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069. 冷たい夜
ギィッー
軋んだ音をたて扉が開かれた。
冷えた空気に光が入る。
軋む扉を閉めると、訪れる暗闇と静寂−。
コツ、コツ−
小さく靴音を鳴らし、冷え切ったベッドへと近づいた。
主が留守にして一月程たった部屋は、ただでさえ閑散とした部屋をさらに寒々しく感じさせた。
「神田…」
今はいない、彼の人の名を呼べばそれだけで胸が締め付けられる。
愛おしむように、シーツをそっと撫でた後その上に身を預けた。
少しだけ多めに息を吸えば、微かに鼻孔をくすぐる香り。
たったそれだけなのに目眩がするほど嬉しくて。
それ以上に寂しくて…
「早く…っ」
願いを込めるようにつぶやいて、縋るようにシーツを握った…。
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