小説 1−9
欲求不満解消のススメ・中編 (R15)
朝勃ちのついでに、って思ったこともあったけど、布団の中でぐずぐずしてるとすぐに阿部君が起こしに来るからムリだった。
鍵を掛けると、不愉快そうに「なんで鍵掛けんだよ?」って言われるし。鍵を掛けないと、「メシだぞ」って乱入されるし。時間もないし、朝はムリだ。
布団の中でそっと触ってる時、乱入されて布団を剥がされたこともある。
慌ててうずくまって誤魔化したけど、お母さんじゃないんだから、そんな起こし方はやめて欲しい。
不発のままトイレに籠っても、便座に腰を落ち着ける間もなくコンコンコンとノックされて、「代わってくれ」って言われたりする。
うう、やっぱりトイレで抜くのはムリ、だよ、ね。
「長いなぁ、下痢か?」とか言われるのも恥ずかしいし、狭いだけにニオイとかも心配だし、何より落ち着かない。ナースさんをトイレに持ち込むのも抵抗ある。
落ち着くって言ったら、やっぱり自分の部屋だろう。
チャンスは、うかがってるとすぐに来た。一番風呂は苦手だっていって、いつもオレの後に入りたがる阿部君が、珍しく先にお風呂に行ったんだ。
阿部君はお風呂、そんなに長湯しない方みたいだけど、髪を乾かしたりもあるだろうし、多少はのんびりできるだろう。
さっそく部屋に鍵をかけ、ティッシュとナースさんを用意して、ズボンの前をくつろげる。
ナースさんの可愛い姿を見るまでもなく、オレの股間はビンビンで、ようやく抜けると思うと待ちきれなかった。
長く楽しむような余裕もない。右手で竿を握り込み、いつもの調子でしごいてく。
ゆっくり高まる射精感。
その先にある解放を求めて、どんどんピッチが速くなる。
「ん……ふっ」
声を漏らしながら、もっともっとって追い上げて。けど。
コンコンコンコン。
「三橋、上がったぞ! 次、行けよ!」
無粋なノックと共にガチャッとドアノブを回されて、飛び上がるくらい驚いた。
ウソ、まだ5分も経ってなくない? いくら何でも早くない?
「おい、鍵掛けんなって。何やってんだよ?」
コンコンコンコン。容赦ないノックとドアノブをガチャガチャさせる音が連続で響くと、もう落ち着いてはいられない。
こんな時、無視できるくらい度胸があればいいんだろう。
田島君ならきっと、「ちょっと待てよ、いいとこなんだからさー」って、あっけらかんと言うんだろう。
けど、オレにそんな開き直り、到底無理だ。
「三橋、寝てんのか?」
コンコンコン。
阿部君のノックは、返事するまで終わらない。
「お、起きてる、よー」
ベッドから降り、服を整えながらそう言うと、ようやくノック攻撃が終わった。
代わりに「じゃあ早く開けろ」って声が聞こえて来て、追い立てられるように支度する。
お預けくらったままの股間は、抗議するみたいに完勃ちのままで、仕方なく着替えを丸めて押し当てとくことにした。
内鍵を回してドアを開け、阿部君を押しのけるように部屋を出る。
「風呂も行ってねーのに、寝んなよな」
叱るような口調に「ごめん」って言いつつ、頭も股間も、もう出すことしか考えられない。
「お風呂、行く」
キッパリと宣言して、股間のふくらみを押さえつつ、できるだけ自然に見えるよう、お風呂場に向かった。
いつもはもたつく脱衣も、人生最速ってくらい早かったと思う。
ババッと服を脱ぎ、洗濯機に放り込んで、全裸で浴室の中に入った。ザバザバと掛け湯した後、さっきの続きにドキドキ胸を弾ませる。
ナースさんはいないけど、もうあんま必要なかった。
頭の中に、ミニスカ白衣のきわどいラインを思い浮かべて右手に熱棒を握り込む。
快感が背筋を這い上り、間もなくゴールが見えてきた。
もうちょっと、後少し。右手の動きを大きく早く、容赦なくどんどん追い詰める。
「ん……っ」
イク。
そう思った時、だ。
「三橋ィ」
阿部君の声がガラス戸の向こうから聞こえて、ガチャッと戸が開けられた。
うわっ、と思ってももう遅い。
「あっ」
溜めに溜めた濃厚な白濁が、びゅっと噴射されて飛び散った。
がくんとエンスト起こしたみたいに呆然として、数秒後、ゆっくりと意識がクリアになっていく。
「お前……」
阿部君が、呆れたような低い声で言った。
その手には、大事なナースさんの本があって、ドキッとしてカーッと赤面する。
何の言い訳もできない状況。飛び散った精液をシャワーで流さなきゃって思うのに、腰が抜けて立ち上がれない。
「なんだお前、溜まってたのか?」
阿部君が、ふっと笑った。
「そうならそうと言えよな」
って、そう言われたって、相談できるようなことじゃない。っていうか、ほとんど阿部君のせい、だ。
口答えできなくて黙ってると、「まだ溜まってそうだな」って股間に目を向けられた。
そこは阿部君の言う通り、まだビンビンに勃起したままで。
全然満足してなくて。
「仕方ねぇ、手伝ってやるよ」
服をバッと脱いだ阿部君に、にっこり笑いながら言われて浴室に踏み込まれても、とっさに反論できなかった。
「な、ななななな、何?」
全裸になった阿部君に後ろから抱き付かれ、焦ってももう遅い。脇からにゅっと伸びた太い右手が、オレの陰茎を握り込む。
「ちょっ、待っ……ああっ」
自分とは違う手、違う強さ、違うリズムでこすられて、快感の嵐に溺れそうになった。
裏筋、カリ首、敏感な尿道口まで刺激され、あられもない声が出る。
「ああ、んんっ、やぁっ」
悲鳴を上げても、勿論やめて貰えない。抵抗することも、逃げることもできない。必死でその手に縋り付き、狂暴な快感に息を詰める。
2回目の射精は、さっきよりも遅くて。阿部君の腕の中でさんざん悶えさせられた。
(続く)
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