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小説 1−15
時にはちょっと乱暴に・6 (R15)
 「剃る!?」って言いたかったけど、猿ぐつわのせいで「ぼばっ」って残念な声しか出せなかった。
 アイマスクのせいで、阿部君がどこにいてどんな顔してるかも分かんない。冗談だと思うけど怖い。
 剃るって、何剃るの? 思い当たるのは髪と股間しかなくて、慌ててひぃっとうずくまる。猿ぐつわのせいで、その悲鳴は不気味な音にしかなんなかったけど、どうでもいい。
 冗談だよね? って訊きたいけどそれすらもできなくて、どうしようって思った。
 さっきまで恥ずかしさで赤くなってた顔から、ざーっと血の気が引いていく。逃げよう。っていうか、これ外そう。
 あわあわとアイマスクに手をやると、「こら」って声と共に、両肩をぽんと叩かれた。
「勝手に取んなよ。縛るぞ」
 怒ったような口調じゃないけど、本気で縛る気だなって何となく分かった。実際さっき縛られたし、ひぃぃっと焦る。
「ほら、ちゃんと座って。股開いて」
 再びぽんぽんと叩かれる両肩。ぐいっとヒザを割られ、ぐいっと両手を掴まれて、頭の後ろで組まされる。

 ちょっと待って、って言いたかったけど、やっぱそれは言葉にはなんなかった。ぶぼぶぼと残念な音を漏らすオレに、ふふっと阿部君がおかしそうに笑う。
「可愛い」
 って。それ、本気で言ってんだろうか? カッと顔を熱くすると、「動くなよ」って頭を優しく撫でられた。
「さあ、しょりしょりしよーな」
 小さい子に言い聞かせるような、優しい声音。くくっと笑ってる阿部君は楽しそうだけど、本気で剃る気なのかなって思うと、ちっともほのぼの気分じゃない。
「ぶぼぶぼ、んんんっ」
 自分でも何言ってるか、もはや分かんなかった。悲鳴にすらならない悲鳴。股間にぷほっと泡が着けられ、太ももの内側に阿部君の手が添えられる。
「ケガすっから、マジ、動くなよ」
 ちょっと真剣な声を出されると、ぴくっとも動くことはできなかった。
 声を上げることもできないくらいの緊張。びくびく怯えてると冷たいモノが下腹に触れ、じょりっと擦られる感触が伝わる。

 ああ、ホントに剃られてる。
 時々当たる剃刀の感触、じょりじょり剃られてる感じに背筋がぞくっとする。怖いけど、それ以上に悲鳴が漏れそうでヤバい。
 阿部君に縋り付きたいのに、両手が動かせなくて困る。
 困るといえば、これどうしよう。誰にも見せられない。当分、銭湯とか行けない。プールも行けない。ゆう君に見られたら絶対爆笑される。そう思うと絶望しかなかった。ヒドイ。
 今が春休みでホントによかったと思った。
 まあ、こんなとこ誰に見せるっていうと恋人の阿部君にしか見せる訳じゃないんだけど、そういう問題じゃない。
「ぶぶう……」
 呻き声を漏らすと、阿部君が剃刀らしき物を一旦外して、ぶはっと笑った。
「お前、笑かすなよ。手元ブレんだろ」
 そう言われても、笑わそうと思って言った訳じゃないし、猿ぐつわしたの阿部君だし、そんな言いがかりはあんまりだと思う。
 ちゅっと口元にキスされたけど、ちっとも慰めにならない。
「言っとくけど、剃らねーとデニムはくとき毛ぇ挟むぞ」
 そんな言葉と共に、剃りかけの陰毛をつんっと引っ張られてビクッとする。

「な、これはお前のためなんだよ。サービスサービス。だから動くなよ」
 くくっと笑いながら、阿部君が再び剃刀を当てる。T字のなのかそうじゃないヤツなのかも、オレからは分かんない。ただ、阿部君が楽しそうなのは分かった。
「お前だって、こういうプレイ、満更じゃねーだろ?」
 つつっと阿部君の指が、オレの竿を撫で、タマを撫でる。タマの裏側をくすぐられ、「んぶっ」って喘ぐと、「ほら」って嬉しそうに言われた。
「おっきくなってんじゃん」
 って。それ、今のでそうなっただけに違いないのに、ヒドイ誤解だ。ぞくぞくはしたけど、そんだけだ。
「ほら、キレーになったぞ」
 ざばっと股間にお湯を掛けられ、また口元にキスされる。
 「すげーエロい」とか、しみじみ言うのやめて欲しい。「いーな、これ」って。真面目な声で言われると、あまりに不穏でドキッとする。
 もうすぐ一緒に住むことになるのに。まさか、今後も剃ろうとか言わない、よね? 今日のこれだけだよね?
「ぶべぶん……」
 阿部君、って呼ぼうとしたけど呼べなくて、心の中だけで「ううう」と嘆く。元から喋るの苦手だし、言おうとしてることもうまく伝えられない方だけど、いつもはここまでじゃないと思う。

