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※パラレル。アレンさんが女性に対して酷いので嫌な方はバックプリーズ※




081. 初恋







ブラウン管の奥で甘い台詞を吐く高視聴率を記録するそのドラマの脚本家でもある小説家は

「反吐が出る」

と冷たく言い捨てた。



幾人の女と身体を重ね合わせその女達が語る夢物語を形にしていたら描く脚本全てが高視聴率を記録中。
女性の支持を圧倒的に受けるという報道に。なんて安っぽいものに騙されるのだろう。と自分の作品を冷めた目で見つめアレンは電源ボタンを押して静寂に身を寄せる。

前ならこの虚しさを解消する為に夜の街に繰り出していた。
だけど今はそれすら煩わしくて。
左手を額にあて白い天井を見つめているとインターフォンが鳴った。怠い足を引きずってカメラを覗き込み息を飲む。

彼だ。

はやる心を落ち着け出来るだけ平静を装う。
細かく動いてしまう指先に内心舌打ち。
エレベーターが着いた音が響きわずかに肩が震えた。

自分は変じゃないだろうか?

いまさら焦ったところで直しようがないのに訳もなくいすまいを正す。
チャイムが鳴ったが業とゆっくりとドアへと向かう。
本当なら今すぐ駆け出して開け放ちたいがそこはぐっと我慢。
取っ手を捻って押す。こんな何気ない動作に何故こんなにも緊張しなくてはいけないのか。

ガチャリ。

小さな音を立て開け放った先にいたのは長く綺麗な黒髪の美形。
一瞬女にも見間違えられそうなその姿は彼の鋭い視線が否定していた。
彼の姿を見た瞬間心が反応する。
煩く跳ねる心。
上がる顔の熱。

「来てくれたんだ」
「仕事だからな」
「そんなとこじゃなんだから部屋に入って」
「いや、これを届けにきただけだから…」
「原稿があと少しで出来そうなんです。だから中で待ってて」

引き止めたくて咄嗟の言葉。
こう言えば彼の仕事上逃げられないのを分かっているから。

一瞬胡乱くさそうに眉を潜めたが彼は靴を脱ぎ中へと入る。


彼が自分の部屋にいるという事実に眩暈がする。
彼と出会ったのは数週間前。
顔合わせに、と出版社が企画した飲み会に連れていかれた先に彼がいた。
新しくある出版社から引き抜いた人材という彼は『神田ユウだ』と短く名乗った。
思わずその日のうちに担当を変えてもらうようにお願いする(脅し)ということをやってのけ彼を自分の担当へとすることに成功したのだ。

お茶を用意し持って行くと彼が自分のドラマを見ていた。
自分の安っぽさを彼に見られているようで酷くいたたまれない。

「安い話ですよね」

自嘲に唇を歪ませれば彼が驚いた顔でこちらを見つめた。

「そうだな」

彼の口から言われるであろう言葉を予想して何故か身構える。
こんなにも揺さぶられるなんてどうかしている。
彼は自分と同じ男なのに。

「…俺は好きだけどな」
「え?」

一瞬何を言われたかわからず目をしばたかせる。
彼は真っ直ぐな瞳で見つめていて。また同じ台詞を繰り返した。

「っ君は!君はこんなドラマが良いっておもいますか?!」
「…まぁ出来過ぎた感は否めないがこんな物語もありじゃないのか」

ていらいもなくあっさりと認められ矮小に感じていた心に笑いたくなる。

「…君は他にどんな話が好きですか?」
「は?」
「いいから。何でもいいから教えてください」
「いや、俺は…」
「それを教えてくれたら原稿が進みそうなんです」

そう言うと彼は酷く困ったような表情を浮かべ舌打ちする。
呆れられてしまっただろうか?ふとその表情(カオ)に不安がよぎる。
だがそんな思いとは関係なく彼は溜息をつくとゆっくりと口を開いた。


口実なんてどうでもいい。
君のことが知りたくて仕方ないんだ。
初めて知ったこの心。
少しでも近づかせて。








アレ神っぽい…








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