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小説 1−9
欲求不満解消のススメ・前編 (大学生・付き合ってない・自慰・R15)
 部屋に鍵をかけ、心を落ち着けてオカズに使う本を用意する。
 ティッシュとゴミ箱を近くに置いて、ベッドに座り、パジャマのズボンごと下着を少し引き下ろす。
 本の中のナースさんを見るまでもなく、ソコはとうにビンビンだ。日頃の欲求不満を解消すべく、右手でそっと握り込む。
 こういうコトに使うのは、エロDVDよりもエロ本がいい。
 田島君は、声とか動きとかがクルって言って、すっかり動画派になったけど、オレが鈍くさいからか、動画の展開の早さには、ちょっとついていけないとこがある。
 抜くどころじゃなく終わっちゃうときもあるし。田島君が言うみたいに、イイトコでストップしたり、もっかいっていうトコでリピートしたりって、もたついちゃってすんなりはできない。
 それになんか、追い立てられてるみたいな気、する。
 女優さんの喘ぎ声とか、早く早くって言われてるみたいで、落ち着かないっていうか……こういうの気にし過ぎ、かな?
 その点、写真は自分のペースで眺められるし、ページもめくれる。
 ナースさんの表情もキレイだし、早く早くって言わないし、うん、オレ、やっぱり写真が好きだ。

 ……阿部君はどうなんだろう?
 右手をゆっくり上下しながら、鍵をかけたドアを見る。
 先月からルームシェアを始めた同居人だけど、阿部君の好みについては聞いてない。前に高校の時、みんなでそういうの話してた時は、「何でもいい」って言ってたっけ?
 その時その時に手に入るモノでって。じゃあ、動画でも写真でもこだわりはない、のか、な?
 オレと一緒に暮らし始めて……困らないんだろうか?
 オレはちょっと落ち着かないんだけど。阿部君はそういうの気にしないのかな?

 はあ、と熱い息を吐きながら、右手の動きを早くする。
 込み上げる快感。
 写真の中のナースさんの太ももの、むっちりした触り心地を妄想する。
 先端を触ると、背筋からびくびく震えた。
「ん……っ」
 声を殺しながら、自分のペースで追い上げる。もうちょっと。もうちょっと。絶頂の予感に息を詰めた時――。

 コンコンコンコン。
「三橋!」

 ノックの音と共に、阿部君が声を掛けて来た。
 ガチャッとノブを回されて、ドキッと心臓が跳ね上がる。鍵を掛けてるから大丈夫。大丈夫だとは思うけど。
「三橋、何やってんだ? ちょっと用があんだけど」
 コンコンコンコン。
 容赦ないノックの音を聞かされると、すっかりその気も失せてしまう。急激に萎えるって程じゃないけど、続ける気分でもなくなって、オレはずらしてた服を元に戻した。
 ティッシュを適当な場所に置き、エロ本を布団の下に隠す。
「……な、に?」
 ためらいながら鍵を開けると、ドアがバッと開けられた。じろじろと部屋の中を見られてる気もするけど、ちょっと気まずくて追及できない。

 布団めくられても困るから、オレは阿部君を押し出すように部屋を出た。
 ぎゅん勃ちだった股間はすっかり萎えて、パジャマの上からも目立たない。もじもじと黙ってると、責めるように言われた。
「起きてんじゃねーか。なに鍵かけてんだよ?」
「うお、ごめん」
 反射的に謝ったけど、別に謝る事じゃない、よね? モヤモヤが腰のあたりにわだかまって、心も体もスッキリ爽快に程遠い。
 ルームシェアを始めて1ヶ月、大体こんな感じでひとりになれる時間がないんだ、けど。
 阿部君は、一体いつ抜いてるんだろう?
 それとも手早くぴゅぴゅっと抜けちゃうくらい、お手軽で早い、のか?

 オレの大事な時間を邪魔した割に、阿部君がオレを呼んだ「用事」って、ちっとも重要なことじゃなかった。
「なあ、ケータイ新しくしようと思うんだけど、一緒にカタログ見てくんねぇ?」
 って。
 それ、今じゃなきゃダメだった? 心の中だけで文句を言って、阿部君に勧められるままリビングに座り、新機種のカタログを見比べる。
 画素がどうとかスペックがどうとか、ハッキリ言ってよく分かんないし、興味ない。阿部君が語るのも耳にはちっとも入んなくて、その内眠くなってきた。
「寝るか」
 って言われる頃には、オレはもうまぶたが半分閉じかけてて――再トライって気分にもなれなかった。

 精液って、どんくらいまで溜めれるんだっけ? 精子は確か、使えば使った分作られるらしいけど、溜めすぎはよくないから、勝手に出されちゃうん、だよ、ね?
 その内夢精とかしちゃいそうで怖い。
 パンツ洗ってるとこ、もし阿部君に見られたらって、考えただけで恥ずかしさに震える。
 ハタチにもなって夢精するとか、別に珍しくはないの、かな?
 思い余って夢精について調べると、予防のためには寝る前にトイレに行って膀胱を空にしておくことと、定期的に抜いとくことが大事みたい。
 でもその定期的っていうのが、今のオレには難しい。
 高校時代、親と一緒に住んでた時より、気を遣うって何か変だ。
 鍵をかけてた時点で、男同士なら、察して欲しいんだけど……ちゃんと言わなきゃダメなのかな? 「オレ、今抜いてるから、後にして」って? それはムリだ。
 ムリだけど、このままじゃ欲求不満は溜まってく一方で、どうしようかなって悩んでる。

 そんで、思うんだ。阿部君はどうしてるんだろう、って。
 部屋じゃないなら、お風呂とかトイレ、かな? 共有スペースでそういうコトするの抵抗あったんだ、けど。この先どうすればいいんだろう?

(続く)

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あきゅろす。
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