小説 2
4 夜行 (前半R18)
テントの中で寝るのは、いくら毛布や布団を重ねたって、ベッドと違ってやっぱり痛ぇ。
下にして揺すったら廉の背中が痛ぇだろうと思って、オレが下になったんだが、背中も腰も痛ぇ。けど、オレの上に乗っかって、切なそうに動いてる廉は、痛さも吹っ飛ぶくらい色っぽかった。
オレは両腕を頭の下で組み、毛布の上に横になって、廉の様子をじっと見てた。
オレに貫かれて、オレの思うままに揺さぶられて喘ぐ廉もいいが、自分から自分の良いようにして、腰をくねらせる廉もいい。
けど、廉に任せると、まどろっこしくて仕方ねぇ。
「なあ、廉」
オレは下から腰を動かし、軽く揺らした。
「もっと激しく動けよ」
「あ、んん。隆也、ダメっ」
廉が小さく文句を言った。
「オレは、隆也が中にいるだけ、で、幸せだ、よ」
目を伏せて、照れ臭そうにそんな可愛いことを言われたら、余計に血の気が上がっちまう。
「くそっ」
オレは腹筋使って起き上がり、廉の背を抱えて、繋がったまま押し倒した。
「あっ、隆也っ」
抗議されても、もう遅い。
「あっ、あっ、あっ、ダメ、だってば、もっと……」
「もっと激しく、か?」
お望みどおり、激しくしてやる。
「違っ、もっと、ゆっくりっ」
その望みには応えらんねぇ。
逆に抜き差しを大きく大きくしてやると、廉のいいとこを強くこするようで、無我夢中で叫んでる。
「だめぇ、だめぇっ、ああ、だめぇっ。ゆっくりが、いい、よぉ」
「オレは、やなんだ、よっ」
言いながら、激しく、早くなる。廉の声も大きくなる。
「しぃっ、声が大きいぞ」
今更なことを意地悪く言って、廉の文句を封じると、ことさら強く打ち付けた。
散々啼かされた廉が、ふくれっ面でそっぽを向いた。オレは毛布の上で片ひじを突いて寝っ転がり、笑いながら廉をなだめた。
「悪かったって」
「悪いと、思ってない、でしょ?」
「うん、だってお前が悪いもん。オレを本気にさせるようなコト言うから」
廉は顔を赤らめ、目も眉も吊り上げて、オレの胸をぽかぽか殴った。力入れてなくても、結構痛ぇ。
「直姫のマネ?」
手首を掴まえ、引き寄せて組み伏せる。
「んん……」
キスして顔を覗いたら、眉だけが下がってた。
「2回目、行っとく?」
囁いて、また唇を重ねた時………召使が、声を掛けた。
「失礼します、殿下。副隊長殿がお呼びです」
「あー、解った」
オレはため息をついて、もっかい軽くキスをした。
簡単に服を調えて、廉と一緒に外に出ると、テントの側で、副隊長が待っていた。
「お休みのところ、お呼びだてして申し訳ありません、殿下」
「いや、いーけど。何?」
「実は………」
副隊長は声を抑え、テント群から離れるよう、オレ達に促した。焚き火の横を通り抜け、周囲を守る夜番の兵士に近付いていく。
そして、小声で言った。
「場所を移動しなければならないかも知れません」
「場所って、テントのか? 何で今頃?」
寝てる奴らをたたき起こして、テントをしまって、また移動して……か? そりゃ徹夜作業だろ。下手すっと寝られねーぞ。
兵士の一人が、オレ達に敬礼した。
副隊長は、その奥の闇を指差し、深刻そうに言った。
「ヒョウが何頭か、うろついてるらしいのです」
「ヒョウ?」
オレは、へえ、と思った。ヒョウなんて肉食獣、実際に見るのは初めてだ。
「夜行性か?」
オレの問いに、副隊長は「はい」と答えた。
「体はそう大きくないので、普通は小動物を獲物にしていて、人間には近寄らないハズなのです。単独行動が多くて、群れる事だってないハズなのですが」
「あー、そうか」
オレは微笑んだ。
「何でか理由、分かんねーのか?」
副隊長も、横にいる兵士も、真剣に首を振った。オレと廉が笑ってるのを見て、心なしかムッとしてるようにも思える。
仕方ない、安心させてやるか。
「あのな、オレ達に挨拶すんのは、馬やラクダばっかりじゃねーんだよ」
オレ達は連れ立って、暗闇の方へゆっくりと歩いた。
「殿下っ!?」
副隊長が驚いて声を掛けるが、後ろ手を振って、そのまま進む。
やがて、数頭のヒョウが現れた。上空を飛び交ってたフクロウ達も、地面に降りた。他にも、小さなネズミの仲間や、ちょっと大きめの山猫なんかが、オレ達の周りに集まった。そして頭を下げた。廉はいつものように、右手を挙げて礼に応えた。
「そういや、孵化してから初めてだよな、こんな夜遅くに外にいんのってさ」
オレは夜行動物達を追い払い、廉の顔を見て言った。廉の琥珀の瞳は、焚き火の光を映して、金色に輝いていた。
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