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015. ゆびさき


先程からペースを乱す事なく一定の間隔で蕎麦を口へと流し入れる神田をアレンは見つめていた。
いつ見ても、日本の「箸」というのは独特だと思う。

一度真似しようかとしたのだが、全然食べ物が取れなくて、フォークのように刺して使ったら、行儀が悪い、と顔をしかめられた。
音をたてて食べる方がよっぽどどうかと思ったが「蕎麦」というのは音をたてて食べるのが作法らしい、とラビから聞いて、つくづく文化って面白いと思ったのを思い出す。

その箸を器用に使う指先を目で追いかけていると神田が箸を止め口をひらいた。

「さっきから、何見てやがんだ?」
「相変わらず、箸って難しそうだなぁって思ってました」

神田は一瞬、なんのことだ?という表情をしたが思いだしたのか、あぁ、とつぶやいた。

「日本人でも苦手なやついるし英国文化のやつがいきなりは無理だろ」

そういって神田は残っている蕎麦を片付け始める。

「神田の指って器用ですよね」
そうつぶやくと、何を思ったか神田は意地の悪い笑みを浮かべ。
「へぇ…、また味あわせてやるよ」
と、アレンに聞こえるぎりぎりの声で囁いた。

一瞬なんのことかわからずキョトンと神田を見た後、神田の表情で察してしまったアレンは顔を真っ赤にさせ思わず立ち上がり叫んでしまった。
「ッッ//そんな意味で言ったんじゃありません!」

一斉に集まる視線に今いる場所を思い出しアレンは周りに謝りながら座り直し神田を恨めしそうにみやる。
神田はそんなアレンをみて、上目使いで睨まれたところで煽っているだけにしか見えないんだが…と思ったが声にだすのは止めておいた。

「機嫌直せ」そう呟いてむくれているアレンの頬へと、そのゆびさきを向けた。










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