小説 2
3 確認 (R18)
昼間、廉が言った事を、オレは確かめずにはいらんねー。
覚えている、と廉は言った。毎晩オレに抱かれたことを。
「廉、なあ、聞かせて」
仰向けに組み敷いて乱れさせた後、息も絶え絶えの廉に、上から問う。
「初めてのとき、覚えてんの?」
両脚を曲げさせ、胸に付くまで押してやれば、廉の恥部が完全に上を向く。体重をかけて上から貫き、ゆっくりと揺すると、廉がいやいやと首を振った。
答えるどころか、声も上げらんねーみたいで、唇がはくはくと開く。ぎゅっと瞑った目のせいで、眉間にしわが寄ってんの。
シーツに突いた手足に力を入れて、腰の抜き差しを大きくすると、腕の隙間で廉がもがいた。
「ああっ」
抑えきれない悲鳴がもれる。
「しーっ」
耳元でたしなめてやると、恥じらいながら、薄目を開けた。
ホントは別に、声なんか気にしねーけど。誰に聞かれたっていいし、むしろ、みんなに廉の、この色っぽい声を聞かしてやりてーぐらいだけど。
でも廉が、「静かにしろよ」って言われて、懸命に声を耐える表情とか、もうたまんなく好きなんだ。
「なあ、廉、答えて」
オレは廉を、繋がったまま抱き起こし、ひざの上に座らせた。
オレに揺すられるまま、ガクガクと上体を振るわせる廉は、孵化する前……大統領就任式典の夜に見せたのと、同じ顔をしてるように見える。
あの時廉は、オレを「シュ」と呼んだ。オレに抱かれながら、色の混じった声を出した。
なあ、あれってオレの勘違いじゃねーんだよな?
お前、オレに何されてるか、ちゃんと分かってたんだよな?
嬉しい、嬉しいよ、廉。
オレは廉に口接けた。快感に開く口に舌をねじ込めば、応えるように吸い付いてくる。甘い唾液。ぬるい吐息。
「自分で動きな」
オレに言われて、廉がひざにキュッと力を入れる。おずおずと上下する腰。オレの肩にかけた手が、ふるふると震えてる。
はあはあと呼吸する口。赤い舌がちろちろ揺れ、言葉にならない音を刻む。時々漏れるかすかな声は、あからさまに悦んでいた。
快感を追うのが恥ずかしいのか、オレと目を合わせねー。けど、漏れる声が、だんだんむせび泣きに変わってきて、オレの胸を衝動で満たす。
「廉!」
腰を掴んで、突き上げる。廉が腰を落とす動きと、オレが下から迎え打つ動きと。二つが重なって、奥の奥まで拓かれていく。廉の白い喉が仰け反る。
「廉、答えは?」
覚えてるなら、教えて欲しい。
最初のとき、どうだったか。
抱かれ続けて、どうだったか。
今、どう思ってんのか。
オレに揺らされながら、廉が言った。
「わ、かん、ない」
「わかんないって、何、それ?」
抜き差しを強く、早くする。肩に縋る廉の体が、ぐらぐらと大きく揺れて仰け反る。
もう座ってもらんねーのか?
背中を支えて、仰向けに横たえる。そのまま強く早く揺さぶる。もうイヤイヤもできねーで、廉がわなないて射精する。ぬるい粘液が胸に飛び散る。
「何がわかんねーんだよ」
オレは問い詰めながら、廉の体を無茶苦茶に責めた。力を失った両手足が、シーツの上でばらばらと跳ねた。迫り来る、快感。白いものがこみ上げ、脳内に飛び散る。
「……はっ」
オレの放った精を、体の奥で受けながら、廉がぼんやりと呟いた。
「もう、何もわかんない、よ」
そして、意識を失った。
翌日、珍しく朝から扉をノックされた。
オレも廉も、一糸纏わぬ姿でまどろんでいたけど、召使は相変わらず無表情で、部屋に湯を運び入れた。
「お休みのところ、申し訳ございません、殿下」
「あー?」
オレが不機嫌に返事すると、召使は言った。
「朝礼にお越し下さるようにと、承ってございます」
「はあー?」
朝礼? なんだそりゃ。メンドクセー。
「行かなきゃなんねーのか?」
オレの問いに召使は答えず、深々と頭を下げた。
「湯浴みの用意をしてございます。どうぞお使い下さいませ。その後で、お召し換えを」
指し示された、二人分の正装に、オレは大きく舌打ちをした。
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