 その後は導かれるまま湯船に入り、後ろから抱き込むようにしてお世話してもたれさせてくれたけど、アイマスクも猿ぐつわも外させてはくれなかった。
 バスタオルで優しく体を拭いてくれて、ベッドに連れてってくれる阿部君。
「ノド、乾いてねぇ?」
 優しく問われたけど、それどころじゃなくて、ぶんぶんと首を振る。
「あっ、そう。じゃあ、このままでいーな」
 そう言われて、猿ぐつわ外すチャンスだったことに気付いたけど、しまった、って思ってももう遅い。むぼむぼ言っても「ははっ」って優しく笑われるだけで、あっという間に仰向けに倒された。
 目隠しされたまま、背中向けに倒されるのって結構怖い。ベッドだって分かってても、ひやってする。
 阿部君がどの辺にいるのかもぼんやりとしか分かんない。
「可愛いぜ、レン」
 濡髪を優しく撫でられたけど、ちっともほのぼの落ち着けなかった。

 カシャ、とシャッター音がして、写真撮られてるの分かって怯える。とっさに股間を両手で隠すと、「こら」って優しくたしなめられた。
「悪い手は縛るぞ? つーか、縛られてーのか。仕方ねーな」
「むぼっ」
 縛られたいなんてこと、ないんだけど! そう言いたいのに、全く言えない。猿ぐつわがなくても言えたかどうか分かんない。
 じたじたと起き上がろうとしたけど、「はいはい、いい子にしろって」って苦笑しながらトンと押されて、再びベッドに倒される。
 そうしてる間に片方ずつをどっかに何かで縛られて、バンザイしたような格好でベッドに縛り付けられた。
 何の布なのか、どこに固定するようなモノがあったのか、まったく見えないから分かんない。
「うわ、すげー犯罪臭ぇ……」
 呆れたように呟きながら、カシャッとシャッターを押す阿部君。

「こーいうの好きなのか。早く言えよ」
 ふふっと笑われ、ぶんぶん首を振ったけど、ちっとも伝ってる気がしない。
 犯罪臭い、って。一体どんな格好なんだろう。知りたいと思ったけど、知りたくないっていうか見るのが怖い。
「レン、すげーイイ格好だぜ」
 楽し気に言いながら、阿部君がオレの上にのしかかる。
 覆いかぶさられる気配。優しいキス。「やべぇ」とか時々呟きながら、阿部君の舌が頬や首筋に這わされる。
 最初の時みたいに甘噛みされた時は、思ったより大きな声が出た。
 猿ぐつわのせいで、色気も何もないような悲鳴だったけど、阿部君はそれにも楽し気に笑って、何度も甘噛みを繰り返した。
 耳元を噛まれ、首筋を噛まれ、乳首にも歯を当てられる。

 痛いのギリギリの、絶妙な力加減。片方の乳首をきゅうっと指先でつままれて、もう片方を甘噛みされる。
 痛みの奥に快感があるのは、お風呂の前にさんざん思い知らされたことだ。
「まだ時間あるし、たっぷり遊ぼうな」
 優しい囁きが、どうしよう、不穏なモノにしか思えない。胸から脇、わき腹から腰へと舌を這わされたけど、いつ噛み付かれるかって思うと怖くて、ぞくぞくした。
 股間にも顔を寄せられて、さっき剃られたとこをじょりじょりと舐められる。
「はあ、たまんねぇ……」
 荒い息をつきながら、勃起し始めたモノに食い付かれた時は、ドキンとした。じゅうじゅう音を立ててのフェラ。時々竿にも歯を立てられて、恐怖と快感に訳が分かんなくなってくる。
「んっ、ぶっ」
 相変わらず口から漏れる喘ぎは色気も何もなかったけど、興奮したようにちょっと性急に愛撫されるのは、欲しがられてるみたいでときめいた。

(続く)

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