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クラウン・クラウンに因って出来た傷が、視界に入り息苦しくなる。

あの時の自分は−−−。

クラウン・クラウンが刺さってからの記憶はひどく曖昧で。

神田の言葉がなかったらどうなっていただろうか。

ふと訪れる暗闇に時々視界が沈む。


マナ…


締め付けられるように胸に痛みが走る。

怪我ではなく内側から。




  ネェ  ボクハダレ?











「おい」
「え?」

思考に耽っていたのを神田の一言で戻される。

視線をさ迷わせると神田の真っすぐな黒曜石の瞳に射ぬかれた。

「あ、?何…?」
「…痛むのか?」

強い瞳にふと影がよぎる。

「え、あ、…少し、でも怪我ならいつか治りますし…」
「違う」

大丈夫と続きかけた言葉は遮られた。
神田が何がいいたいのか分からず首を傾げると、綺麗な指が伸ばされさらりと前髪を撫で上げられた。

「んな面して…」

神田がギリッと奥歯を噛む。

神田がひどく怒っているのがわかったが理由がわからなくてどうすることも出来ずアレンはただ見つめることしか出来なかった。

「こんなときまで無理に笑ってんじゃねぇよ」

トン、と神田の右人差し指が触れたのは左の心臓の上。

「傷は塞がってもココの疵は塞がんねぇだろうが」
「あ…」

心配、してくれてたのだ…。

怪我は勿論、自身のイノセンスに刺されたさいの心の疵を−。








「……自分がひどく曖昧なんですよね…」

マナの事は言えない。
神田は巻き込むわけにはいかないから。

ぽつりぽつり、話した。言葉を選びながら。慎重に−。




「−−−…で、僕は僕の道を歩いていたつもりなんですけど、それがすべて違う人のものだった気がしたんです」
「…相変わらずテメェは考えても仕方ねぇことをぐだぐだ考えやがって」
「…その言い方、身も蓋もないじゃないですか」
「…誰かわからなくなるなら何度でも呼んでやるよ、モヤシ。お前はモヤシだ」
「だから!誰がモヤシですか、誰が!」

眉を吊り上げて怒れば神田の唇が小さく弧を描く。
ひどくわかりずらくではあったけれど。

一応、慰めてくれた、のかな?

「か「ここですか、アレン・ウォーカー!」」

呼ぼうとした名は叩かれるドアの音と声に掻き消された。

ドアをちらりと一瞥した神田はめんどくさそうに溜息をついた後手早く綿花等を片付けドアへと向かった。

「いくぞ、−…   」
「え?」

神田の最後の呟きはあまりにも小さく、聞き直そうとした時にはすでにドアの外へと出た後で。

「あ、神田待って!」

慌てて叫ぶが僕はリンクに捕まり、彼の背中はどんどん離れていく。

「ウォーカー、また君は勝手にいなくなって!」

リンクの言葉を遠くに聞きながらアレンは神田の言葉を思い出す。

本当になんて不器用なんだ。

自分の希望も大分入ってはいるがきっと彼は、本当に自分をいつでも呼んでくれる、と思った。

「何笑っているんですか!ウォーカー?!」
「うん、ごめん、ちょっと…ね」

リンクに謝りながらも、アレンはそっとその背中へと微笑んだ。







−−−−−−−−−−−−−−

時間的にはリナリーが任務から帰って来てから、神田とアレンがジジのところに行くまでの話。
ラビが任務でいなかったら、とても残念なことに…(ラビのとこをコムイにするしか…←)

二人になるには喧嘩するしかない、というお子様な二人(違)





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