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蛙。(雲←骸→綱)










かわず飛び込む水の音。


波紋が広がる水面に映るは悠久の空。
行き場無き想いのかわずはとこしえの闇に飲まれていつしか死に絶える。
悲しい結末は本人次第で、結局は自ら闇に飛び込むかわずが馬鹿なのだ。
水面に映る悠久の空を光と見間違え、飛び込む先は闇だと知らずにまたひとつ。
大空へ飛びたったつもりのかわずは水中の闇へと沈み死に絶えた。






「あなたは空ではなかったのですね。」



水面に映る偽りの空。
それに身を投じた僕が馬鹿なのだ。
自虐的な言葉の連鎖。
自ら生み出す闇に飲まれた哀れなかわず。
泥沼だ。
その泥沼に住むかわずには、清き水に映し出された空はまさに空だった。
(恋い焦がれ、追い求めていた大空に見えたのです。)




「もういっそ、僕には入水自殺がお似合いですかね。」



かわずは笑った。
水面も笑った。
水面は雲雀恭弥だった。

水面は言う。
僕に何を求めたの?
僕は確かに洗礼された清き水でも、そこに空なんかありやしないよ。
水面に映し出された空は、空であって空じゃない。空の仮面を被った深い闇さ。水面に沈みたいのなら君の勝手だ。
僕に溺れにくればいい。
僕の深く冷たい冷水の胸に、愚かなかわずの如く飛び込めばいい。


こうして水面はかわずを一生誘い続けるのだ。
その洗礼された水面に映し出された上っ面の空を見せびらかしながら、おいでおいでと手を招く。
蓮の葉の上に行き場なく佇むかわずを水中の闇へと誘い込み。
空を飛べないかわずは空に焦がれて、跳ねても跳ねても届きやしないそこに思いを馳せて。

(しかし結局僕は、空に憧れながらも水面が必要な中途半端な両生類。)



「愛しています。雲雀恭弥も沢田綱吉も。」
「空は君を愛しちゃいないけどね。」
「水面も僕など愛しちゃいないのでしょう?けれど、僕には水が必要です。そして空にも焦がれます。」



「馬鹿な蛙。」

「馬鹿なのです。僕は中途半端な両生類です。馬鹿な蛙は水面に映る空に溺れて、死に絶えましょう。」







あなたに溺れて死に絶えましょう。
僕は馬鹿な両生類だ。
いつまでも、あなたの表面に映し出される偽りの大空に恋い焦がれながら、あなたの胸に沈みます。













蛙飛び込む水の音。

冷たい水に身を沈め
いつまでも
いつまでも
幾度となく死ぬのです。
















(いつか大空が手を差し伸べてくれることを、この暗く冷たい水の底で夢見ながら。)













浅き夢みし

酔ひもせす。









END


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2009 0402
森野夕








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