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小説 1−15
時にはちょっと乱暴に・5 (R15)
 いつの間にか、気絶するように寝てたみたい。
「風呂できたぞ」
 阿部君に肩をポンポン叩かれて目が覚めた。
「うお、オレ……」
 ハッとして起き上がると、「よだれ」って笑いながら指摘された。慌てて口元をぬぐってから、手が自由に動かせるのに気が付いた。ついでに言うと、目隠しもない。
「あ、手っ」
 縛られてたの、取ってくれたみたい。本気での緊縛じゃなくて、ホッとする。けど阿部君は逆の意味に取ったみたいで、「ああ、ワリー」って謝られた。
「濡れたらマズイと思って取っちまった。また後で縛り直してやるよ」
 ポンと頭を撫でられ、ニカッと笑みを向けられて、慌ててぶんぶん首を振る。
「い、い、い、もう、縛んなく、ても」
 首と一緒に両手もぶんぶん振ったけど、「いーからいーから」って言われた。
「これもサービスだから、いーんだよ」

「さ……」
 サービス、って。それはオレに対するサービスなのか、阿部君にとってもサービスなのか、どっちだろう? オレに対するっていうんなら、いらないんだ、けど。
「お、お、オレ、後ろ手は、いら、ない」
 カーッと赤面しつつ本音を言うと、阿部君は意外そうに「はあ?」って目を見開いた。
「ふーん……」
 何かを考えるようにじっと見つめられると、ちょっと不穏。けど、そんなやり取りもすぐに終わって、そのまま風呂に誘われた。
 あれ、って思ったのは、阿部君が下着を脱ぐのを見たからだ。
「あれ、オレ……」
 パンツ、どこやったんだろう?
 べちょべちょでビリビリだし、捨てるしかないパンツだけど、今は身に着けてなくて首をかしげる。
 そしたら阿部君に、「貰っとくな」ってさらっと言われて、ええっと思った。

「も、……えっ?」
「何だよ? もうはけねーし、持って帰っても仕方ねーだろ?」
 真顔で言われると確かにそうかもって思うけど、それを言うなら阿部君だって、持って帰っても仕方ないと思う。
 それとも、捨ててくれるっていう意味、か?
「いーだろ、たっぷりサービスしてやるから」
 ぐいぐいと背中を押され、お風呂に連れ込まれて、それ以上は質問できない。
 さっきさんざん蕩けさせられた体は、まだ半分くらくらしてて、されるがままに洗われる。
 風呂イスに座らされ、たっぷりの泡でねっちり洗われるのはいつものことだ。後ろから抱き込むようにして、オレの胸や腹や脇を撫でるように洗うのが結構好きみたい。
 胸を洗われながら乳輪をこすられ、乳首をいたずらに捏ねられて、「んあっ」と呻く。
「こうされんの、好きだろ?」
 って、耳元で言われても否定できない。

 背中もお尻も、股間も勿論洗われた。大股開きさせられたまま後ろからやわやわと撫でられ、きゅうっと揉まれて、巧みな刺激に腰が跳ねる。
「もうこんなになってんぞ」
 勃起したサオを指先でなぞりながら、嬉し気にささやく阿部君。泡のぬめりを借りてゆるゆる擦られ、たちまち射精感が込み上げる。
「ひゃっ、待っ……」
 待って、って言うよりも、追い上げられる方が早かった。「ああっ」と声を上げさせられ、放出感と共に頭が真っ白にスパークする。
 これでオレ、イクの何回目だろう? 射精しないでドライで達したのを入れると、もう覚えてなくて恥ずかしい。
「阿部君……」
 恥じ入りながら振り向いて、大好きな恋人に抱き着く。キスをねだるとちゃんと答えてくれる阿部君はやっぱり優しい。
 キスの間も胸や腰を撫でられて、心地よい快感にうっとりする。
「好き……」
 うひっ、と笑いながら呟くと、阿部君もオレを見つめて優しく笑って――それから、「あっ」と何かに気付いたように顔を上げた。

「ワリー、忘れてたわ」
 そんな言葉と共に、阿部君が一旦風呂場から出てく。
 一体何を忘れたんだろう? 不思議に思いながら待ってると、間もなく彼が、さっきのアイマスクとボールギャグとを持ってきた。
「レン、目隠しと猿ぐつわ、どっちにする?」
 いい笑顔での質問に、さっきまでのほんわかな気持ちが霧散する。
 えっ、さっきので終わりじゃなかったの? 目隠し、外して終わりじゃない、の?
「ど、どっちも、オレ」
 いらない、と口に出すより早く、食い気味に「どっちもね、OK」って言われてあわあわと慌てる。
「いやっ、オレっ」
 自由な両手を突っ張ってみたけど、あっという間に後ろに回られ、サッとアイマスクを着けられた。

 たちまち真っ暗にされる視界。今は両手は自由だけど、「動くなよ」って言われると、勝手に外すこともできない。
「あーんして」
 って、耳元で甘く囁くのズルいと思う。
「う、でも……」
「いーから、ほら。あーん」
 甘く優しく促され、ためらいつつも口を開く。この後着けさせられるのは、SMチックなアレだって分かってるのに逆らえない。嫌われたくないとかそういうんじゃないけど、強引に拒絶したくない。
 結局、オレも心の底ではこういうの、望んでたんだろうか?
 まさかぁ、って否定したい気持ちと、これからどうされちゃうんだろうって期待とが混じり合い、ドキドキがどんどん強くなる。
 いつでも外せる、けど、外さないっていうの、なんかスゴイ誘惑、だ。
「いい子だな。足開いて、可愛いとこ見せて」
 頬にちゅっとキスされて、言われるままにおずおずと足を開いてみる。とんでもなく恥ずかしい格好だと思うのに、見えないからまだちょっと平気。平気だけど、恥ずかしい。

 今、顔が真っ赤になってるの、自分でも分かる。
 まだ湯船に浸かってもないのに、のぼせたようにくらくらした。
「オレが体洗い終わるまで、そのままな」
 残酷な命令に「う、え」と文句を言ったけど、口に含まされた猿ぐつわのせいで「む、ぐ」って音にしかならなかった。
 せめても自由な両手を動かし、大股開きの股間を隠す。
 ついでに足もちょっとだけ閉じたけど、阿部君は「あっ」って言いつつ、怒ったりはしなかった。
「隠すなよ。……まあいーけど、そうすっと余計にエロいぞ」
 ちょっと離れた位置から、阿部君がくくっと笑うのが聞こえる。
 きっと体を洗ってるんだろう。シャワーの水音も聞こえてるけど、風呂場に反響してイマイチ居場所が分かんない。
 オレの頭の上からもシャワーのお湯が掛けられて、見えない刺激にぞくぞくする。
「さあ、じゃあ」
 阿部君がそう言って、シャワーを止めた時はホッとした。てっきり、「じゃあ湯船に浸かろうか」って言われるんだと思ってた。けど。

「剃るか」
 阿部君が口に出したのは、そんな不穏な言葉だった。

(続く)

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