小説 1−15
時にはちょっと乱暴に・2 (R15)
噛まれた瞬間、「あああっ」て変な声が出た。
痛いのの寸前っていうか、甘噛みって言うか、絶妙な強さでの噛み付き。やわやわと噛まれ、べろべろと舐められ、振りほどこうにも身動き取れない。
なんで噛み付き? って、訊きたいけと訊けない。ようやくやめてくれたかと思ったら、すかさず肩を押されてベッドに突き倒される。
こんな乱暴に、ベッドに倒されたのは初めてで、ぞくっとした。
覆いかぶさって来た阿部君が、服の上からオレの体をあちこちまさぐる。胸に触れ、腰に触れ、腰から足を撫で下ろして……すごく雑な手つきなのに、なんでかすごくドキドキした。
「はっ、もう感じてんの?」
ニヤリと笑いながら、阿部君がオレの股間をきゅうっと掴む。
「ひゃっ、あっ」
びくっとヒザを跳ね上げると、更に追い打ちをかけるようにきゅうきゅう揉まれる。
そんなことされるの初めてだ。反射的に体を丸め、抵抗しようとしたけど許しては貰えない。
「や、あっ」
じたじた暴れようとしたら、ふふっと真上で笑われた。
「ヤダっつってもやめねぇって言っただろ」
そう言われると確かにそうで、反論できない。すごく嬉しそうに見下ろされ、カーッと顔が熱くなる。
「それに、ホントはイヤじゃねーんだよな?」
オレの両手を顔の横に押し付けて、ニヤッと笑いながらキスする阿部君。
彼の言う通り、ホントにイヤって訳じゃないから、これにも反論できなくて困る。恥ずかしすぎて「うん」なんて言えないけど、首を横にも振れなくて、ほとんど肯定してるのと同じだ。
これも、ゆう君に聞いたのかな?
ゆう君、なんて阿部君に説明したんだろう?
両手を拘束されたままのキス。深く短いキスの後、アゴの下を舐め上げられ、耳元を舐められる。
耳たぶを噛まれた瞬間にも、「ひあっ」と悲鳴が漏れた。
「あっ、やっ、噛んじゃ、あああっ」
痛く感じる寸前の、絶妙な甘噛み。くちゅりと舐められ、耳の穴に舌を差し込まれ、ぞくぞくが止まらない。
「ふ、んんっ」
上ずった声が口から漏れたけど、両手はベッドに縫い付けられたままで、口元を覆うこともできない。阿部君を押しのけることも、耳を庇うこともできなくて、身動き取れずになぶられる。
「耳だけでイキそう?」
「そ、み、……っ」
そんな訳ないでしょー、とか、耳もうやめて、とか、言いたいこといっぱいあり過ぎて言葉にならない。
荒くなった息をはふはふ吐いてると、「じゃ、こっちも」って反対側を向かされた。
同時に手の拘束も解けたけど、だからって抵抗できる訳じゃない。反対側の耳をしゃぶられ、甘噛みされ、べろべろと舐められて「んんっ」とうめく。
やがて耳攻めが終わった頃には、ぼうっとして何も考えらんなくなりかけてた。
まだ服だって脱がされてないのに、こんな風になるなんて初めてでヤバい。
「興奮してんじゃん」
そんな言葉と共に、ふたたび股間に触れて来る彼の手。
デニムの股間がみっしりキツくて、ビンビンに勃起してるの自分でも分かる。いま触られたらヤバいのも分かる。
「やっ、で、出ちゃう」
必死になって腰を引くと、「いーじゃん」って笑われた。
「パンツ汚したら、ノーパンで帰りゃいーだろ」
「のっ……!」
ノーパン、って恐ろしい単語にビクッとして、ビンビンだったモノがちょっと萎える。
助かった。いや、助かった、のか?
「ノーパンか、いいかもな……」
真面目に考え出してる風な、阿部君のノリの良さが怖い。ノーパンも怖い。えっ、デニムははいてもいいんだよね?
もしデニムも何もはかないでノーパンでってことなら、ヤバい。恥ずかしいし、それに、警察呼ばれちゃうかも。逮捕、されるかも。
卒業間際なのに、こんなことでニュースとかなるの怖すぎる。
けど、デニムはけばいいかっていうと、そういう事じゃないハズ、だ。生地だってゴワゴワだし、股間のファスナーも怖い。もし挟まったら、って思うとひゅんとなる。
ノーパン、いやだ。そう思ってると、デニムのベルトを外される気配がして、ひぃっとビビった。
「ひゃっ、やっ、ノーパン、はっ」
「ノーパンがイヤなら脱がねーと」
じたじた暴れかけたけど、そう言われれば確かにそう、かも、知れない。
腰を浮かせて自分からもデニムを下ろし、ついでに恥ずかしいけどパンツも下ろす。けど、それは途中で阿部君の手に止められた。
「脱ぐんなら上から脱げよ」
腕を掴まれ引き起こされて、背中越しに抱き寄せられる。阿部君のヒザの間に座らされ、服越しにまた胸とか腰とかを触られた。
厚手の綿シャツの生地の上から、ない胸をきゅうっと揉まれる。
「やっ」
痛みにビクッとすると、「早く脱いで」って促される。
阿部君の声はすごく甘い。後ろから耳元にキスされて、「耳、やあっ」って悲鳴を上げる。
「早く脱がねーからだろ」
って、そう言うなら邪魔しないで欲しい。服の下に手のひらを這わせて、あちこち撫でるのもやめて欲しい。
その反面、やめないで欲しいとも思ってて、恥ずかしいけど嬉しい。
憧れてた強引なのとは違うけど、いきなり無理矢理にされるのもどうかと思うし、これくらいでいいの、かも。
震え始めた手で1個1個小さなボタンを外しつつ、撫でられる感触に息を弾ませる。
「阿部、君……」
肩越しに振り向いて「好き」って告げると、「オレも」ってぎゅうっと抱き締められた。
「今日は思いっきりサービスしてやっから」
そう告げられてキスされて、脱ぎかけた服をはぎ取られる。
服を脱がす仕草1つも、いつもよりちょっぴり強引で、ドキドキした。好きって気持ちがぶわっと溢れて、さっき萎えた股間が漲る。
「嬉しい……」
大好きな阿部君からのサービス、嬉しい。
うへっと笑いながら気持ちを告げると、阿部君も嬉しそうに笑ってて――でも、和やかなのは、ここまでだった。
(続く)
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