌声でもいい。もう気にしてる余裕ない。
目が見えないから余計に耳は敏感で、阿部君の色っぽいため息に震えた。
阿部君も気持ちイイ? オレも気持ちイイ。
身動きできないし、縛られてるし、目隠しも猿ぐつわも剃毛も、みっともなくて恥ずかしいけど、どうしようもなく気持ちイイ。
大好きな人に限るけど、レイプ願望ってあるのかも。
「無茶苦茶の、っ、ぐちゃぐちゃにしてぇっ」
荒い息の中で告げられて、悦びにびりびり痺れた。大好き。無茶苦茶のぐちゃぐちゃにして欲しい。もうなってるけど、もっとして欲しい。
もっと、って言いたかったけど言えなくて、「んぶぅ」って猿ぐつわの奥で甘く喘ぐ。
惨めな濁音だけど、それはやっぱり甘えた声音で、感じてるの隠しようがない。
大きな抜き差しで焦らすように擦られるのも、小刻みに奥を突かれるのも、ぐりぐりと捏ね回されるのも、何もかも気持ちよかった。
いつもと同じなのに、いつもより激しい。荒々しくて、それが嬉しい。
「っ、レンっ!」
一際強く名前を呼ばれて、繋がった腰を引き寄せられた。
バンザイの形で拘束された腕が一瞬ピンと張ったけど、舌打ちと共にほどかれる。
左手が自由になって、次に右手が自由になって。その手を阿部君に伸ばすと同時に抱き込まれ、下から深く串刺しにされた。
ぎゅうっと抱き締められ、嬉しくてオレも抱き返す。
対面座位になってるって、見えなくても分かる。阿部君の顔が間近にあるのも分かる。キスしたい。
甘えるように顔を寄せると、ゴチンと頭がぶつかった。
「いてっ」って笑いながら、阿部君が猿ぐつわと目隠しを取ってくれた。よだれまみれの口元のまま、顔を寄せられてキスを交わす。
眩しさに耐えて目を開けると、精悍に笑う阿部君の顔があって、好きって気持ちが込み上げた。
「んっ、しゅきっ」
舌がうまく動かなくて残念な発音になったけど、誤魔化すように顔を伏せて、阿部君の首元に押し付ける。
唇を押し当てて、思いつくままに舐めて噛むと、再びぎゅっと抱き締められた。下からガツンと穿たれて、ぐりぐり奥を攻められる。
「煽んなよ」
怒ったように言われてハッと顔を見ると、いつもよりギラついた視線に射抜かれた。うおっと慄く間もなく、ベッドに押し倒されてのしかかられる。
さっきと同様荒々しく揺さぶられ、あんあんと啼かされた。
熟れた内壁が、快感にきゅうきゅう締まる。
「はあっ」
艶っぽい声を上げつつ、腰の動きを止めない阿部君。オレももう、声が上がるのが止められない。
「あああああ……」
気持ちよさのあまり、勝手にノドから漏れる声。
手足がバラバラと跳ねるくらい、激しく突き上げられ、突き揺すられる。力が抜けてしまった体を、人形のように犯される。
頭の中がどんどん白くなり、気持ちイイってことしか考えらんなくなった。幸せに満たされて、悦びにびくびく震える。
どんくらいイッたかもう分かんない。
乱暴に引き抜かれたけど、喪失感を味わう暇もない。強引に後ろを向かされて、再び貫かれ、みっしりと埋められる。
手足の拘束もないのに、身動きもできない。
目隠しもないのに、目を開けていられない。
ぽっかり開いたまま閉じられない口から、よだれとひしゃげた嬌声が漏れる。
ちょっと乱暴で、でも愛があって、欲しがられて奪われて、でもオレも嬉しくて――無茶苦茶にされてるのに、幸せで嬉しい。
もう、オレ、もうどうなってもいい。
いや、よくないけど、どうなってもいいって思った。それしか今は考えらんない。快感の海に溺れさせられ、息継ぎができなくてはうはうと喘ぐ。
あちこちに付けられた歯型とか、つるつるの股間にパンツ無しで帰んなきゃいけないこととか、自転車に乗れるのかなっていう懸念とか……そんなことは頭から抜けてて。
一緒に住み始めるのは、もうすぐで。
またこういうのしたいなぁって呑気に思ってるオレは、阿部君が色んな扉を開けてしまってたことに、まだ気付いてはいなかった。
(終)
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